Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第435号(2018.09.20発行)

編集後記

同志社大学法学部教授◆坂元茂樹

◆第100回全国高校野球選手権大会は、決勝戦に進出した秋田の金足農業高校の活躍に沸いた。奇しくも、秋田県勢の決勝進出は第1回大会の秋田中学以来103年ぶりであった。農業高校は全国で117校あるが、水産高校は46校である。洋上実習がある水産高校は、練習時間の確保の問題もあり、甲子園に出場した学校は、わずかに3校である。こうした高校野球の熱戦を通じて、農業高校や水産高校について関心が集まり、後継者不足に悩む農業と水産業に進む若者が増えることを期待したい。
◆本年7月に放映されたNHKの人気番組『ブラタモリ』で関門海峡の海上交通管制が取り上げられたが、海上交通の要衝である東京湾・伊勢湾・瀬戸内海・関門海峡には、24時間体制で船舶交通を見守る7つの海上交通センターが設置されている。2011年3月の東日本大震災で、東京湾に避難船舶を含め400隻以上の船舶が錨泊する事態を契機として、これまで東京湾海上交通センターと、東京、横浜、川崎、千葉の4つの港内交通管制室で個別に行っていた海上交通管制を横浜第二合同庁舎に機能集約し、海上交通管制を一元化した背景とその狙いにつき、八木一夫前海上保安庁交通部長に解説いただいた。ぜひご一読いただきたい。
◆外来種の侵入状況を明らかにする技術として最近注目を集めている環境DNAについて、益田玲爾京都大学フィールド科学教育研究センター准教授にご寄稿いただいた。環境DNA分析とは、水に含まれるごく微量のDNAを検査し、そこにいた生物を検出する技術である。本年4月に環境DNA学会が発足したとのことである。環境DNA学を生態系の持続的利用と環境保全など、人類全体の幸福に資する学問分野として育成、発展させようという新たな学会の未来に期待したい。
◆新潟食糧農業大学教授にご寄稿いただいた。マリントキシンは魚介類だけでなく、海洋微生物やプランクトンなどの微細藻類などに存在するという。魚による食中毒といえばフグ毒をすぐに思いつくが、世界で最も多く発生している魚介類食中毒はシガテラとされる。シガテラとは、プランクトンが産生する毒素に汚染された魚介類による食中毒をいう。従来、熱帯・亜熱帯海域でしか発生していなかったこのシガテラによる中毒事例が、地球温暖化の影響か南方産魚類(イシガキダイやバラフエダイ)の北上により本州沿岸にも広がっているとのことである。マリントキシンのリスク管理にはむずかしさがあるとのことだが、食の安全を今後どう確保していくか考えさせられる論稿である。 (坂元茂樹)

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