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公開講演「21世紀の経済社会展望」

於 北京大学 国際関係学院 笹川平和財団 会長  田淵節也


目次

カテゴリー区分 その他
一般/基金区分 笹川平和財団
発行 2001.10

WTO加盟後の中国経済と世界経済との関連

今年もまた、私の50年にわたる金融生活の経験に基づいてお話をします。例年の如く、皆さんの質問に応じて、できるだけ有意義な時間にしたいと思います。

いよいよ21世紀が開幕しました。それとともに米国のロングラン景気が終り、米国の繁栄にも陰りが見え始めました。中国はWTO加盟を機に「グローバル」に向けて動き出しました。欧州は来年1月にユーロ通貨流通が開始され、EU統合は新しいステージに移行します。また日本では、国民の圧倒的支持率を背景に小泉首相の構造改革が始まりました。世界は今、歴史的転換期を迎えています。

100年前も、19世紀から20世紀の変わり目で時代が大きく動きました。英国の繁栄に限界が訪れ、米国文明が開花しました。例えば、1900年コネチカット・ニューヘブンでハンバーガーが発売され、同年コダック社が1ドルカメラを発売しました。1901年にはマルコーニが大西洋横断無線通信に成功、同年USスチールが設立されました。また、1903年にはフォード社が設立されました。すなわち軽工業から重化学工業への産業構造大転換、技術革新と産業・金融業界の大再編成など、19世紀文明に代わる20世紀文明が形成される歴史的大転換期を迎えたわけです。

今日、世界で起っている様々な変化は、20世紀文明がその限界を見せ始める中で、これに代わる21世紀文明が形成される大転換期の到来を示唆しています。

世界経済

まず、米国の繁栄の陰りと、中国の台頭について考えてみます。
IMFの世界経済見通しによると、世界の実質成長率は、2000年の4.8%に対して2001年は3.2%です。しかしこれは4月時点の予測であり、現実は2%程度になるでしょう。減速の最大の理由は、世界のGDPの3割を占める米国の景気後退が、世界に伝播し始めたためです。

米国経済は91年3月から上昇を始め、グリーンスパンFRB議長の巧みな金融政策の下で、IT革命によるニュー・エコノミーが開花し、世界の資本が米国に集中して、10年に及ぶロングラン景気を謳歌しました。しかし、1998年以降、バブルの様相を強めてきました。

しかし昨年夏以来、景気過熱の歪みが随所に現われ、ITバブル崩壊と共に景気は失速し、今年に入って景気ははっきり後退局面を迎えました。
年初来の8次に及ぶ金利引き下げ(FFレート6.5%から3.0%)と減税(550億ドル)の効果が期待されていますが、過去5年間の記録的な設備投資ブーム(実質年率12%)による過剰設備と、きわめて低い貯蓄率の下での過剰消費の反動減で相殺され、景気は下振れリスクが大きいと言えます。「山高ければ谷深し」で、今回の不況は相当長く、かつ深いのではないでしょうか。

NY株式市場は景気後退を先見して、ダウ工業株30種平均は昨年1月14日の11,722ドル、ナスダック指数は3月10日の5,048ドルをピークに反落しました。特にナスダック指数はハイテクバブル崩壊で7割以上下落して1,500ドル台となり、完全に調整局面に入りました。ダウ工業株平均は8,000ドル台に下落しましたが、早晩、調整局面入りがはっきりするでしょう。1990年から始まった歴史的大相場は終り、10年に及んだ市場最大のロングラン景気も既に幕を閉じたようです。

米国の景気後退は、世界貿易の2割を占める米国の輸入減を通じて、各国に深刻なデフレ圧力をかけ始めています。アジアの実質成長率は2000年の7.6%から2001年には3.5%に大幅鈍化、日本は対アジア輸出減も加わって同1.5%から0%、EUは3.4%から1.8%へとそれぞれ減速し、世界同時不況の様相を呈し始めています。

こうした中で、中国は2000年の8.0%に続き2001年も7.6%と、世界一の高成長を維持する見通しです。これには公共投資拡大と住宅投資の好調に加え、対中直接投資拡大が寄与しています。中国は2000年で世界第6位のGDP大国になりましたが、世界銀行の試算による購買力平価ベースでは、既に米国に次ぐ第2位となっています(資料参照)。中国経済の好調が今回の世界不況の下支え役になるか、注目されるところです。ただし近い将来、人民元の為替レート(8.2元/ドル)に割安感が一段と強まり、人民元切り上げの声があがるような気がします。

日本経済新聞8月21日の社説に次のような記事があります。
「......日本企業の中国における直接投資が急増している。中国側統計によると、今年1~4月の投資金額は契約ベースで21億ドル(前年同期比117%増)と年間で過去最高を記録する勢いだ......」
いずれにしても、世界の先進国から、WTO加盟の決まった中国への直接投資がますます増え、その間の競争は激化し、それに対する中国固有企業の対処の仕方など、これもまた難しく、中国経済もまた新時代を迎えています。

ところで、ウォール街の歴史を振り返ると、20世紀に3回の大熱狂相場がありました。1回目は第一次世界大戦の勝利で始まった1920年から1929年の大相場で、66ドルから381ドルへ年率20%で急騰しました。2回目は第二次世界大戦の勝利で始まった1943年から1966年の大相場で、119ドルから995ドルへ年率10%で上昇しました。3回目は冷戦の勝利で始まった1990年から2000年の今回の大相場で、2,365ドルから11,723ドルへ年率20%で急騰しました。

問題は世界の資本を吸引した大熱狂相場の「宴の後」に、いずれも大きな経済調整と国際金融市場の混乱、そして国際金融システムの大きな試練が待っていたことです。1回目は世界恐慌と基軸通貨ポンドの崩壊、2回目はベトナム戦争と大インフレ、金ドル本位制の崩壊と変動相場制への移行でした。今回は果たしてどうなるのでしょうか。米国経済のソフトランディングは可能でしょうか。米国通貨当局の力量が問われています。

現在の問題点として、以下のものがあげられます。

 
  1. 1982年以来、19年に及ぶ経常赤字の累積2.5兆ドル。なお1995年以降のドル高政策下での6年間で1兆3572億ドル。
  2. 利下げによる内外金利差の縮小は日米金利差3.0%、米-EU▲0.75%、米英▲1.75%
  3. 米国企業業績悪化による株価下落
  4. アルゼンチン始め中南米諸国の通貨金融不安など(現在アルゼンチンが特に悪い)。
 

このように、ウォール街を通じた国際資本の流入に支えられた米国繁栄の構図に陰りが出始めています。過去2回とは国際情勢が大きく異なるとはいえ、米国経済は今試練の時を迎えつつあります。基軸通貨ドルを回る米国の通貨戦略の行方からは特に眼が離せません。米国経済の今後が、当面の世界経済にとって最大のリスクです。

ところで、私がこの講演の原稿を書き終わった直後の9月11日、米国で、ニューヨーク・世界貿易センタービル、ワシントン・ぺンタゴンなど、世界をゆるがす大テロ事件が発生しました。ブッシュ大統領は、単にテロ対策ではなく、テロ支援者あるいはテロ支援国に対して、戦争をすると断言しています。アメリカズ・ニュー・ウォーです。この戦争がどんな形で、何時まで続くかは誰にもわかりませんが、米国は戦時体制をとって、膨大な軍事支出をするでしょうし、米国の防衛のためにあらゆる手段を講ずるでしょう。戦時体制下の経済は、平和時とは相当異なることになるのですが、その先行きに関してはまだわかりません。いずれにしても、まだ始まったばかりだし、過去の戦争とは全く形が違うので、もうしばらく状況を見ないと、私には今の段階では何とも言えないということです。

日本経済

次に日本経済について、特に産業構造の変化について若干説明します。日本はこの10年来、製造業中心の工業社会から、サービス産業中心の知識社会への転換が急ピッチで進んでいます。1990年以降、製造業の活動を示す鉱工業生産指数はほぼゼロ成長で、典型的な成熟産業に変りました。これは工場を海外に移し、アジアとの分業体制を築いてきた結果です。一方、サービス産業を中心とする第三次産業の拡大が続いています。第三次産業活動指数は対照的に、安定的な右肩上がりの成長軌道を描いています。特に通信、情報サービス、リース、カードをはじめ、時代の潮流にのって高成長を続ける新産業が増えています。
今や製造業に代わって第三次産業が経済の主役になっており、全産業に占める付加価値シェアは、製造業の23%に対し、第三次産業は3倍の67%を占めるに至っています。産業別就業者数は、過去10年間で、製造業の雇用が280万人減って1300万人を切ったのに対し、サービス産業は同数増えて、1700万人を上回る最大の産業に躍り出ました。製造業のリストラの下で、ここ数年就業者のサービス業へのシフトが一段と加速しています。
目下日本は、国民経済の大動脈である銀行業の大再編成が進んでいますが、これは産業構造の転換に伴う歴史の必然であります。時代の変革に適応できないオールド・エコノミーの整理淘汰であり、民間セクターのリストラが最終ステージに入ってきたと思われます。しかしこの最終ステージがいつまで続くか、これがはっきりしていないので、日本経済は未だ当分の間デフレ・スパイラルに悩まされると思います。
今、日本政府は次の7つの重点分野に資源を配分し、その他の行政サービスは徹底的に民営化、或いは整理、縮小につとめています。すなわち、1.循環型経済社会の構築、2.少子高齢化への対応、3.地方の個性ある活性化、4.都市の再生、5.科学技術の振興、6.人材育成、7.世界最先端のIT国家の実現、この7つを行政の重点分野として政府自身の構造改革を進めています。

さて、それでは21世紀の経済社会、すなわち21世紀文明をどう捉えるか、私なりに考察したいと思います。
インターネットの爆発的普及で情報社会の波が世界を覆うなか、20世紀文明の限界が明らかになってきました。
20世紀は米国の世紀でありました。大量生産、大量消費、大量廃棄を前提としたアメリカン・ウェイ・オブ・ライフが世界を覆いました。しかし、全世界の人口が全員米国型生活を始めると、地球があと4つ必要になると言われています。米国型の生活は確かに快適ですが、資源は有限であり、自然環境は脆弱であり、持続することは不可能です。そこで、ライフスタイルの転換が急務となりました。
20世紀の思想的基盤は近代文明であり、それは3つの理念から成り立っています。1つは人間中心の欲望追求で「成長」の理念であり、2つは科学による自然の征服で「進歩」の理念であり、3つは西欧的普遍主義で「効率」の理念です。この3つの理念の下で、工業化、都市化、巨大化という3つのベクトルが働き、世界は急速な経済成長を遂げてきました。だがその代償として、今日、環境破壊と人心の荒廃という重大問題に直面するに至りました。まさに近代文明の限界です。
この限界を克服するのが21世紀文明です。すなわち、自然との共生、共同体の再生、循環型社会の構築などが世界的な課題になっています。世界各国のNGO、NPOが連鎖的に活動する場面が多くなることも予想されます。大量生産、大量消費、大量廃棄を前提とした20世紀文明から、「エコ・エフィシェンシー」、「ゼロ・エミッション」を前提とした21世紀文明へのパラダイム変化を進めるために循環型社会システムを構築することが、21世紀の経済成長の原動力になると思われます。

中華経済圏

最後に、「中華経済圏」について考えてみます。 中国は70年代末に改革開放政策に転換して以来、直接投資と貿易を中心に世界経済に組みこまれつつあります。対中投資の主役は香港と台湾企業を中心とする華僑資本であり、両者の合計は中国の受入金額(累計ベース)の約60%を占めています。直接投資に伴う原材料の調達や最終製品の輸出の増大を反映して、中国大陸、台湾、香港間の相互依存関係が深まっており、3地域からなる「中華経済圏」が形成されつつあります。
中華経済圏の規模は、GDPベースではまだ日本の3分の1に止まっていますが、外貨準備と貿易(域内貿易を含む)ではすでに日本を超えています。2000年には中華経済圏の輸出は、米国市場においてはついに日本を抜き、日本市場においても米国を上回るようになりました。97年の主権返還を経て、香港は名実とも中華経済の一部になりました。また、間もなく実現される中国のWTO加盟と同時に、台湾も地域としてWTOに加盟します。これにより、「両岸三地」の経済交流が一層盛んになるでしょう。貿易と投資の障壁が取り除かれることにより、比較優位に沿って、中国大陸は工業製品の生産基地に、香港はビジネスセンターに、台湾ハイテク基地にそれぞれ特化すると思われます。
これまで台湾当局は、大陸への過度の依存を警戒し、両岸間の直接通商、通信、船舶や航空機の通航(いわゆる「三通」)を認めないなど、対中貿易と投資に多くの制限を加えてきました。しかし、中台のWTO同時加盟によって、台湾は中国に対しても最恵国原則を適用するため、これらの差別措置を撤廃しなければなりません。台湾の財界においても大陸との経済関係の強化に期待し、「三通」を求める声が強くなっています。
台湾と大陸の直接通航が実現すれば、航路の短縮による運輸コストが低下し、両岸貿易と直接投資を促進する要因になるでしょう。これまで台湾企業は中国に進出する際、中間財や生産設備の輸入や製品の輸出がいずれも香港経由を前提にしているため、香港に隣接する広東省に集中する傾向がみられています。しかし、両岸の直接貿易が認められるようになれば、投資対象となる地域は一層広がりを見せるでしょう。中でも、工業基盤の強い上海を中心とする長江デルタが、台湾企業の投資先として一段と注目されるでしょう。

以上で私の講演を終わります。ご静聴ありがとうございました。

※このレポートは個人の意見であり、必ずしもSPFのそれを代表するものではありません。


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