Ocean Newsletter

【Ocean Newsletter】バックナンバー

第465号(2019.12.20 発行)

海洋プラスチックごみを清掃

[KEYWORDS]海洋ごみの安全な処理/再資源化/海ごみゼロアワード
海事補佐人、元海技大学非常勤講師、(株)ワンワールド顧問◆岡田紀代蔵

海洋プラスチックごみの安全な処理は大きな課題となっており、高度廃棄物処理場に一任することには限界がある。
「海ごみゼロアワード2019」のイノベーション部門で日本財団賞を受賞した、「分別いらず、海ゴミから燃料が作れるリサイクル装置=再生資源燃料回収装置・アーバンリグ」を紹介したい。
日本は、海洋プラスチックごみ問題への具体的な取り組みを世界に先駆けて実行すべきである。

海洋プラスチックごみとは

■図1 北太平洋 東西ごみベルト
(出典:Daily Mail, 06 Feb. 2008)

2019年6月28、29日大阪のG20サミット(20カ国・地域(G20)首脳会議)首脳宣言では、海洋プラスチックごみ対策として、新たな海洋プラスチック汚染を2050年までにゼロにすることを目指す『大阪ブルーオーシャン・ビジョン』※1が示され、日本政府として、廃棄物管理・海洋ごみ回収などの技術推進のために、途上国における能力強化を支援する『マリーン(MARINE)イニシアティブ』※2が発表された。これに先立ち6月15、16日長野県軽井沢町では、「持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会議」で海洋ごみ問題が取り上げられ、『G20 海洋プラスチックごみ対策実施枠組』※3を策定した。
海には毎年1,000~2,000万トンのゴミが放棄され、その80%をプラスチックが占めている。世界のプラスチックの生産量は2014年時点で3億1,000万トン、世界経済フォーラムによると海に流出するプラスチックごみは最低でも年間800万トンである。これは市販500mlペットボトルに換算すると実に200億本分と推計される。英慈善団体エレン・マッカーサー財団の調査によると、海水中に含まれるプラスチックゴミの重量は2050年には海に生息する魚の重量よりも重くなると推計された。また専門家たちは、マイクロプラスチックを摂取した魚を食べることによって人間の食物連鎖に害を与えると警告している。1990年後半にアメリカの科学者チャールズ・モアが大量のプラスチックごみが漂う海域を発見し「太平洋ごみベルト」と命名し注目を集めた。これを海洋科学者カーティス・エベスメイヤーは北太平洋循環において「西部ごみ海域」と「東部ごみ海域」とに二分化している(図1)。この日本側にある「東部ごみ海域」にごみを漂流させる三大国は、中国・日本・インドネシアと言われ、プラスチック包装、容器などの使い捨てプラスチックごみを中国が約4,000万トン、日本が8分の1の500万トン程度排出している(2014年調査)。世界規模で見た一人当たりの排出量では、第一位のアメリカが約45キロ、第二位が日本で約32キロとなっている現状がある。

海洋ごみの安全な回収と処理とは

海洋浮遊ごみの回収・移送および処理に関して、2010年4月(公社)日本マリンエンジニアリング学会内に学会長、故西田修身氏(当時、神戸商船大学学長)の発案で「海洋浮遊ゴミの処理システムに関する調査研究委員会」が設立された。これは船舶の機動性と機能性を活用することにより、洋上の自己完結型システムによる海洋と海岸の環境保全に資する技術の可能性について調査研究することを目的としている。現在、同調査研究委員会は、主に対馬において漂着物を収集し、福岡にある高度廃棄物処理場にて海岸漂着ごみを処理する活動をしている。しかしながら収集物を処理場まで運ぶことは大きな資源損失である。海洋プラスチックごみを焼却処理する場合、含まれる塩分や塩素からは有毒ガス・ダイオキシンが発生し、塩素は焼却炉の寿命を極端に縮めてしまう。これらの問題を解決できる高度廃棄物処理場は限られており、本来管轄地域で処理すべき海洋プラスチックごみを一部の高度廃棄物処理場に一任することには限界がある。私たちは「安全」という意味合いに環境的なものだけでなく、安定継続という「運営的な安全」も考えていかなくてはならない。その解決方法として、環境省・日本財団共同主催の国際シンポジウムの「海ごみゼロアワード2019」(6月17日)においてイノベーション部門で当社((株)ワンワールド)が日本財団賞※4を受賞した「分別いらず、海ゴミから燃料が作れるリサイクル装置=再生資源燃料回収装置・アーバンリグ」を紹介したい。この処理機は過熱水蒸気を熱媒体として熱分解処理する装置で、水混合しやすい塩素の排出、高熱水蒸気の高浸透率の利用、さらに無酸素状態での常圧反応などにより(図2)、これまでの燃焼炉など従来炉の諸問題を解決し、軽油などを中心に利用可能な液体燃料資源を回収することができる。移動可能なトラック積載型(10t車)をはじめ、大型の連続機などでの稼働など、そのシンプルな構造から利用形態の多様化に対応できる。特筆したいのは回収油利用の高経済性である。海洋浮遊ごみへの応用対策としては、船舶に処理機を積載し、海洋浮遊ごみ捕捉チームの中核船として再生資源燃料回収を行い、捕捉チームの燃料給水船としても活動する現場完結型の清掃活動を行っていく方法が考えられる。

■図2 資源回収のシステムフロー

■図3 海洋浮遊ごみ捕捉対策の概念図

海洋浮遊ごみの捕捉は、現時点で開発されているテレメトリブイ(遠隔測定量計測電装浮標)や、ドローン・人工衛星等による探索技術を利用し、浮遊式捕捉ネットフェンス類を使用して効率的な海洋浮遊ごみの捕捉を実施している。収集船は(公社)日本マリンエンジニアリング学会シンポジウム2014『海洋浮遊ゴミの捕捉・回収システムの開発』にて発表された輸送・揚収システムのプッシャーバージ型(押船付箱船)(図3)輸送・引揚収納が、運営効率の面からも適していると考える。収集する方法と処理する方法が、ここにきて出揃った。対環境性、効率性、現場完結性、自費完結性、そして、即具現化が可能なこの方法に凝縮されている。

日本の役割

北太平洋・東部ごみ海域では、アメリカのサンフランシスコを基地として、オランダのザ・オーシャン・クリーンアップ財団がごみ回収システムの運用試験を2018年に開始した。2019年からは同システムの改善に取り組み、加えて海への流出を抑制するため河川用のプラスチックごみ回収船の運用試験をアジアで開始するなど、海洋プラスチックごみの大規模な回収を目指し活動を続けている。日本は、その排他的経済水域内(EEZ)にある北太平洋・西部ごみ海域、東日本大震災の漂流材も多く含まれているこの海域において、G20 関係閣僚会合で政府が提案した枠組みに沿って海洋プラスチックごみ問題への具体的な取り組みを世界に先駆けて実行すべきである。その早期実現する方策として、産官学共同ならびにG20各国の専門家を交えて取り組むための第三者機関を設立し、その運用原資は関連業界が拠出することとし、活動拠点には関連産業が揃う交通利便な地域を選定して、組織を作り、早期活動開始することが望まれる。(了)

  1. ※1大阪ブルー・オーシャン・ビジョン:G20大阪サミット首脳宣言のパラ39にて言及 https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ge/page23_002892.html
  2. ※2マリーン(MARINE)イニシアティブ https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000493727.pdf
  3. ※3G20 海洋プラスチックごみ対策実施枠組(仮訳) http://www.env.go.jp/press/files/jp/111827.pdf
  4. ※4海ごみゼロアワード2019結果発表 https://uminohi.jp/umigomizero_award2019/announcement.html
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