Ocean Newsletter

オーシャンニュースレター

第515号(2022.01.20発行)

編集後記

日本海洋政策学会会長◆坂元茂樹

◆FAOが2年ごとに発行する『世界漁業・養殖業白書』によれば、養殖業の生産高は総漁業生産量の52%であり、その生産地の89%はアジア諸国で、日本は第10位という。漁船漁業の持続可能な漁業資源の割合が、1974年の90%から2017年には65.8%へと減少している中で、養殖業への期待は高まっている。FAOによれば、2030年には養殖業の生産高は総漁業生産量の約79%に達すると予想されている。
◆萩原篤志長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科教授からは、こうした国内外の水産養殖の現状と展望についてご寄稿いただいた。日本では海水養殖が多くを占めるが、世界では全養殖生産の60%以上がコイ科魚類を中心とした淡水養殖とのこと。そうした中、IoT、ロボット技術、太陽光発電を導入したスマート養殖が世界で急速に広まっているとのこと。養殖業のこれから進むべき道の提言については、ぜひ本誌をご一読いただきたい。
◆片山真基海洋建設(株)代表取締役社長からは、カキ養殖やホタテ養殖、真珠養殖で発生する貝殻を使用した人工魚礁である「JFシェルナース」についてご説明いただいた。1994年の実用化以降に実施している効果調査では、これまでに約380種の魚介類によるシェルナースの利用状況が観察され、貝殻のテストピースからは660種を超える動物の生息が確認されたとのことで、生態系と生産性に顕著な効果があるという。2050年のカーボンニュートラルに向けて洋上風力発電が注目されているが、良好な漁場海域での設置計画も多いとされる。そうした中、洋上風力発電施設に貝殻利用技術を付加すれば、漁場や生物生息環境の維持等に役立つという。シェルナースの持続可能な漁業の発展への貢献に期待したい。
◆柏村祐司栃木県立博物館名誉学芸員からは、海なし県の栃木の麻畑と九十九里浜の海を結びつけた江戸時代の麻商人の活躍をご紹介いただいた。漁網用の麻を大量に必要とした九十九里浜の網元に栃木の名産「野州麻」を直接売ったのは板荷村の福田弥右衛門とされる。同じ村の瀬兵衛は、同じく麻を九十九里浜の網元に売ったが、帰りに当時日本最大のイワシの産地だった九十九里浜からイワシを干して乾燥させた干鰯を肥料用として持ち帰った。板荷村があった鹿沼地区は礫まじりの痩せ地だったので、干鰯を大量に売りたい九十九里浜の網元と土地を改良したい農民の利益が合致し、双方が得をし、生産に結びついたという話には日本人の知恵を感じる。(坂元茂樹)

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