Ocean Newsletter

オーシャンニュースレター

第419号(2018.01.20発行)

編集後記

同志社大学法学部教授◆坂元茂樹

◆ハワイ大学のシーグラントカレッジ(SGC)プログラムの所長であるDarren T. Lerner教授から、海洋分野の研究促進を図る大学への支援制度であるシーグラントについて紹介する論稿をいただいた。米国では、1966年にSGCプログラム法が制定され、米国海洋大気庁(NOAA)に支援を行う権限が付与され、すでに全米の沿岸域、五大湖、プエルトリコ、グアムにおいて33のSGCプログラムが存在するという。大学が沿岸・海洋に関わる問題の解決に取り組むことで、大学での研究・教育と地域コミュニティとの連携を図るSGCプログラムから、日本が学ぶことは多いと思われる。
◆2015年は、9月に国連で持続可能な開発目標(SDGs)が採択され、12月にパリ協定が採択されるなど、サステナビリティにとっては歴史的な年になった。SDGsでは、2016年から2030年までの間に達成すべき17の目標が掲げられ、169の具体的なターゲットと指標が設定された。こうした中、米国トランプ政権はパリ協定離脱を表明したが、米国の企業・自治体・大学の2,500以上が"We Are Still In"宣言を行っている。地球環境問題は、個々の国の問題ではなく人類全体の問題であるからだ。石田秀輝東北大学名誉教授からは、低環境負荷で心豊かなライフスタイルのために必要な要素を自然に学ぼうというネイチャー・テクノロジーについて、ご寄稿いただいた。石田名誉教授は、論稿の中で、「間抜けの考察」を論じておられる。「間抜けの考察」とは何か?ぜひご一読を。
◆昨年12月、(国研)宇宙航空研究開発機構(JAXA)の金井宣茂宇宙飛行士がソユーズ宇宙船で国際宇宙ステーション(ISS)に到着し、「健康長寿」の研究のため約半年の長期滞在を開始したことは国民的話題になった。他方でJAXAは、地球環境に大きな影響をもつ南極海や北極海の海氷面積の監視という地道な活動を行っている。JAXAで地球観測研究センター研究領域主幹を務める可知美佐子氏から、日本が開発した世界最高性能のマイクロ波放射計AMSR-Eとその後継であるAMSR2が極地の海氷分布の観測で活躍していることを紹介する論稿をいただいた。こうした海氷観測データは科学研究と実利用の両面での利用が進んでいるものの、将来的な観測継続には懸念が残るとされる。海氷リモートセンシングで重要な役割を果たしている日本が、この分野で引き続き先導的役割を果たせるように政府の支援を期待したい。 (坂元)

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