武装警察訓練基地などを視察
人材育成、教育めぐり議論
日中佐官級交流で防衛省・自衛隊代表団

2019.5.13
(画像)国際軍事合作弁公室の慈国巍主任を表敬訪問した代表団

国際軍事合作弁公室の慈国巍主任を表敬訪問した代表団

 笹川平和財団(東京都港区、田中伸男会長)の笹川日中友好基金が実施している日中佐官級交流で、防衛省・自衛隊の代表団(団長・栗田高明1等空佐)が4月16日から25日まで中国を訪問し、中国人民解放軍の基地などを視察し意見を交換しました。

 代表団は計13人で、統合・陸上・海上・航空幕僚監部、西部方面総監部、陸上総隊司令部、防衛省防衛政策局のメンバーで構成されています。16、17の両日、代表団は北京市内で国防大学防務学院と陸軍装甲学院を視察しました。国防大学防務学院は、同大学に付属する8学院のひとつ。主に国際軍事交流・教育を担う機関で、これまでに、中国と外交関係がある178カ国のうち、168カ国から1万人以上の軍幹部(2佐・中佐以上)などを研修生として受け入れています。その中には米国や、自衛隊からの派遣者も含まれているということです。中国の国家・国際軍事戦略に対する理解の醸成も図っており、「軍事外交戦略」の一翼を担う機関だといえます。
(画像)国防大学防務学院の座談会で説明する栗田高明団長

国防大学防務学院の座談会で説明する栗田高明団長

 防務学院長の徐輝少将らとの座談会で栗田団長は、昨年12月に閣議決定された新たな「防衛計画の大綱」で「多次元統合防衛力」が示されたことに関し、宇宙、サイバー、電磁波を「新たな領域」と位置づけ、陸、海、空の従来の領域と合わせ総合・横断的に対処することなど、防衛省・自衛隊の基本的な方針を説明しました。さらに、人工知能(AI)の民間と軍事における利用の在り方についても言及しました。防衛省・自衛隊は、日本を防衛するために我が国を取り巻く軍事情勢に合わせて対処していく方針です。これに対し、徐輝院長は宇宙、サイバー、電磁波領域の軍事利用における新たな国際的なルールを、国連の枠組みで規定する必要性を指摘しました。しかし、国連におけるサイバー空間のルール作りをめぐる論議は、米国と中国、ロシアを中心とする対立から停滞する状況が続いています。 
 人材育成についても議論され、徐輝院長は、強い戦闘力と意志をもつ軍―との中国共産党の指針が、人材育成の指針でもあり、これに基づきアカデミックな教育、部隊での訓練と実践を施しているとしました。専門性をもつ軍人、自衛官を育成することが課題であることも、双方から指摘されました。
(画像)陸軍装甲学院で装備を視察する代表団

陸軍装甲学院で装備を視察する代表団

 戦車部隊の士官などを養成している陸軍装甲学院では、ZTZ96式戦車や90式装甲輸送車といった装備と、訓練場を視察しました。学院の分校が安徽、吉林両省にあり、訓練施設は全部で64カ所、教育・訓練に使用されている装備は1千台余り。学院はこれまでに約5万人を輩出しており、主にアフリカ、東南アジア諸国からの留学生を受け入れてもいます。
 これに先立ち代表団は横井裕・駐中国日本大使、中央軍事委員会国際軍事合作弁公室の慈国巍主任(陸軍少将)をそれぞれ表敬訪問し、戦略的互恵関係の観点からも日中間の防衛交流は重要であり、民間主導の佐官級交流は政治、外交関係の浮き沈みに左右されることなく継続されることが望ましい、との認識を確認しました。
(画像)横井裕・駐中国日本大使(中央)を表敬訪問した代表団

横井裕・駐中国日本大使(中央)を表敬訪問した代表団

(画像)空軍航空兵第72旅団でJ-10を視察する代表団

空軍航空兵第72旅団でJ-10を視察する代表団

 代表団は18日に天津市に移動し、空軍航空兵第72旅団を視察しました。空軍航空兵第72旅団は主に首都北京の防空を担い、天津、河北地域などもカバーしています。3飛行隊で編成され、マッハ1.8で飛行するJ-10(殲10)戦闘機が配備されています。2004年1月に空軍に初めて配備され、2009年にはアクロバット飛行を披露する81飛行隊(オーガスト・ワン)にも配備されました。81飛行隊は第72旅団に所属しています。第72旅団のパイロットは40人で、平均年齢は30歳。J-10を見学した代表団の頭上では、アクロバット飛行訓練が行われていました。
(画像)武装警察訓練基地で実施された市街戦訓練

武装警察訓練基地で実施された市街戦訓練

 22日には河南省鄭州市にある武装警察訓練基地で、テロなどを想定した市街戦訓練や射撃訓練などを視察しました。武装警察の正式名称は「中国人民武装警察部隊」で、長らく国務院と中央軍事委員会から二重の指揮を受けていましたが、2018年1月に中央軍事委員会に一元化され、東シナ海などで監視活動を行う中国海警局も武装警察に編入されています。訓練基地では、指揮命令系統の一元化が高く評価されていました。
 
 中国海軍の創設記念日である23日は、湖北省武漢市の海軍工程(技術)大学を訪問し、溶接や旋盤などを学ぶ技術訓練センターや、潜水訓練、艦船が浸水したことを想定した応急修復訓練などを視察しました。
座談会で大学側は、情報化など軍事改革は軍事教育と人材育成に大きな影響を与えており、そうした中で革新(イノベーション)・融合的な教育を堅持していると説明。情報化の具体的な影響と対応として①軍の学校の簡素化を促し、集約的に効率よく教育し、人材を育成することが求められている②技術集約型の教育によって海軍の発展を促進する③士官の技術力とリーダーシップを育む。リーダーシップには,戦略的思考や国際的な広い視野などが含まれる―といった見解を示しました。
(画像)海軍工程大学で行われた座談会

海軍工程大学で行われた座談会

 また、代表団と学校側からは、“階級社会”である軍と自衛隊では、若い人材のアイデアなどが反映されにくい点や、革新と国際的な視野が重要だとの認識が共有されました。
 こうした交流の合間を縫い、代表団は故宮(北京市)、龍門石窟(洛陽市)、トヨタ広州汽車センター(広州市)なども見学し、中国の歴史や文化などにも触れました。

(シニアアドバイザー 青木伸行)
 
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