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太平洋島嶼地域ブレーキングニュース 研究員の解説付きPACNEWS厳選記事

パラオ、第55回PIF首脳会議開催を前に警備・宿泊体制を強化

(2026年7月14日、コロール、ISLAND TIMES/PACNEWS)


13分

抄訳

パラオは、第55回太平洋諸島フォーラム首脳会議(PIFLM55)の開催に向けて準備を進めており、政府関係者は、今回の会合がPIF首脳会議史上最大規模の集まりの一つとなる可能性があるとし、準備状況を説明した。
 
「BELAU: Building Economies. Life. Action. Unity」をテーマとする今回のPIF首脳会議には、加盟国およびパートナー国の代表団を含む約2,000人の来訪者が参加する見込みであると、パラオ大統領府は発表した。
 
スランゲル・ウィップス・ジュニア大統領は先週の記者会見で宿泊施設に関する懸念について言及し、各国首脳向けのホテル客室は確保済みである一方、市内全体の宿泊施設は急速に埋まりつつあると述べた。
 
また、空き部屋を持つ住民に対し、Airbnbへの掲載を呼び掛けた。過去に太平洋地域の他国で開催されたPIF首脳会議でも、こうした住民による宿泊先提供の取り組みが活用されたと説明した。
 
警備体制については、ジェニファー・オルゲリール法務大臣が、「段階的に強化される」警備計画を策定しており、国際的なパートナーの支援を受けながら継続的に拡充していると述べた。また、首脳会議に参加する各国首脳には24時間体制の要人警護が提供されるという。
 
オルゲリール大臣によると、同国法務省はオーストラリア連邦警察と連携しており、オーストラリアのブリスベンを拠点とする研修プログラムPacific Police Support Groupを通じて警察官を受け入れる予定である。
 
すでにパラオの警察官2名が同研修を修了しており、さらに2名が現在受講中である。また、首脳会議期間中には地域各国から少なくとも100人の警察官がパラオに派遣され、地元警察を支援する見込みだという。
 
会議の大部分は、ガラマヨン文化センター(Ngarachamayong Cultural Centre)および国立体育館(National Gym)で開催される予定である。
 

コメント

太平洋諸島フォーラム(PIF)首脳会議は年次総会ともいわれますが、毎年加盟国主催で開催されてきました。一昨年がトンガ、昨年がソロモン諸島、そして、本年がパラオとなります。現在の議長国はソロモン諸島でこの首脳会議からパラオが議長国となります。
 
現在計画されている日程は、8/30から9/3。この期間、PIF内のより小さな島嶼国(SIS)による首脳会議、日米中など20を超える対話パートナーと首脳の域外国対話、CROP機関(FFA、USP、SPC、SPREP、SPTOなどの地域機関)と首脳の会議、準加盟地域と首脳の会議、オブザーバーと首脳の会議、市民社会(CSO)と首脳の対話、ACP太平洋ブロック会議(ACPはEUとの枠組み)などが開催されていき、終日の本会議(非公開)、終日の首脳のみのリトリート(首脳が本音で意見交換できる非公開の場)が開かれ、すべての結果をまとめ、首脳が合意・署名した首脳コミュニケとそれに付随する宣言文が発表されます。通常、本会議とリトリートは開催期間の終盤となるため、今回でいえば9/2-3頃に開催されると思われます。
 
PIFには加盟国・地域(14太平洋島嶼国、ニューカレドニア、仏領ポリネシア、豪、NZ)、準加盟地域(NZ領のトケラウ、仏領のウォリス・フツナ、米領のグアムと米領サモア)、オブザーバー国・地域(北マリアナ、東ティモール)、オブザーバー機関(ACP事務局、ADB、コモンウェルス事務局、IOM、国連事務局、WCPFC、世銀)、域外対話国(Dialogue Partner。1989年にできたカテゴリーでカナダ、フランス、日本、イギリス、米国が最初の国々。その後参加国が増加し、現在では、この5カ国と中国、EU、韓国、マレーシア、フィリピン、インドネシア、インド、タイ、イタリア、キューバ、スペイン、トゥルキエ、ドイツ、チリ、ノルウェーの21か国・地域からなる)のカテゴリーがあります。
 
台湾は域外対話国ではありませんが、80年代には地域の経済パートナーと認識されており、1992年にソロモン諸島のホニアラで開催された第23回PIF首脳会議の首脳コミュニケにおいて、次の合意事項が明記されました。
 
「RELATIONS WITH TAIWAN/ REPUBLIC OF CHINA
54. The Forum agreed that the importance of Taiwan/Republic of China as an economic presence in the region justified some form of formal consultative arrangement with those Forum countries which wish to participate. Forum countries propose to institute, therefore, a "Taiwan/Republic of China-Forum Countries Dialogue". This will take place at the same venue as the Forum, but be separate from the existing post-Forum Dialogue. Participating countries would do so in their own right and would not represent the Forum as a whole. 」
 
仮訳:
「台湾/中華民国との関係
54. フォーラムは、台湾/中華民国(Republic of China)が地域において重要な経済的存在であることを踏まえ、参加を希望するフォーラム加盟国との間で何らかの正式な協議の枠組みを設けることが正当であるとの認識で一致した。このため、フォーラム加盟国は「Taiwan/Republic of China-Forum Countries Dialogue(台湾/中華民国・フォーラム加盟国対話」を創設することを提案した。この対話はフォーラムと同じ会場で開催されるが、既存の域外対話国会議(post-Forum Dialogue)とは別の枠組みとして実施される。参加国はそれぞれ自国の立場で参加し、フォーラム全体を代表するものではない。」
 
また、1999年にパラオで開催された第回PIF首脳会議では、下記の合意がなされ首脳コミュニケに記載されました。
 
「Taiwan/Republic of China-Forum Countries Dialogue
54. The Leaders discussed the matter of the treatment of the "Taiwan/Republic of China-Forum Countries Dialogue" by the Forum. After discussing the respective countries' policies on the matter, the Meeting agreed to reaffirm the protocol arrangements agreed to by the 1992 Forum, reiterating the need to ensure a proper venue.」
 
仮訳:
「台湾/中華民国・フォーラム加盟国対話
54. 首脳は、フォーラムにおける"台湾/中華民国・フォーラム加盟国対話(Taiwan/Republic of China-Forum Countries Dialogue)"の取り扱いについて協議した。各国の当該問題に関する政策について意見交換を行った結果、会議は、1992年フォーラムで合意されたプロトコル上の取り決めを再確認することで一致した。また、その実施に当たっては、適切な会場を確保する必要性を改めて強調した。」
 
端的に言えば、台湾は中国を含む開発パートナーが属する域外対話国(Dialogue Partner)のカテゴリーには認められていないが、個別に希望する国々(台湾承認国)との対話会議をPIF首脳会議が行われる場で実施できる立場であることが首脳により認められているということになります。
 
少なくとも10数年前から、中国はPIFの公式文書にRepublic of ChinaまたはROC、Taiwanと記載されることを認めておらず、これらの文書が残ることは良い気がしないのではないでしょうか。例えば、2013年にフィジーのPIF事務局で行われた開発パートナーを含むある会議に参加した際、成果文書案に「Republic of China」「Taiwan」が記載されていたことで、中国代表団が議長に強く抗議し、これに対し台湾代表団が激しく反論するといった場面がありました。当時、太平洋島嶼国側は会議の本筋とは異なる部分で10分以上紛糾したことに辟易した様子を見せていました。
 
上記のコミュニケについてですが、PIF議長国は首脳合意によりこれを覆さない限り、これを踏襲する必要があります。また、PIFでは、2022年頃からトロイカ体制(前議長国、現議長国、次期議長国)による議論で、全体の首脳会議に向けた調整を行う形がとられています。一方で、PIFは加盟国の主権、外交権を超えるものではありません。そのため、昨年9月のソロモン諸島が台湾代表団の入国を認めないという対応は、ソロモン諸島が自国の主権・外交権による決定としたことで、トロイカ会議は機能せず、他のPIF加盟国もこれを変えることはできず、苦渋の選択としてすべての域外対話国の参加を認めないという形式をとりました。
 
今回のパラオでのPIF首脳会議は、ソロモン以前、トンガ以前の、通常の状況に戻すものと考えられます。パラオは台湾承認国ではありますが、PIF域外対話国である中国も当然入国し会議に参加する資格があります。また、台湾は上記の首脳合意に基づき独自の対話会議を開催するものと思われます。中台関係は議論の本筋ではなく外部主導の地政学的問題として扱われ、太平洋島嶼国側は地域として各国が直面する課題について地域としての対応に関する議論行われるでしょう。

例えば、
1.気候変動:10月にフィジーで開催されるPre-COPとCOP31に向けた戦略など
2.災害・エルニーニョ対策
3.経済
4.エネルギー危機(特に燃油価格高騰)、流通価格高騰・物価高問題
5.地域秩序構造の再構築(地域機関の整理統合含む)
6.2050 Strategyの実施と開発パートナーの取り組みのアラインメント
7.Ocean of Peaceのグローバル化
8.海洋管理・海洋安全保障
9.麻薬問題、ボーダーコントロール
10.海底鉱物資源
まだまだ他にもあります。
 
現在、パラオでこの原稿を執筆していますが、パラオ政府、特に大統領府や外務省の方々は曜日や時間の感覚がなくなるほど多忙を極めているようです。どうか健康に留意しながら職務を全うしていただきたいと思います。また、本会合が太平洋島嶼国地域にとって実りある対話の場となり、地域が直面する諸課題に対する建設的かつ生産的な議論が進み、成功裏に終わることを願っています。
 
(2026年7月19日 塩澤英之 海洋政策研究所島嶼国・地域部部長)

海洋政策研究所(島嶼国・地域部)
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