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【開催報告】 衛星 VDES 実機データによるデモンストレーション ―日本初の衛星VDESからの電波の受信・復調デモに成功―
笹川平和財団海洋政策研究所(OPRI)は2025年11月5日、海上保安庁の後援を受け、『衛星 VDES 実機データによるデモンストレーション』を東京で開催しました。
今回のデモンストレーションでは、本年(2025年)6月開催のIMO MSC会合において、これまで「AIS搭載義務」となっていたSOLAS条約を、「AISまたはVDES搭載義務」に改訂し、2028年1月1日より施行することが承認される中、次世代AISとなるVDES(VHF Data Exchange System)の利用啓発活動の一環で、VDES衛星実機を利用し日本国内向けに実際に電波を送信し、国内(横浜)で初めて受信・エンコードを行うデモに成功したこと(First Light)の報告が行われました。
また、東京会場参加の国内関係省庁、民間企業関係者、Saab Transponder Tech社のTechnical Director (Vdes Alliance代表者)と、欧州関係者をオンライン接続する形式で開催され、約90名の実務者が一同に会して、VDESの社会実装にむけた課題と解決策案に関する議論を行い共通認識を得ることができました。
牧野光琢・笹川平和財団海洋政策研究所長の開会挨拶では、海洋を通じた世界平和の実現 (One Ocean)を希求する団体として、安全安心なOne Oceanを実現するためには、海洋関係者が共通に利用するツールが必要と考え、約10年前より「海洋と宇宙の連携」活動に取り組んで来たこと、「VDES」をこのツールの一つとして啓発普及を推進すべく、2023年下期から2026年末までの3.5ヵ年の計画で、日本財団基金事業として、「衛星VDESの有益性実証事業」に取り組んでいるとの背景説明とともに、今後、地上VDESと衛星VDESが融合したコミュニケーション向上に向けた活動が盛んになることへの期待が述べられました。
今回デモの実施機関である西村浩一・スターヌラ・ジャパン 代表取締役社⻑より、VDES国際動向説明並びに、今回デモ題材として「VDES衛星を介した海上安全情報(MSI S-124フォーマット)の伝送とECDISへの表示」に取り組む意義に関して説明があった。また、引き続き、阪井英太・スターヌラ・ジャパン技術部長より、今回のデモで利用した実験構成図説明と同意に、欧州における実験結果及び日本国内の実験結果に関し詳細説明が行われました。 (下記に参考資料を掲載)
これらを受けて、欧州・日本間でパネル形式で質疑応答が行われ、会議時間を超えて、VDES利用の技術的課題並びに事業化に向けた意見交換が実施されました。
最後に、川越功一・海上保安庁参事官より、閉会挨拶として、関係機関、研究者、そして企業の皆様の長年にわたる開発努力に深く感謝と共に、今後も国際会議を通じてVDESの標準化に貢献してまいりますとのメッセージ発信が示されました。
海上安全に対する危惧と海洋状況把握能力向上の必要性が高まる中、海洋政策研究所として、日本財団基金事業の2026年度終了に向けて、社会実装を目指して活用事例と有益性の実証デモ、国際連携促進に関し、集中と選択が求められていることを痛感しました。また、国産VDES衛星も来年打ち上げ予定であり、海洋DX分野での我が国のプレゼンスを高めるとともに、次世代を担う人材育成に貢献するべく、関係各位の協力を得ながら継続推進することの重要性を再認識する機会を得ることが出来たとの声を参加者より頂くことができました。この場をお借りして感謝申し上げます。
【参考資料】
今回イベントの資料は以下のリンクよりPDF版をご覧いただけます。
『衛星 VDES 実機データによるデモンストレーション』 次第(73.9KB)
資料2: Ymir-1 による S-124 航行警報(1.6MB)
衛星VDESで進化する海洋産業(1.4MB)
(文責:笹川平和財団 海洋政策研究所 渡辺忠一)