Ocean Newsletter

オーシャンニュースレター

第522号(2022.05.05発行)

編集後記

帝京大学先端総合研究機構 客員教授♦窪川かおる

◆新たな水産基本計画が2022年3月25日に閣議決定された。その3本の柱は1)海洋環境の変化も踏まえた水産資源管理の着実な実施、2)増大するリスクも踏まえた水産業の成長産業化の実現、3)地域を支える漁村の活性化の推進である。持続性のある水産業の活性化への具体的な施策が講じられており、海洋関連の産官学との連携の推進も期待されている。
◆日本は、世界中の7%にあたる111の活火山が密集する世界一の火山大国で、その約3分の1は海域に分布する。そのため火山津波も脅威である。約7,300年前の「鬼界海底カルデラの超巨大噴火」は縄文文化を壊滅させたが、それとは異なる原因の津波が2022年1月のトンガ海底火山噴火で発生した。神戸大学海洋底探査センター巽好幸客員教授は、日本の海域火山の常時高精度モニタリングと監視強化を強く要請されておられる。是非ご一読ください。
◆日本海洋学会から将来構想2021が発表された。そのうちの「沿岸域」を九州大学応用力学研究所木田新一郎准教授よりご紹介いただいた。まず沿岸域の自然現象も生態系も複雑であることを念頭に全体像の把握を目指す。そして、生態系の理解には、物質循環の定量、人間社会の影響、地球規模の変化などを含めて、総合的に研究を進める。さらに新技術の活用で大量データの取得と分析・解析を進めるという。日本の多様な沿岸域環境を次世代に引き継ぐ意義は大きい。詳細は本文をお読みいただきたい。
◆水産育種でゲノム編集が注目されている。その利点は、生物種を問わず任意の遺伝子を改変できる汎用性である。ゲノムについての知見を土台として有用形質をもたらす遺伝子をピンポイントで改変できるので、養殖環境に適した魚の作出も夢ではない。ゲノム編集による「肉厚マダイ」の開発に成功した京都大学大学院農学研究科木下政人准教授に解説をいただいた。木下氏は、一般の人々には遺伝子改変への不安があるので、情報提供と意見交換が重要であるとも述べておられる。(窪川かおる)

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