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【開催報告】ウェビナー「アジア太平洋における海洋を基盤とする力強い経済再生を目指して」を開催しました

2020.08.26

2020年7月23日(木)、海の日を記念して笹川平和財団、日本財団、エコノミストグループの3者共催によるウェビナー「アジア太平洋における海洋を基盤とする力強い経済再生を目指して」をオンラインで開催しました。

冒頭にエコノミストアジア太平洋編集長のチャールズ・ゴダード氏がウェビナーの趣旨を説明し、ハイレベルの対話を促進することによってブルーエコノミーに立脚した経済回復「ブルーリカバリー」を実現に向けた方途を議論することがセミナーの目的であると述べました。続いて笹川平和財団の角南篤理事長が挨拶し、海洋が直面する様々なリスクに国際社会が取り組みつつ、コロナ禍から経済社会的な回復を図る上でブルーエコノミーを推進していくことの重要性を強調しました。

左)チャールズ・ゴダード エコノミストアジア太平洋編集長、(右)角南篤 笹川平和財団理事長写真

左)チャールズ・ゴダード エコノミストアジア太平洋編集長、(右)角南篤 笹川平和財団理事長

続いて日本財団の笹川陽平会長が登壇し、世界は、現在のコロナ禍だけでなく、全ての生命を支える母なる海洋の環境が悪化することにより、人類が存続していくに重大な脅威に直面していると述べました。地球温暖化、海洋酸性化、漁業資源の枯渇、そして何百万トンもの海洋プラスチック汚染が私たちの海を脅かしていると指摘し、長期的な視点で海の窮状に取り組む必要性を強調しました。日本財団は、創設理念である「みんなが、みんなを支える社会(One World One Family)」に基づき、海洋危機の克服に向け、長い間取り組んできたと述べ、世界中の海の保全を図る取り組みを強化する必要があると述べました。

パラオ共和国のトミー E. レメンゲサウ ジュニア 大統領は、パラオはCOVID-19の影響で観光が中断したことによりパラオは大きな経済的損失を受けていると述べました。海洋プラスチック汚染や海洋環境の悪化など、海洋が直面している危機に対する取り組みを強化する重要性も強調しました。また、レメンゲサウ大統領は、パラオの国家海洋聖域法について言及し、日本財団の支援を受けて沿岸警備隊の海洋監視の能力強化に取り組み、同法実施を促進することができたと述べました。また、レメンゲサウ大統領は、日本の安倍首相がパラオの持続可能なブルーエコノミーを推進するために行っている取り組み(例えば水産業や沿岸生態系の保護のための能力開発といった持続可能でレジリエントな地域社会の構築を目指した取り組み)に対しても謝意を表明しました。

(左) 笹川陽平 日本財団会長、(右) トミー E. レメンゲサウ ジュニア パラオ共和国大統領写真

(左) 笹川陽平 日本財団会長、(右) トミー E. レメンゲサウ ジュニア パラオ共和国大統領

国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)のアルミダ・アリスジャバナ事務局長は、海は人為的な圧力に対して脆弱で影響を受けやすく、海洋環境を保全するためには、データ、統計、海洋会計(ocean accounting)などを活用していくことが肝要であると指摘しました。アリスジャバナ事務局長は、各国間の海洋経済の取組にある差異に言及し、持続可能なブルーエコノミーを志向する途上国を支援する必要性を強調しました。また、海洋プラスチックごみの40%がアジア太平洋地域を発生源としている点にも触れ、ビジネスモデルを変革する企業にインセンティブを提供するなどの方法で解決策を模索していく必要性を強調しました。

リファインバース株式会社 常務取締役の加志村竜彦氏は、使用済み漁網のリサイクルを進める取組を紹介しました。漁網を含む漁具は海洋プラごみに占める割合が高いことが指摘されています。加志村氏は、漁網のリサイクルが進むことは海ごみを減らすだけでなく、漁業分野がより持続可能になり説明責任を果たすことに繋がると述べました。リファインバース社は、今までのところ漁網のリサイクルを小規模で実施しているが、今後は漁業従事者やステークホルダーと協働することで現場での連携を進め、新たな雇用機会を創出し、取り組みを広域的に展開したいと意気込みを語りました。

(左) アルミダ・アリスジャバナ 国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)事務局長 (右) 加志村竜彦 リファインバース株式会社常務取締役写真

(左) アルミダ・アリスジャバナ 国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)事務局長 (右) 加志村竜彦 リファインバース株式会社常務取締役

角南理事長は2008年のリーマンショックがグリーンリカバリー、つまり、環境配慮型の経済再生の動きを促したと振り返りました。この点で官民連携は重要で、同様に、イノベーションをブルーリカバリーの原動力と捉え、科学、技術、イノベーションを促進しなければならないと述べました。ユネスコ(国連教育科学文化機関)が主導している「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年」は、こうした取り組みを後押しするものになると期待を述べました。

ウェビナー中に実施されたアンケート調査では、聴衆の50%がコロナ禍の社会経済的影響を深刻と考えており、46%が中程度と考えていることが明らかになりました。漁業、海事、観光、サービスを含む海洋セクターのブルーリカバリーを促進するためには、多くの人が資金が最も重要な要素であると考え、次いで技術へのアクセス、パートナーシップが重要であると回答しました。

議論の中でモデレーターのゴダード氏は、持続可能な漁業の達成に向けた転換、海洋部門の脱炭素化、持続可能な観光など、ブルーリカバリーの重要な視点を指摘しました。また、海洋環境に関するデータ共有、海洋プラスチックの回収・除去などの分野での地域的・国際的な協力の重要性を強調しました。海洋と海洋資源の保全と持続可能な利用を促進し、ブルーリカバリーを推進ためのパートナーシップの強化を図ることが重要であるとの考えを示し、議論を締めくくりました。

 

なお、ウェビナーの詳細につきましてはこちらでご覧いただけます

(文責:海洋政策研究所 豊島淳子研究員、田中元研究員、渡邊敦主任研究員、黄俊揚研究員、小林正典主任研究員)

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