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【開催報告】海洋政策大臣及びハイレベル講演者が、ブルー・リカバリーと今後の海洋政策の方向性について議論しました

2020.10.09
2020年9月3日(木)、第3回ウェビナー「海洋基盤を通じた経済再生と海洋政策対話に向けた展望ブルー・リカバリー」が、ワールド オーシャン サミット・インサイトアワー・ウェビナーシリーズの一環として、日本財団、笹川平和財団海洋政策研究所、エコノミスト グループの共催により開催されました。

エコノミスト グループのアジア太平洋編集主幹であるチャールズ・ゴダード氏は、過去2回のウェビナーを振り返り、当初は2020年に予定されていましたが、今年後半もしくは来年に延期された一連の重要な国際会議について言及しました。ゴダード氏は2020年から2021年を「遅れた海洋のスーパー イヤー」と呼び、海洋に関する一連の国際会議、世界貿易機関(WTO)での有害な漁業補助金の撤廃に関する交渉、国家管轄権外区域海洋生物多様性(BBNJ)に関する協定案の交渉等に言及しました。

笹川平和財団理事長・海洋政策研究所所長の角南篤氏は、今回の第3回ウェビナーへの歓迎の意を表するとともに、過去2回のウェビナーでの議論を想起しました。角南氏は、エコノミストのワールド オーシャンサミットは今年3月に東京で開催が予定され、OPRIは関連する会議を共催することになっていたけれども、コロナ禍の影響で全て取りやめとなったと述べるとともに、一連の重要な海洋関連会議で主導的役割を担う関係者が出席してくれていることを非常に嬉しく思っていると述べました。そして、持続可能な海洋の実現とブルー・リカバリーの促進に向けた政策の道筋を描いていくのに役立つ活発な議論を期待していると述べました。
(左)チャールズ・ゴッダード エコノミスト・アジア太平洋編集主幹、(右)角南篤 笹川平和財団 理事長/海洋政策研究所 所長写真

(左)チャールズ・ゴッダード エコノミスト・アジア太平洋編集主幹、(右)角南篤 笹川平和財団 理事長/海洋政策研究所 所長

日本の海洋政策担当大臣である衛藤晟一氏は、日本が管轄する海域は陸地の12倍の広さで、世界で6番目に大きいと述べ、海洋の持続可能な利用や科学的知見の充実など日本の海洋政策の要点を示しました。衛藤大臣は、海洋の優先課題として、海底鉱物資源の持続可能な探査と開発、ゼロエミッション船の開発と2028年までの商業利用、日本の海洋状況把握(MDA)システムと海洋情報表示システム(海しる)の確立が含まれると述べ、海洋関連の会議は、ブルー・リカバリーを後押しする機会としてより良く利用されるべきであると述べました。

衛藤晟一 海洋政策担当大臣写真

衛藤晟一 海洋政策担当大臣

ポルトガルの海洋大臣であるリカルド・セラン・サントス氏は、ポルトガルでは、ブルー・エコノミーが33億ユーロ以上の経済価値を生み出し、これはポルトガルの国民総生産の3.5%に相当し、国内の総雇用の3.1%を支えていると述べました。2021年の第2回国連海洋会議に向けて想定されている優先政策目標について、ポルトガル政府は漁業や養殖業に従事する人々を含む利害関係者との対話を促進するよう努力していると述べました。

ピーター・トムソン国連事務総長海洋特使は、コロナ禍により国際交渉が中断されたと述べるとともに、予定されている会議に向けた機運を持続させることで、対面会議やオンライン会議を通じ、求められる成果の達成を目指さなければならないと強調しました。トムソン氏は来年リスボンで開催される第2回国連海洋会議では、持続可能な海洋のための科学とイノベーションが取り上げられることを期待していると述 べました。
(左)リカルド・セラン・サントス ポルトガル海洋大臣、(右)ピーター・トムソン 国連事務総長海洋特使写真

(左)リカルド・セラン・サントス ポルトガル海洋大臣、(右)ピーター・トムソン 国連事務総長海洋特使

国家管轄権外区域海洋生物多様性協定に関する政府間会議(BBNJ)の議長であり、かつシンガポール海洋・海洋法担当大使兼外務大臣特使のレナ・リー氏は、交渉の延期を、より良い意思決定を行うための調整を促進する機会と捉えていると述べました。公正でバランスのとれた実効性のある条約を構築するためには、主要なアクターを巻き込み、新たな知識や情報を動員して、最適な判断ができるような仕組みが必要であると述べました。

パラオ共和国国連大使のゲディケス・オライ・ウルドング氏は、コロナ禍は、私たちの海洋会議(Our Ocean Conference)と第2回国連海洋会議に向けてより良い準備をする機会を与えてくれたと述べました。同氏は、この海洋会議では各国政府、市民社会、NPO、企業が、持続可能な海洋のためのコミットメントを検討し、誓約し、その進捗状況を確認することが予定されていると述べ、海洋を立て直し、壊れかけた未来を修復するために私たちは協力しあっていかなければならないと述べました。

(左)レナ・リー 国家管轄権外区域海洋生物多様性協定政府間会議議長 シンガポール外務省海洋・海洋法大使・特使 (右)ゲディケス・オライ・ウルドング パラオ国連大使写真

(左)レナ・リー 国家管轄権外区域海洋生物多様性協定政府間会議議長 シンガポール外務省海洋・海洋法大使・特使 (右)ゲディケス・オライ・ウルドング パラオ国連大使

地球環境ファシリティーの最高執行責任者を務め、現在は東京大学のグローバル・コモンズセンター所長である石井菜穂子教授は、コロナ禍を経験したことで、科学に基づいて自然と人間の関係を考える必要性を改めて想起することになったと述べました。科学に基づく政策の推進は投資を促すことにもつながり、コロナ禍で後退することなく、新たな可能性を築いていくための機会として捉えていくこと意義を強調しました。

ティアゴ・ピタ・エ・クンハ オセアノ・アズル財団最高執行責任者は、私たちは海洋環境の危機に対する科学に基づく解決策を模索する途上にあり、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書は実現可能な解決策を提示しており、私たちは直面している脅威を見極めていかなければならないと述べました。また、第2回国連海洋会議でより力強い合意を成立させ、今後10年の間により広範な自然保護を実現すべきだと述べました。
(左)石井菜穂子教授 東京大学グローバル・コモンズセンター所長、(右)ティアゴ・ピタ・エ・クンハ オセアノ・アズル財団理事長写真

(左)石井菜穂子教授 東京大学グローバル・コモンズセンター所長、(右)ティアゴ・ピタ・エ・クンハ オセアノ・アズル財団理事長

角南氏は、一連の海洋関連国際会議が遅れたことは、今後の多国間交渉を効果的に進めるために活用すべきで、そうした交渉を阻害するようなことはあってはならないと述べました。持続可能な海洋のための多様なステークホルダーの対話の場を維持し、協力を進め、イノベーションを推進していくことが重要であると述べました。

討論では、全てのステークホルダーが集い、共同しながら持続可能な海洋と海洋を基盤とした経済振興を通じた経済再生(ブルー・リカバリー)の実現に向け協力していくことが重要であるとの点などが確認されました。

 

なお、ウェビナーの詳細につきましてはこちらでご覧いただけます

(文責:海洋政策研究所 田中元研究員、豊島淳子研究員、渡邉敦主任研究員、黄俊楊研究員、小林正典主任研究員)

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