Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第455号(2019.07.20発行)

編集後記

同志社大学法学部教授♦坂元茂樹

♦本号は「海の日」記念号であるが、それにふさわしい執筆者と内容になっている。本誌第442号で山形俊男(公財)日本海洋科学振興財団会長が指摘されたように、人間活動の影響が地球環境に深刻な影響を与えていることは地球温暖化を見ても明らかである。国連は、2015年、持続可能な地球社会への転換を目指し、2030年までに達成すべき17の目標を「持続可能な開発目標(SDGs)」として設定した。同年に締結されたパリ協定は、2050年までの気温上昇を2℃以下とした。しかし、それを可能にするのは正確な現状把握である。2017年12月、国連総会で「国連持続可能な開発のための海洋科学の10年」の決議が成立した。
♦調整機関としてその実施計画を作成するユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)のJulie Rigaud海洋科学部門コンサルタントから、科学的能力、データ、知識、なかでもSDGs達成のために必要な科学の偏在の解消をめざす「国連海洋科学の10年」の意義についてご寄稿いただいた。海洋の持続可能な成長(Blue Growth)の推進にあたって、海洋科学の重要性を国際社会全体で共有するために、世界規模・地域規模で、科学者のみならず、政策決定者や市民社会、海洋事業・産業関者を巻き込んだ大きなうねりとなることを期待したい。
♦女性初の第60 次南極地域観測隊副隊長兼夏隊長を務めた原田尚美(国研)海洋研究開発機構地球環境部門地球表層システム研究センター長に第60次南極地域観測隊の活動をご紹介いただいた。62年の歴史をもつ南極地域観測であるが、気象観測、温室効果ガス濃度測定という「基本観測」に加え、「変動する地球システムについて南極から全球を解き明かす」をテーマとする6カ年計画の「研究観測」を行っているという。荒天に悩まされながらも、南極観測船「しらせ」を使った地道な海洋観測に従事する第60次隊の活動には頭が下がる思いがする。
♦2019年4月に世界海事大学(WMU)で開催された「第3回国際女性会議―海事社会の女性エンパワメント」に参加された、本誌の共同編集代表を務める窪川かおる帝京大学戦略的イノベーション研究センター客員教授から、同会議とその成果をご紹介いただいた。2018年に発足した海の女性ネットワークの立ち上げに尽力された窪川教授ならではの視点で、海洋分野における女性の活躍の必要性が熱く語られている。1989 年のウッズホール海洋生物学研究所のサマースクールに日本初の女子留学生だった津田梅子が参加したとの興味深いエピソードも紹介されている。ぜひご一読を。  (坂元茂樹)

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