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Ocean Newsletter
第406号(2017.07.05発行)
編集後記
東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センター特任教授◆窪川かおる◆夏の恐竜展は、子どもたちが楽しみにしている行事のひとつであろう。その巨大な生きた姿への想像力を逞しくし、名前も強くて怖そうなところなど、どこをとっても恐竜は面白い。その恐竜たちに負けず劣らず、近年は深海生物の人気が上昇中である。2013年に国立科学博物館で開催された深海展には、約60万人が入場した。今年の特別展「深海2017」はさらなる混雑が予想されている。深海探査や先端研究を駆使して進められている深海研究で、期待される目的のひとつは、生命の起源の解明である。
◆水は生命の母であり、地球に海がなければ生命は誕生しなかった。少し前までは、生命は海がある地球にしか存在していないと信じていたが、関根康人氏からそれを覆す宇宙研究の驚くべき成果を紹介いただいた。土星の衛星の探査から、地球外に海があることがわかってきている。その中で生命の存在の可能性まで考えられているのが、エンセラダスである。この衛星は、凍結した氷地殻をもち、その下に海があるらしい。地球の深海研究よりエンセラダスの地下海の研究の方が速く進むかもしれない。負けるな深海研究。
◆最近よく耳にする海のエコラベルについての解説を大元鈴子氏にいただいた。天然の水産物のためのMSC認証(青いマーク)と、養殖による水産物のためのASC認証(緑のマーク)の取得に関わった生産者の事例がそれぞれ紹介されている。筆者は東京都に住むが、エコラベルを目にすることは滅多に無く、普及には時間がかかるものと考えていた。一方、エコラベルを日々見るかどうかは、生産者がエコマーク取得に動かなければ始まらない。この取得に関わるドラマは、消費者が環境配慮への理解を深めることにもつながるのではないだろうか。
◆海水浴場のライフセーバーの存在は大きい。救命のプロに見守られている安心感がある。ライフセーバーたちの日々の鍛錬も並大抵ではないだろう。このライフセーバーの組織体制、彼ら自身の安心・安全のための保障や法的整備など、さまざまな検討課題があることを小山隆彦氏は書いている。臨海学校へ行く学校が少なくなり、海へ行く機会も昔ほど多くない。それでも夏には海水浴客が増える。そういう人々を陰で支えるライフセーバーに感謝したい。 (窪川)
皆様に海洋の重要性を認識していただき、海洋に関する諸問題を総合的な視点で捉えて議論していくためにOcean Newsletterが創刊されたのは2000年8月です。それ以来、月2回様々な海洋に関するオピニオンを毎回3編ずつ掲載して発行し続け、今回で406号となりました。私は、このOcean Newsletterの刊行に当初から深く関わり、特に第64号からは発行人としてその先頭に立ってきました。お蔭様で海洋に関心を持つ皆様に支えられてOcean Newsletterは順調に発展して今日に至っております。さて、私は、このたび海洋政策研究所長を退任し、発行人を後任の角南 篤氏に引き継ぐこととなりました。ここにこれまで皆様から賜ったご支援・ご協力に感謝申し上げますとともに、海洋に関する総合的な議論の場であるOcean Newsletterに引き続き皆様の変らぬご支援・ご協力を賜りますようお願い申し上げまして、退任のご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
第406号(2017.07.05発行)のその他の記事
- 海と生命を宇宙に探る 東京大学大学院理学系研究科准教授◆関根康人
- 生産者の視点からの「国際資源管理認証」 宮崎大学産学・地域連携センター講師◆大元鈴子
- 「ライフセーバー」が守るビーチの安全と将来への展望 NPO法人日本ライフセービング協会一般会員◆小山隆彦
- 編集後記 東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センター特任教授◆窪川かおる