国連では、国家管轄権外区域の海洋生物多様性(Marine Biodiversity of Areas Beyond National Jurisdiction:BBNJ)を保全し持続的に利用するための国際ルール(BBNJ新協定)策定に向けた政府間交渉が進められています。公海および深海底から構成される国家管轄権外区域は、マグロやサケ等の水産有用種や、サメやウミガメ等の希少種が生息域とする重要な海域であり、経済的な利益をもたらし得る海洋遺伝資源が多く存在するとされています。しかし、これらを包括的に管理するためのBBNJ新協定に関する議論については、一般的に認知されていません。本書は、BBNJをめぐる議論およびBBNJ新協定の意義を多くの方に広く伝えることを目的に、政府間交渉の背景となる国際社会の動向や公海域の海洋科学の進歩、政府間交渉の近年の動きを解説しています。