Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第441号(2018.12.20発行)

編集後記

同志社大学法学部教授◆坂元茂樹

◆日本は、国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の立場から、国際社会の平和と安定及び繁栄をもたらすべく、法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序を維持・強化するために、「自由で開かれたインド太平洋戦略」を外交の基軸としている。同戦略は、2016年、安倍晋三首相により、ケニアで開催された第6回アフリカ会議で提唱された。「インド太平洋戦略」では、法の支配などの普遍的価値を共有する域内の国の取り組みを支え、海上保安能力の強化の分野で協力を行っている。
◆倉本明海上保安庁総務部海上保安国際協力推進官から、「インド太平洋戦略」に基づき海上保安分野の支援に取り組む、2017年10月に発足した「海上保安庁モバイルコーポレーションチーム(MCT)」の活動についてご寄稿いただいた。2018年12月20日現在、8カ国に対し、計14回、MCT要員等を延べ53名派遣したとのことである。その中にはASEAN諸国のみならず、スリランカやジブチ、セーシェルが含まれている。フィリピン沿岸警備隊での法執行訓練や海上保安大学校練習船こじまの乗船研修などを通じて、インド太平洋地域における海上保安能力向上に努めるMCTの「海をつなぐ」活動の発展に期待したい。
◆水難事故を減らすべく海域の安全利用の研究に取り組んでいる西 隆一郎鹿児島大学水産学部教授からは、危険な沖向き流れである離岸流(海浜循環流)とサンゴ礁内で発生するリーフカレントにつきご教示いただいた。世界中で30万件発生しているといわれる水難事故(海浜事故)の防止のみならず、ゴミの海洋流出や海岸漂着現象の理解、さらにはサンゴ礁の白化現象の把握のためにも、離岸流やリーフカレントの理解が重要との指摘は興味をそそられる。
◆オリンピック・パラリンピック推進対策特別委員会委員である白戸太朗東京都議会議員には、「海から東京2020を考える」との論稿を頂戴した。プロアスリートとして世界中のさまざまな海を泳いできた白戸氏ならではのロタ島の美しい海の感想とともに、委員として東京オリンピック・パラリンピックが日本人の生活スタイル(スポーツ実施率の向上)や心の持ち方(障害者への心のバリアフリー)につながることへの期待の表明は、賛同できる視点である。大会会場となるお台場の海の水質改善が2020年までに進むことを期待したい。 (坂元茂樹)

第441号(2018.12.20発行)のその他の記事

ページトップ