Ocean Newsletter

オーシャンニュースレター

第407号(2017.07.20発行)

編集後記

同志社大学法学部教授◆坂元茂樹

◆2007年、その第1条で、「この法律は、…海洋に関し、基本理念を定め、…総合海洋政策本部を設置することにより、海洋に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、…我が国の経済社会の健全な発展…とともに、海洋と人類の共生に貢献することを目的とする」と規定した海洋基本法が施行されて10年がたつ。
◆海洋基本法の「生みの親」ともいうべき武見敬三参議院議員からは、海洋基本法制定から10年を総括する論文をご寄稿いただいた。同法に基づく第3期海洋基本計画の策定を控えた本年、「各省庁が確実に実行していく、実行可能な計画にしなければならない。それが、過去2回からの経験則である」との指摘は重い。
◆科学技術イノベーションにより「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(SDGs)達成しようとの世界の動きの中で、わが国発の「ブルー・イノベーション」の創出を説く論稿は、新たに笹川平和財団海洋政策研究所所長に就任した角南 篤氏のものだ。IOTやビッグデータ時代におけるエビデンスに基づく地球全体のガバナンスの必要性を説く本論稿は、傾聴に値する。
◆総合海洋政策本部参与会議の参与として、海洋安全保障の分野でご活躍の古庄幸一氏からは、海洋状況把握(MDA)についてご寄稿いただいた。2001年の同時多発テロを契機に米国で始まったMDAは、今では「海洋からのさまざまな人為的または自然の脅威に対応するための情報共有基盤・枠組み」として深化しており、MDAの構築は喫緊の課題とされる。本年、安倍晋三総理からも、「次期[第3期]海洋基本計画では『海洋の安全保障』を幅広く捉えて取り上げ、…『MDA体制の確立』に万全を期す」ように求められている。このMDAへの取り組みと実現における課題を論じてもらった。
◆大陸棚限界委員会の委員として活躍された浦辺徹郎氏の論稿は、もっぱら陸上のみを計算対象に日本の国土重心を論ずることへ警鐘を鳴らす。日本の領海と排他的経済水域を合わせた海底国土を含めると、総国土重心は現在より約750キロ南にずれるという。わが国の海洋鉱物資源のほとんどが、総面積重心の南側の大陸棚にあることから、「新たな海洋産業を創出し、わが国の総国土のバランスある発展を実現」すべきという提言は、興味深い。 (坂元)

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