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【Ocean Newsletter】バックナンバー

第455号(2019.7.20 発行)

国連持続可能な開発のための海洋科学の10年に向けて

[KEYWORDS]海洋科学の重要性認識/情報交換/持続可能な開発のためのデータ
ユネスコ政府間海洋学委員会海洋科学部門コンサルタント◆Julie RIGAUD

国連海洋科学の10年は、科学的能力、データ、知識、なかでも「持続可能な開発目標」(SDGs)達成のために必要な科学の偏在の解消をめざすものである。2021年からの国連海洋科学の10年の実施に向けて、海洋の持続可能な開発の達成をめざして、解決策志向型のアプローチの特定と開発が進められることが期待される。

国連海洋科学の10年(2021~2030年)の決議

国連海洋科学の10年のロゴ

2017年12月、国連総会において2021年から2030年までを「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年」(以下、「国連海洋科学の10年」)とすることが決議された。国連海洋科学の10年は、海洋に関する各分野の深い理解を生かし、学際的な対話を強化し、課題解決型の研究を推進して、国や社会的アクターによる持続可能な開発の実現に資する新しい知識や革新的な技術を創生することをめざしている。
また、現存するパートナーシップや技術を踏まえてさらに新しいパートナーシップや技術を創出し、海洋のさまざまな問題の解決に即した情報の収集のために必要となる、世界全体の科学的能力を強化・拡大し、海洋・沿岸域を対象として活動する関係者のニーズに応えていく。
海洋科学は、すべての国・人々が、持続可能な開発のための2030アジェンダおよびその中核をなす持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、根拠に基づいて取り組む能力の構築に貢献することができる。国連海洋科学の10 年は、科学的能力、データ、知識、なかでもSDGs達成のために必要な科学の偏在の解消をめざすものである。これには沿岸域にあるコミュニティー、特に小島嶼開発途上国(SIDS)および後発開発途上国(LDCs)における科学的能力へのニーズも含まれる。

変革を促すビジョン

長崎県九十九島の美しい海で行われている養殖
Photo: Getty Images/Jumoobo

国連海洋科学の10 年は海洋科学の新たな実施・利用方法を生み出す、変革を促すプロセスである。世界中の科学者と政策決定者を巻き込んで、われわれの科学のやり方、社会の要求に対する科学の応え方、社会における科学の活用の仕方、科学の共有の仕方、科学のコミュニケーションの仕方、科学の価値の受け止め方、新しい科学への資金提供の仕方を一新しようとする、包括的な運動である。
これは単に科学にたずさわる者のみの間で作りあげられるものではなく、社会全体のニーズがその駆動力となるもので、SDGsを達成することが一義的な目標となる。これらの目標達成のために、海洋に関わるあらゆる国のあらゆる分野の研究にたずさわる科学者や、政策決定者、コミュニケーションの専門家、市民社会、フィランソロピー組織、主要な経済主体など、多様なステークホルダーを巻き込んで進められる。また、他のあらゆる国連の下での活動と同様に国連海洋科学の10年は、人をその基盤とし、世界中の科学的能力、地域社会の知識(先住民の間に伝承される知識を含む)、技術革新のすべてを最大限に活用する。多くの専門分野の研究者を動員し、自然科学、社会科学、工学、さらには伝統的知識や先住民の知識を統合して進められる。
しかしながら、海洋が社会にもたらすサービスを維持するための知識をサポートする海洋科学の重要性や科学的・社会的価値は、広く社会全体を通じて認識されているという状況にはない。その結果、根拠に基づく意思決定を行うために必要とされる科学に対して、新たな知識獲得を可能にするために必要な支援がほとんど与えられていない。国連海洋科学の10年では、学際的アプローチを通して、海洋科学がもつこうした価値への理解が高まり、その価値が数値化され、海洋科学がもたらす知識が海洋の持続可能な開発に有用であるとの社会の理解が高まるであろう。
海洋科学の知識を経済的また社会的需要に応えることができる水準まで高めるためには、とくに新しい概念による海洋の持続可能な成長(Blue Growth)が推進されるなかでは、政府、国際機関のみの資金では不十分である。また既存の資金調達モデルのみによってSDGsの達成のために必要な科学およびデータのすべての資金需要を満たすことはできない。国連海洋科学の10年では、海洋の科学・データのための、より戦略的かつ多面的に、多セクター型の資金調達方法を探る。その方法は、海洋の科学・データが商業セクターにもたらす金銭的価値に基づき、フィランソロピー的目標に合致するとともに、社会的要請に応えるものでもある。

準備段階―包括的・参加型プロセス

国連海洋科学の10年はユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)が調整機関となって実施計画を作成し、2020 年の国連総会においてその承認を得ることになっている。その作業のために、19名の専門家から成るエグゼクティブ・プラニング・グループ(EPG)がIOCの事務局への諮問機関として形成された。EPGは、国連海洋科学の10 年への助言を行い、実施計画の起草を支援し、さらに関係各方面との連絡・協議を行うことを主な任務とする。この実施計画のとりまとめのためにIOCは国連加盟諸国および国連機関、政府間機関、NGO、その他関連ステークホルダーと協議し、一連の世界規模および地域ごとの会合を開催する。
今年5月にコペンハーゲンで開催された第1回計画作成世界会議は全く新しいあり方のフォーラムとなった。研究戦略の共同立案、計画作成、新たなパートナーシップの形成促進、海洋科学の10年間で対応すべき優先課題の特定、海洋科学の10年がめざす6つの社会的目標(汚染のない海、健全で強靭な海、予測可能な海、安全な海、持続可能かつ生産力のある海、すべてのデータに社会がアクセス可能な開かれた海)を達成するための具体的な成果の特定などが行われた。
この第1回会議の後、世界各地域において国連海洋科学の10 年の実施に向けた一連のコンサルテーション会合が行われ、それぞれの地域のステークホルダーがさらに討議を重ねて取り組みの優先順位、情報・知見の欠如する部分、海洋利用の上でのニーズの特定が行われる予定となっている。北太平洋地域のワークショップは、日本がホスト国となって、2019 年7月31日から8月2日まで東京において、IOCの西太平洋海域(WESTPAC)サブコミッションの主催により、文部科学省や北太平洋海洋科学機関 (PICES) 、日本ユネスコ国内委員会、(国研)海洋研究開発機構(JAMSTEC)、東京大学その他、域内のパートナーとの密接な協力のもとで開催される。3日間の会期は全体会議と分科会から成り、国際間、学際間での討議が行われることになっている。
こうした形で開かれる地域ごとのワークショップを通して、科学者・学識者、政策決定者、政策実施者、市民社会組織、海洋事業・海洋産業関係者、資金供与機関・財団などの間に対話が行われる。2021 年からの国連海洋科学の10 年の実施に向けて、海洋の持続可能な開発の達成を目指して、解決策志向型のアプローチの特定とその開発が進められることが期待される。(了)

  1. 本稿は、英語でご寄稿いただいた原文を事務局が翻訳まとめたものです。
    原文は、本財団HP https://www.spf.org/en/opri/newsletter/でご覧いただけます。
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