◆5月5日は端午の節句である。立夏の風の中を水の流れに向かって泳ぐ巨大な鯉のぼりで、初夏の訪れを迎える。それも束の間、梅雨から台風シーズンまで大雨の季節が到来する。近年、その大雨が激しい。台風の激甚化および線状降水帯が増加し、その原因は温暖化とされる。 ◆温暖化により日本の豪雨が増える「大気の川」現象をご存じだろうか。それについて筑波大学生命環境系の釜江陽一助教よりご教示いただいた。水蒸気を多量に含んだ中緯度上空の大気の流れで、線状降水帯よりスケールが大きい。赤道付近の温かく湿った空気と、極側の冷たく乾燥した空気との境界にできた渦により、赤道側の水蒸気が極側へ川のように流れ、途中で雨を降らせながら、水蒸気を補給しつつ日本列島にやってくる。温暖化は「大気の川」の水蒸気の量と発生頻度を増やすので、日本は膨大かつ長時間の豪雨に見舞われる可能性がある。自然災害からの防災・減災を目指す地球科学の進展が期待される。 ◆チバニアンは千葉県にある地磁気逆転期地層を境界とする地質時代である。一方、新たな地質時代を決める時代境界の候補になっているのは別府湾の海底堆積物である。その時代とは「人新世」で、現代を象徴する痕跡は、二酸化炭素濃度の増加を示す炭素同位体比、PCBなどの残留性有機化合物、マイクロプラスチック、核実験由来の放射性同位体、さらに窒素循環の大変化、沿岸海洋生態系の劣化などの指標である。それらは1953年を境に急増する。人新世および時代境界が決まるのは、2024年の国際地質科学連合である。ご寄稿いただいた愛媛大学沿岸環境科学研究センター加三千宣准教授の結果報告を待ちたい。 ◆自転車の種類が増えている。電動自転車は坂道でも子どもを乗せて楽に登れるので、親や高齢者に歓迎されている。電動アシスト3輪自転車も住宅地でよく見かける。(国研)国立環境研究所の亀山哲生物多様性領域主幹研究員と近藤美則地域環境保全領域主席研究員は、研究所プログラム「PJ2:地域との協働による環境効率の高い技術・システムの提案と評価」の一環として、香川県の直島をモデル地域とし、離島の住民生活を支援する自転車を開発している。65歳以上が30%を超える島民の移動手段は、路線バス、自家用車、シニアカーであるが、観光客の人数は島民の250倍にもなる。島民も観光客も利用でき、脱炭素となり、子どもから高齢者まで使える自転車を開発し、離島での利用を実証中である。(窪川かおる)
ページトップ