2017.11.14
11月11日(土)、笹川平和財団海洋政策研究所(東京都港区 会長:田中伸男)は、グローバル・オーシャン・フォーラム(米・メリーランド州 代表:ビリアナ・シシン・セイン)、UNESCO政府間海洋学委員会(IOC)等と共にドイツ・ボンで開催されているUNFCCC/COP23(第23回国連気候変動枠組み条約締約国会議)の会期中に海洋と気候問題を各国の代表者等と議論する特別イベント「オーシャンズ・アクション・デー」を開催しました(開催記事はこちら)。
世界各国から気候変動と海洋の課題に関わる首脳の他、政府、NGO、研究機関、国際機関などから80名が登壇し、約400名の参加を得て、総合戦略、科学研究、水産資源管理、ブルーカーボン(海洋炭素)、資金、生態系適応、移民・移転などの課題について集中的議論を行いました。
午後に開催された全体会議の様子(左:ピーター・トムソン国連海洋特別大使、
中:トミー・レメンゲサウ パラオ大統領、右:アノテ・トン 前・キリバス大統領)
イニア・セルイラトゥ フィジー農業・農村・海洋・国家災害管理大臣・気候変動行動ハイレベル・チャンピオンが議長国を代表して挨拶をし、海水温上昇、酸性化、海水面上昇、暴風雨などが脆弱な小島嶼開発途上国の人々の生活を脅かしているとの警鐘を発しました。続いて、カルメル・ヴェッラ欧州委員会環境・海事・漁業担当委員、ヨッヘン・フラスバルト 独連邦環境省事務次官などが登壇しました。
なかでも、エルネスト・ペニャス・ラド 欧州委員会海洋・漁業局政策立案調整課長は、気候変動に起因する海洋環境の変化により、漁業資源の生息地や回遊経路が変化していることから、漁業権配分などの制度的変更が必要になっていると指摘しました。ジョシュア・ウィクリフ フィジー環境事務次官は、海洋・沿岸の炭素固定や生物生息域の保全などの生態系サービスの向上を目的とし、護岸土木工事と並行してマングローブや沿岸域の植生再生を進めていると報告しました。インガ・アンダーセン 国際自然保護連合(IUCN)事務局長は、自然を活かした沿岸域における防災機能の強化が多面的便益をもたらし地域社会の長期的利益につながると指摘し、優良事例の共有などの重要性を指摘しました。
午前に開催された全体会議の様子(左上:ビリアナ・シシン・セイン グローバル・オーシャン・フォーラム代表、
右上:ローラ・タック世界銀行副総裁、下:会場の様子)
「移民・移転」のセッションでは、前川美湖 海洋政策研究所海洋政策チーム長兼主任研究員が議長を務め、エネレ・ソポアガ ツバル首相が、海洋問題を気候変動と一体として議論し、気候変動に起因する人々の移転に対応する法的枠組みの整備を進める重要性を強調しました。閉会式では、トミー・レメンゲサウ パラオ大統領が健全な海洋と安全な気候、そしてそれらに依拠する地域社会を国際社会が総合的に議論を進めていくことを呼びかけました。アノテ・トン前キリバス大統領は気候変動への適応力を構築していくための国際協力を求めました。
セッション6「移民・移転」でのエネレ・ソポアガ ツバル首相による発言とセッション共同議長および登壇者による集合写真
角南篤 海洋政策研究所長は、科学に基づく海洋保全と持続的利用に向けた研究推進とそうした成果に基づく政策実装の重要性を指摘しました。ピーター・トムソン 国連海洋特使は、SDG14(海洋に関する持続可能な開発目標)の達成に向けた取り組みの強化を呼びかけました。イギリス、フィンランド、ホンジュラス、ルーマニア政府代表が、海洋に関する持続可能な開発目標の実現と海洋に関する緊急行動を呼びかける「ビコーズ・ザ・オーシャン(海洋は今)宣言」に署名しました。同宣言の署名国は26か国に達し、「より先に、速く、共に行動する」ために、同宣言への署名が呼びかけられ、閉会となりました。
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