Ocean Newsletter

オーシャンニュースレター

第421号(2018.02.20発行)

編集後記

同志社大学法学部教授◆坂元茂樹

◆再生可能エネルギーの中で発電コストが比較的低い風力発電は、EUを中心に広く普及している。(一社)日本風力発電協会国際・広報部長の上田悦紀氏より、EUと日本の浮体式洋上風力発電の動向についてご寄稿いただいた。洋上風力発電には、着床式と浮体式の2種類がある。前者は、産業化とコスト化が進み、北海・バルト海で広く実用化されているという。しかし、水深が50mを超えると、安定性とコストに課題が生じるので、新技術として浮体式洋上風力発電に各国の関心が向かい、日本でも長崎、福島で実証試験が行われている。浮体式風力発電の実用化に向けての課題と展望を紹介した興味深い論稿である。
◆地球温暖化による海水温の上昇に伴い、大規模白化が進む沖縄のサンゴ礁の保全再生の取り組みについて、沖縄県環境部自然保護課の津波昭史氏からご寄稿いただいた。沖縄県は、平成22年度から28年度の7年にわたって、サンゴ再生に関する調査研究、サンゴ礁再生実証試験、サンゴ礁保全活動支援の3つを柱とする「サンゴ礁保全再生事業」に取り組み、平成29年度から5年にわたり、「サンゴ礁保全再生地域モデル事業」を実施するという。白化対策技術やサンゴ種苗の低コスト生産技術の開発に関する調査研究が進むことを期待したい。
◆地球温暖化による影響を受ける脆弱な地域の一つに北極がある。1996年、この問題に取り組むために、北極8カ国によって、国際協力のフォーラムとして北極評議会が設立された。日本も、ドイツやポーランドなど他の12カ国とともに、オブザーバー国として参加している。北極評議会は北極に係わる条約交渉を行う場としても活用されており、神戸大学極域協力研究センター長の柴田明穂教授から、北極評議会によって採択された3番目の条約にあたる北極科学協力協定の意義についてご執筆いただいた。同協定は科学活動における国際協力を促進することを目的として、海域を含む「指定された地理的区域」での調査へのアクセスを容易にする義務を締約国に課している。オブザーバー国は締約国になれないものの、この協定の便益を非締約国の科学者に広げるための努力が日本を中心とする非締約国によってなされたことが紹介されている。海洋の科学的調査の自由を先導する日本にとって、北極研究における許可申請や税関手続、出入国管理の手続の簡便化に向けて、有効活用できる協定であろう。 (坂元)

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