ベトナム人民軍の司令部や部隊など視察
日越佐官級交流 防衛省・自衛隊代表団
笹川平和財団(東京都港区 理事長・角南篤)が進める日越佐官級交流で、防衛省・自衛隊の代表団が2023年12月9日から8日間、ベトナム人民軍の主要な司令部などを訪問し、視察と意見交換を通じ関係強化と信頼醸成を図りました。
宇宙技術を使ったグローバルな海洋監視について取り上げた、「『宇宙を用いたグローバルな海洋監視の最新技術動向と将来』に関するシンポジウム~本格的な宇宙利用とSociety 5.0*1が切り開く海洋の未来~」が、2月8日に笹川平和財団(会長・田中伸男)で開催されました。財団の海洋政策研究所と、日本宇宙フォーラム宇宙政策調査研究センターの共催によるものです。
シンポジウムでは、人工衛星等の宇宙技術を使ったグローバルな海洋観測・監視活動の最新動向や海洋分野における技術革新について、政府、民間機関の専門家や実務家らによる講演とパネルディスカッションが行われました。
笹川平和財団海洋政策研究所の角南篤所長
海洋での活動は、多くの国々にとって欠かすことができない重要なもの。その海洋活動の基礎となる海上安全の確保や、持続可能な水産資源の利用を推進するための手法として、宇宙技術が世界的に注目されています。これまで、船舶の位置の把握には、地上のレーダや、巡視船、航空機等が用いられてきましたが、人工衛星のような宇宙技術を使えば、より広域をリアルタイムで把握することができるからです。
シンポジウムの冒頭では、海洋政策研究所の角南篤所長と日本宇宙フォーラムの坂田東一理事長より開幕の挨拶がありました。角南氏は「海洋政策研究所は2012年から海洋と宇宙についての調査研究を始め、政策提言なども行ってきました。今後は、今回シンポジウムを共催した日本宇宙フォーラムをはじめ、さまざまな研究機関の皆さんと一緒に、もっと海洋と宇宙の問題について連携を進めていきたいと思います」と語りました。坂田氏は「本格的な宇宙利用、Society 5.0というのがこのシンポジウムのキーワード。海洋の分野でも、宇宙技術と現場データなどの融合により、社会課題の解決につながることが期待されています」と述べました。
招待講演「第3期海洋基本計画―新たな海洋立国への挑戦」では、内閣府の総合海洋政策推進事務局の参事官、森下康成氏が第3期海洋基本計画の成り立ちや概要を述べ、「海洋状況把握(MDA)*2については、これまで概論的な議論をしてきて、ようやく実施のベースに入ってきたところだ」と述べました。
続いてのセッションは二部制で、第一部「Global Maritime Monitoring Activities: Today and Future(グローバルな海洋監視:今日と未来)」では、衛星を活用した監視活動の現状が紹介されました。
キーノートスピーチでは、米国海軍研究所のジョン・ミットマン氏が「小型衛星が増え、地球観測技術も高まっている中で、海上のあらゆる船舶を持続的かつグローバルにモニタリングできるようになる。衛星モニタリングとデータ解析を組み合わせることで、従来は不可能だった、海上での違法行為などの特定ができるようになってきた」と述べました。
米国海軍研究所のジョン・ミットマン氏
その他、米国と英国のNGO等の専門家から、衛星を使った海洋観測・監視データ収集の最新状況、AIS(船舶自動識別装置)やSAR(合成開口レーダー)等の特徴、AIや機械学習を利用したデータ処理、そして得たデータをいかに共有、活用し海洋の安全確保や水産資源の管理に役立てていくかといったことについて、最新の報告がありました。
セッション2「Future Maritime and Japan's Role in International Collaboration(海洋の未来と、国際協力における日本の役割)」では、本格的な宇宙技術活用が海洋の未来にどのようなインパクトを与えるかについて、海洋分野の技術革新と日本の役割についての報告や意見交換が行われました。
多摩大学大学院の國分俊史教授
キーノートスピーチでは多摩大学大学院の國分俊史教授が、「日本の宇宙技術をアジアの公共財化するルール形成」と題して、災害予測データの提供など日本に期待されるアジア地域のレジリエンス強化に資する役割や、日本の防災意識を生かしたインフラの輸出可能性等について述べました。
続いて、日本宇宙安全保障研究所の木内英一主席研究員がモデレーターとなり、パネルディスカッションが開かれました。主なセッション参加者に加え、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や海洋研究開発機構等から専門家が登壇。宇宙からの海洋観測データの現状や、自動運航船、ビッグデータを用いた海況予測等についての紹介と、意見交換が行われました。シンポジウムの最後には、総合司会を務めた海洋政策研究所の角田智彦主任研究員が「今回の主催者である海洋と宇宙の両シンクタンクの連携のもと、取り組みを進めていきたい」と決意を示しました。
ジョン・ミットマン氏をはじめ、6名が登壇したパネルディスカッションの様子
今回のシンポジウムには、約240名の方にご参加いただきました。海洋政策研究所では、今後も海洋と宇宙の連携について調査研究や情報発信を行っていきます。これからのセミナーにもご期待ください。
*1 Society 5.0
情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指す。第5期科学技術基本計画において、日本が目指すべき未来の姿として提唱された。
*2 海洋状況把握(MDA)
海洋の安全保障、海洋環境保全、海洋産業振興・科学技術の発展等に資する海洋に関連する多様な情報を、取り扱い等に留意しつつ効果的な収集・集約・共有を図り、海洋に関連する状況を効率的に把握すること。英語での名称Maritime Domain Awarenessから、MDAと略すこともある。