タイの統治機構における地方政治家一族
ネットワーク(バーンヤイ)の役割
2026年下院議員総選挙結果を踏まえた一考察
笹川平和財団 アジアユニット
戦略対話・人材育成グループ
グループ長 小西伸幸
2026.10.06
東南アジア諸国の中で、日本にとって経済面でも人的交流の面でも密接な関係にあるタイ。1932年の立憲革命以降、立憲君主制を採っています。しかしながら、タイの政治は、選挙結果だけでは捉えきれない、独自の統治構造を有しています。本稿は、2026年2月の下院議員総選挙を題材に、タイ独自の統治構造と、地方に根差した政治家一族ネットワーク『バーンヤイ』の役割を考察します。現地での候補者や当選者との面会、選挙運動の視察、日本とタイ両国の有識者へのヒアリング、そして既存の論考や著書、メディア記事などを踏まえ、国政と地方政治を結び付ける仕組みに迫ります。
具体的には、現代タイにおける国王の権威、軍の政治への関与、独立機関である憲法裁判所による政党の解党や首相失職判決、選挙制度の変遷を整理し、民選政治だけでは捉えきれない「タイ式民主主義」の特徴を論じます。そのうえで、総選挙での主要政党(タイ誇り党、タイ貢献党、人民党)の勝敗要因を、カンボジアとの国境紛争、生活支援策、保守勢力の再編、政党間の駆け引きなど、多角的な視点から分析します。とりわけ注目するのが、地方自治体や地元事業者、村落の集票人などを結び付けるバーンヤイです。バーンヤイとは何か。地域住民への日常的な支援や公共事業、予算配分を通じて築かれる支持基盤が、国政選挙でどのように票の動員につながるのか。政治家一族が所属政党を変える「鞍替え」の動向も追い、地域利益や政権へのアクセスを重視する政治戦略を検討します。
バンコクを中心とする政局や政党間対立にとどまらず、地方社会の利害関係と国家の統治機構を併せて捉えることにより、選挙結果の背後にある政治力学を読み解き、今後のタイ政治を理解する視点の一つを提示します。
具体的には、現代タイにおける国王の権威、軍の政治への関与、独立機関である憲法裁判所による政党の解党や首相失職判決、選挙制度の変遷を整理し、民選政治だけでは捉えきれない「タイ式民主主義」の特徴を論じます。そのうえで、総選挙での主要政党(タイ誇り党、タイ貢献党、人民党)の勝敗要因を、カンボジアとの国境紛争、生活支援策、保守勢力の再編、政党間の駆け引きなど、多角的な視点から分析します。とりわけ注目するのが、地方自治体や地元事業者、村落の集票人などを結び付けるバーンヤイです。バーンヤイとは何か。地域住民への日常的な支援や公共事業、予算配分を通じて築かれる支持基盤が、国政選挙でどのように票の動員につながるのか。政治家一族が所属政党を変える「鞍替え」の動向も追い、地域利益や政権へのアクセスを重視する政治戦略を検討します。
バンコクを中心とする政局や政党間対立にとどまらず、地方社会の利害関係と国家の統治機構を併せて捉えることにより、選挙結果の背後にある政治力学を読み解き、今後のタイ政治を理解する視点の一つを提示します。
目次
| はじめに | |
| 第1章 | タイの統治機構の近時の動向 1-1. タイの国家統治の仕組み 1-2. 2017年憲法下のタイの国会議員選挙制度 |
| 第2章 | 2026年下院議員総選挙結果概観 2-1. 2026年下院議員総選挙に至る経緯 2-2. 2026年下院議員選挙の結果概観 2-3. 選挙結果を導いた要因は何か~主要3政党それぞれの立場から 2-4. その他の要因 |
| 第3章 | タイの選挙結果を左右する地方政治家一族ネットワーク(バーンヤイ)の役割 3-1. 複雑なタイの地方行政と地方自治の仕組み 3-2. 地方で政治を仕切るバーンヤイ概観 3-3. 国政選挙における地方でのステークホルダー 3-4. 2026年下院総選挙におけるバーンヤイの動向 3-5. 2026年下院総選挙におけるバーンヤイの政党間の鞍替え状況 |
| おわりに | |
| 参考文献 | |
| 主要タイ人 人名リスト |
【お問い合わせ先】
笹川平和財団 アジアユニット 戦略対話・人材育成グループ
担当者:小西
E-mail:n-konishi@spf.or.jp
笹川平和財団 アジアユニット 戦略対話・人材育成グループ
担当者:小西
E-mail:n-konishi@spf.or.jp