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第421号(2018.02.20 発行)

沖縄県によるサンゴ礁保全再生の取り組みについて

[KEYWORDS]赤土等流出防止対策/保全利用協定/白化対策
沖縄県環境部自然保護課自然保護班主任技師◆津波昭史

サンゴ礁は、多種多様な生物の生息の場であるとともに、漁業資源や観光資源としても、重要な価値を有しており、沖縄県の大切な宝である。
沖縄県は、「沖縄21世紀ビジョン基本計画」の下、環境部だけでなく他の関係部局とも連携してサンゴ礁の保全や再生についてさまざまな取り組みを行ってきた。
本稿では、沖縄県が取り組む事業内容について報告するとともに、実施しているサンゴ礁保全再生に係る事業についても報告する。

陸域対策の推進およびサンゴ礁におけるエコツーリズムの推進

沖縄県では赤土等の流出およびそれに伴う環境への影響等の現況と課題を踏まえ、海域に「環境保全目標」、陸域に「流出削減目標」をそれぞれ設定し、赤土等の流出防止対策を総合的・計画的に推進していくことを目的として「沖縄県赤土等流出防止対策基本計画」を策定している。
本計画は「沖縄21世紀ビジョン基本計画」を推進する計画としての役割の他、「第2次沖縄県環境基本計画」の基本目標の1つである「環境への負荷の少ない循環型の社会づくり」を達成するために必要な計画として位置づけられている。
また、本計画は沖縄県全体で取り組むことを基本としているが、とくに環境部、農林水産部、土木建築部を中心に施策を展開しており、これら関係部局が連携を図り、モニタリングによる対策効果の評価、計画・対策の見直し等を行っている。また、関係部局とともに、市町村等が実施する対策への支援を行っているほか、環境部としては沖縄県衛生環境研究所が行っているモニタリングをはじめ、次世代を担う人材育成のための環境教育に取り組んでいる。また、沖縄県赤土等流出防止条例に基づき、開発現場対策も継続して実施している。
次に、生活排水等の処理対策として、「沖縄汚水再生ちゅら水プラン」を策定し、各種汚水処理施設の整備を実施している。このプランは、県と市町村が連携して処理区域、整備手法および整備スケジュールの設定を行い、下水道や農業・漁業集落排水施設、浄化槽など各種汚水処理施設の整備を計画的、効率的に進めるための指針として、平成22年度に策定され、平成28年度に見直しが行われている。
平成25年度の各種汚水処理施設の普及率は85.4%で、当初の計画の83%を上回っている。今後、普及率を平成37年度に約95.4%、平成47年度に約100%とすることを目標としている。
また、環境保全型自然体験活動(エコツーリズム)を推進するため、保全利用協定制度を推進している。保全利用協定とは、事業者間で自主的に策定・締結するルールのことで、「沖縄振興特別措置法」に位置づけられた法的な制度であり、「保全」と「利用」双方のバランスをとりながら、次世代に豊かな自然・文化を継承し、同時に観光産業の持続的な発展を図るために策定されたものである。2017年3月現在、6つの協定が締結されており、サンゴ礁などをフィールドとする協定として、白保サンゴ礁地区保全利用協定と謝名瀬(ジャナビシ)地区保全利用協定がある。

サンゴ礁生態系の保全・再生の展開と課題

自然保護課は、サンゴ礁再生手法の確立や地域のサンゴ礁保全活動を支援することにより、豊かなサンゴ礁生態系の保全・再生を促進することを目的として、「サンゴ礁保全再生事業」を平成22年度から平成28年度までの7年間実施した。
主な事業内容は、サンゴ再生に関する調査研究(サンゴの遺伝子解析等の研究、有性生殖法によるサンゴ種苗の大量生産の開発、サンゴ種苗の中間育成技術の開発)、サンゴ礁再生実証試験(有性生殖法と無性生殖法によるサンゴの植え付け)、サンゴ礁保全活動支援(地域の活動の支援、サンゴ礁保全教育・啓発活動)の3つである。主な事業成果を表1に示す。なお、これらの事業成果については、国内外の学会誌等への投稿、サンゴ礁学会等での発表、あるいは県内各地で開催するシンポジウムにおける紹介を通して、県民等へ積極的に発信した。
「サンゴ礁保全再生事業」を実施していく中で、いくつか課題が明らかになった。
一つ目に、サンゴ種苗の植え付けにコストがかかることである。無性生殖法による種苗生産には1本あたり2,000円、有性生殖法による場合は1本あたり2,700円から3,500円の費用が必要であると推算されたため、実用化するためにはコストをもっと抑える必要がある。
二つ目に、高海水温等の影響による大規模白化現象により中間育成中のサンゴ種苗や植え付けたサンゴに大きな被害が発生したため、サンゴの白化対策が必要である。
三つ目に、地域で継続したサンゴ礁保全再生活動を行う体制を構築する必要性があげられる。
それらの課題を解決するため、平成29年度から平成33年度までの5年間、新たに「サンゴ礁保全再生地域モデル事業」を実施していくこととした。
この事業では、サンゴ種苗の生産、中間育成、植え付け手法等に係る費用の低コスト化、サンゴ種苗等の白化対策、人為再生されたサンゴ群集の海域生態系への影響等に関する調査研究を実施する計画である。特に、昨年、沖縄本島周辺でも発生した大規模なサンゴの白化現象を受け、サンゴ種苗等の白化現象による死亡が起こりにくい環境条件の解明、遮光等による白化軽減技術の開発等の調査研究を行っていく予定である。
また、サンゴ種苗の生産、植え付け、環境保全活動、環境教育等のサンゴ礁保全再生活動を関係団体等が連携し、補助金等がなくても自立的に運営できる地域モデルを構築し、全県的に普及・啓発する計画である(図1)。

■表1
サンゴ礁保全再生事業の主な成果
■図1
サンゴ礁保全再生地域モデル事業における モデル地域のイメージ

まとめと今後の展望

沖縄県においては、平成22年度から「サンゴ礁保全再生事業」を実施し、サンゴ礁保全再生に関する調査研究を行うとともに、遺伝的多様性に配慮したサンゴ群集を再生する実証試験に取り組んできた(図2)。平成29年度からは、新たに「サンゴ礁保全再生地域モデル事業」において、白化対策技術の開発やサンゴ種苗の低コスト生産技術の開発に関する調査研究等を実施するとともに、モデル地域において自立的にサンゴ礁保全再生活動を運営できる仕組みを創出し、同事業の成功事例をモデルとして全県的に普及・啓発していきたいと考えている。
また、引き続き,「沖縄県赤土等流出防止対策基本計画」に基づく赤土等流出防止対策等を推進することにより、陸域に由来する赤土等の土砂および栄養塩等の負荷の軽減対策に努めるとともに、サンゴ礁生態系における持続可能なツーリズムの推進について、地域の資源を保全・利用するためのルールである保全利用協定制度の普及にも取り組んでいきたい。(了)

■図2 再生されたサンゴ
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