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社会イノベーショングループ

【開催報告】 シンポジウム『地域における外国人住民との共生~自治体・NPO・企業・住民の役割』

笹川平和財団 中東・イスラムユニット 社会イノベーショングループ 研究員 岩品 雅子


2026.07.27
16分
ページ公開日:2026年7月27日
最終更新日:2026年7月27日

概要

 笹川平和財団(SPF)は、近年にわかに外国人住民が増えてきた自治体や、外国人住民の受入れに不安を抱える地域社会で共生を実現するために、自治体の担当者や地域社会の支援者の参考となる『外国人住民との共生ハンドブック~受入れの基本姿勢と取り組み事例集』(https://www.spf.org/social-innovation/publications/20260617.html)を作成しました。その刊行にあたり、各地域の好事例からのご報告を受け、自治体・NPO・企業・住民の役割を共に考えるシンポジウムを開催しました。 

 シンポジウムでは、冒頭の当財団角南篤理事長からの開会挨拶の後、第1部は講演として、出入国在留管理庁 審議官 福原 申子 氏より「秩序ある共生社会を実現するための出入国在留管理庁の取組」について、東京財団シニア政策オフィサー 河合 雅司 氏より「人口減少社会における今後の地域社会」について、筑波大学人文社会系教授 明石 純一 氏より「日本における外国人住民との共生の現況と課題」についてご講演をいただきました。その後、当財団中東・イスラムユニット研究員 岩品 雅子より『外国人住民との共生ハンドブック』の紹介をいたしました。

 第2部パネルディスカッションでは、パネリストに総務省自治行政局国際室長 黒田 夏子 氏、愛媛県今治市市長 徳永 繁樹 氏、桜十字グループ人材開発本部本部長 上村 啓輔 氏、多文化ネットワークfuふ!沖縄 代表 大仲 るみ子 氏、ウズベク・アカデミック・クラブ共同設立者 イブラヒム・アブドゥジャッボロフ 氏を迎え、モデレーターの筑波大学人文社会系教授 明石 純一 氏のもと、「地域から見る政府、自治体、企業、NPOの役割と今後の課題」について話し合いました。 

 シンポジウム全体を通して、国籍や立場を超え、多様性を強みに変えていくため、地域社会における連携やそれぞれの立場からの取り組み方法についての議論が展開されました。

 なお、実施後の参加者アンケートでは、有効回答者数186人のうち、「大変満足」が80人(43%)、「満足」が93人(50%)と高い評価が寄せられました。自由記述欄では、「各地の具体的な取り組みを知ることができ、今後の活動(日本語ボランティア、庁内プロジェクト、教育研究など)への参考や大きな刺激になった」という意見や、「国、地方行政、企業、NPO、学者それぞれの立場と役割が網羅されていて、最新の情報が得られて有意義だった」といった意見が41件と、高い評価が寄せられました。一方で、質疑応答の時間の増加や、資料のダウンロードへの要望も約10件ずつ寄せられました。 

【第1部 講演】

1. 秩序ある共生社会を実現するための出入国在留管理庁の取組 
(出入国在留管理庁 審議官 福原 申子 氏)  

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 福原審議官は、外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策、不法滞在者ゼロプランや不法就労対策パッケージについて解説するとともに、共に安心安全に暮らせる社会の実現に向けて、外国人住民の社会への円滑な適応を支援する取り組みについて説明しました。 

 令和5年度「外国人との共生に関する意識調査(日本人対象)」の結果からも、外国人による日本語および生活上のルールの習得が重要であることに触れ、出入国在留管理庁の具体的な取り組みとして、外国人在留支援センター(FRESC)の活動、地方自治体による一元的相談窓口の設置・運営支援、相談員が現地に出向くアウトリーチ型事業、自治体職員・入管職員のオンラインネットワーク構築、多文化共生のキーパーソンとなる「外国人支援コーディネーター」の養成研修、対話型オリエンテーションの取り組みなどを紹介しました。また、令和7年度「在留外国人に対する基礎調査」の結果を踏まえ、これらの取り組みの認知度を高めていく必要性を示し、情報の周知に関する協力を呼びかけました。 

 さらに、同基礎調査において、外国人住民が日本を「暮らしやすい」と考える主な理由は、清潔さを含む居住環境、日本社会の文化や習慣、治安の良さが上位に挙がりました。これら暮らしやすい社会の土台となっているのは、秩序を重んじ、ルールを守るという文化や習慣であると考えられるため、社会を共に支える担い手となってもらうべく外国人住民を支援することは、秩序ある共生社会を実現するための重要な要素であると述べました。 

2. 人口減少社会における今後の地域社会について 
(東京財団 シニア政策オフィサー/(一財)人口減少対策総合研究所 理事長 河合 雅司 氏) 

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 河合氏は、日本における人口減少の加速により、地方消滅の可能性に現実味が出てきたこと、また20歳〜64歳の勤労世代が2070年には2020年比で半減することを指摘しました。その上で、建設、介護、農業、製造業、物流などの現場では、すでに外国人労働者なしでは事業維持が不可能なレベルにある一方、外国人住民の急増によって国民の間に不安が生じている現状について言及。その不満の背景には、主に企業が得ている恩恵と、主に自治体や住民が担っている社会統合の負担との間に生じている「非対称性」があると述べました。 

 今後は、増加が見込まれる外国ルーツの子どもの教育や、外国人住民の高齢化への対応も必要不可欠であり、すでに日本で生活している外国人住民を、同じ人間として、共に暮らしていく仲間として受け入れ、一緒に豊かな地域社会を築いていくことの重要性を述べました。(詳細は添付参照) 

3. 日本における外国人住民との共生の現況と課題 
(筑波大学人文社会系教授 明石 純一 氏) 

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明石氏は、理念、法制度、実態、意識の4つの視点から共生の現況と課題について説明しました。 

 理念の点では、「多文化共生推進プラン」(総務省、2006年策定・2020年改訂)において、外国人住民の地域社会への参加・貢献への期待が強く込められているとおり、共生推進における最重要な点の1つは当事者である「外国人住民が参加できる共生空間づくり」であると述べました。また、2025年以降、国民の安心安全を重視する「秩序ある共生」が、日本の外国人政策の方向性に広く深く打ち込まれている現状について解説しました。 

 法制度の観点からは、共生推進法といった法律は存在せず、行政の主軸は日本語学習と教育機会の提供にあると説明。その他にも、行政文書の多言語化、相談窓口の設置や異文化交流イベントの開催など、地域社会では様々な取り組みが行われており、今後は日本の法制度を学ぶオリエンテーションが公的な制度のもとで展開される見通しを示しました。さらにヘイト対策については、秩序を追求すればするほど共生を実現するための方策として重要度が増すと指摘。ヘイトが放置される状況は、秩序と共生を阻む主要な要因になりうると述べました。 

 実態に関しては、政府や自治体の既存調査の数字を追うだけでなく、指標間の「経路分析」や「経年変化」の評価が極めて重要であると指摘しました。実態のどこに働きかけるとどのような効果があるのか、例えば「地域社会への参加が増えることで、日本語学習機会への参加度が高まり、孤独・孤立感が軽減されるのか」「心理的安全性の確保が日本語能力の向上や、好ましいキャリア・コミュニティ形成に寄与するのか」を5年、10年、20年といったスパンで観察し、政府や自治体の施策にフィードバックする仕組みの重要性を述べました。意識については、多様性に寛容な共生意識を高めることが重要である一方、伝統的な価値観を大切にすべきという考えを持つ日本人は多く、歩み寄りのための取組の重要性に触れました。また、地域への溶け込みを支援し、相互理解のために尽力している人や団体が地域社会には多くいるため、こうした草の根の取り組みをいかに公的にバックアップできるかが課題であると述べました。 

 最後に、共生の推進は秩序の維持にも寄与するものであり、どちらが先というものではなく、お互いを高め合える関係にあると言及。政府、自治体、企業、そして外国人住民自身も含め、多様性と活力に満ち、かつ秩序が保たれた環境を日本社会に作り上げたいという共通の目的に向かって、多くの方がすでにアクションを起こしていると結びました。(詳細は添付参照) 

4. 報告:『外国人住民との共生ハンドブック』の紹介 
(笹川平和財団 中東・イスラムユニット 研究員 岩品 雅子) 

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 岩品は、国際人口移動に関する財団のこれまでの歩みと「新人流時代の共生社会モデル構築」事業について説明した上で、今回「非集住地域」に着目した背景、『外国人住民との共生ハンドブック』の目的・重視している姿勢を説明しました。 

 具体的には、自治体からのニーズが非常に高く、ハンドブック内でも紹介している「外国人住民との接点の作り方」や「共生のための仕組みづくり」、活用可能な地域社会の資源と主な担い手の整理、さらにはハンドブックに掲載した27の事例に共通する特徴として連携とコーディネーションの重要性を挙げ、今後の地域間連携ワークショップ等の計画について述べました。(詳細は添付参照) 

【第II部 パネルディスカッション:地域から見る政府、自治体、企業、NPOの役割と今後の課題】

 地域における文化的多様性を、弱みではなく『強み』や『戦略』として捉え直し、多様なアクターがつながり、対等に手を携えることで、すべての住民にとって「生きやすく、暮らしやすい」地域社会を共につくりだしていくための方策が話し合われました。 

地域や企業の「知らない不安」をどう解消するか 

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 愛媛県今治市の徳永市長からは、4,800人の外国人住民を含む「市民全員」を真ん中に置いた先進的な街づくりの挑戦が共有されました。市の分厚い長期計画を読む人は少ないからこそ、全住民が直感的に理解できるよう街のヴィジョンをマンガ化して街中に掲示する試みや、宿舎の個室化を含む従業員の労働・居住環境の向上支援、外国人住民と日本人住民がともに参加する防災運動会など、行政と企業、地域社会が一体となって進化を続ける姿勢が語られました。「納得と共感を得られるよう、いかに届く発信をするかが重要」という視点は、多くの参加者の共感を呼びました。(詳細は添付参照) 

「市民が真ん中」のヴィジョンと、届く発信 

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 高齢者施設を運営する桜十字グループの上村氏は、介護現場での豊かな異文化交流を報告する一方、地域社会の「知らないことによる不安」を解消するため、地元の自治会と対話を重ねて相互理解を深めるプロセスを語りました。また、リソースの限られた小規模事業所(30人程度)が地域で孤立しないよう、自治体との情報・支援の連携体制の必要性を訴えました。(詳細は添付参照) 

「支えられる側」から、共に汗をかく「共生の担い手」へ 

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 NPO多文化ネットワークfuふ!沖縄の大仲氏は、ネパール人コミュニティとのミーティングを例に挙げ、当事者の声を丁寧に拾い上げること、そしてフラットな対話の場を作り、その声を行政につないでいくNPOの役割を指摘しました(詳細は添付参照)。これに対しモデレーターの明石氏も、「アクター間の関係をフラットにしていく動きが共生を加速させる」と述べました。 

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 ウズベク・アカデミック・クラブのイブラヒム氏は、自分たちは決して「支えられる側」あるいは「お客さん」ではなく、自ら共に手を携え、汗をかく用意がある「共生の担い手」であると言及。自分たちの手で地域課題を解決し、後輩へ経験を共有していく当事者コミュニティの底力を語りました。(詳細は添付参照) 

国や広域でのサポート体制 

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 これらの議論を受け、総務省の黒田国際室長は、「地域における多文化共生推進プラン」や、全国の好事例を集めた「多文化共生事例集」の取り組みについて説明した上で、外国人との秩序ある共生社会の実現に向けて地域社会のルール等の周知や日本語教育が重要であり、近隣市町村や都道府県との「広域連携」が課題解決の大きなヒントになると指摘。さらに国としても、外国人が地域社会のルール等を学習するための取組みや外国人と行政・地域社会をつなぐブリッジ人材の発掘を強力に後押しするため、令和8年度から地方交付税の算定対象経費を追加したという、心強い最新の動向を明らかにしました。 

多様性を強みに変える、これからの「街づくり」 

 モデレーターの明石氏によるまとめでは、自治体における外国人の受入れ状況は様々であり、その課題や資源も異なる中、本パネルディスカッションを通じて、地域社会において高まる文化的多様性を「弱み」ではなく「強み」に変えていくための「戦略」やヒントが多く提示されたことへの感謝が述べられました。 

 最後に各登壇者から、多様なアクターがつながり、できることから1つ1つ取り組み、楽しく対等に手を携えることで、すべての住民にとって「生きやすく、暮らしやすい」地域社会を共に作り上げていこうと語りかけがありました。 

(以上) 

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