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【開催報告】第193回海洋フォーラム「国家管轄権外区域における生物多様性(BBNJ)の重要性と今後の展開について」

2023.03.29

 2023年3月27日、(公財)笹川平和財団海洋政策研究所は、「国家管轄権外区域における生物多様性(BBNJ)の重要性と今後の展開について」をテーマとして第193回海洋フォーラムを開催しました。約3年2か月ぶりに会場参加を再開し、対面・オンラインのハイブリッド形式での開催となった今回のフォーラムには、会場約40名、オンライン約160名、計200名を超える方にご参加頂きました。

 

 阪口秀・笹川平和財団海洋政策研究所長は、開会挨拶において、今月初めに各国が合意したBBNJ新協定の誕生を歓迎し、海洋政策研究所として、日本の批准、そして60か国の批准が集まり次のステップに進むことを期待すると述べつつ、国内での普及啓発の重要性を強調しました。

開会挨拶を行う阪口秀・笹川平和財団海洋政策研究所長 写真

開会挨拶を行う阪口秀・笹川平和財団海洋政策研究所長

 パネルディスカッション「BBNJ新協定の合意を受けて」では、まず、モデレーターを務めた前川美湖・笹川平和財団海洋政策研究所主任研究員から、本フォーラムの議論の基盤として書籍『海の生物と環境をどう守るか 海洋生物多様性をめぐる国連での攻防』(坂元・前川共編、2022年10月)の紹介があり、一般の方にも広くBBNJの問題を自分事として受け止めて頂きたいとの説明がありました。それに続いて、4名の登壇者がそれぞれ話題提供をおこないました。
 竹山春子・早稲田大学理工学術院教授は、「海洋遺伝資源の利活用の進展:微生物遺伝子情報から考えること」と題して、バイオテクノロジーや合成生物学の研究の最先端を紹介しつつ、ゲノム情報の源としての海洋の重要性や、国際連携の必要性について説明しました。
 本田悠介・神戸大学大学院海事科学研究科准教授は、「BBNJ新協定合意の影響―MGRに焦点をあてて―」と題して、海洋遺伝資源(MGR)に焦点を絞った上で、新協定条文の解説と日本への影響について解説しました。
 八木信行・東京大学大学院農学生命科学研究科教授からは、「海洋生物多様性の保全と水産資源の持続可能な利用-BBNJテキスト合意後の展望-」という内容で、BBNJ協定の政府間交渉に日本政府代表団の一員として参加された経験も踏まえ、4つの主要論点(MGR、区域型管理ツール、環境影響評価、技術移転)すべてに言及しつつ、漁業資源の保全の観点から区域型管理ツールである海洋保護区を中心に据えて詳細を説明しました。
 樋口恵佳・東北公益文科大学公益学部准教授は、「協定の枠組み&能力構築および海洋技術移転」をテーマとして、現在公表されている新協定の条文案に基づき、新協定の枠組みを①組織、②基金、③紛争解決制度、④遵守確保制度に大別して説明した上で、能力開発および海洋技術移転に焦点を絞って、その制度の特徴などを解説しました。

パネルディスカッションの様子写真

パネルディスカッションの様子

 その後の質疑応答では、オンライン・会場双方の参加者から多くの質問やコメントがあり、活発な議論がおこなわれました。
 最後に、笹川平和財団理事である坂元茂樹・神戸大学名誉教授より、総評として、今回のフォーラムにおいて新協定を巡る多岐にわたる論点が提示されたことを示しつつ、今回のフォーラムが参加者にとってBBNJ新協定について考える契機となることを祈念するとの言葉があり、閉会となりました。
坂元茂樹・笹川平和財団理事/神戸大学名誉教授写真

坂元茂樹・笹川平和財団理事/神戸大学名誉教授

このイベントの動画は当財団Youtubeサイトよりご覧いただけます。また、パネルディスカッションでもご紹介いたしました書籍『海の生物と環境をどう守るか 海洋生物多様性をめぐる国連での攻防』はこちらでもご案内しております。ぜひご覧ください。
(文責:笹川平和財団海洋政策研究所 主任 藤井麻衣)

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