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第1グループ(戦略対話・交流促進担当)

新型コロナウイルスの時代におけるフィリピンの民主主義と社会の変化

マリア・レッサ氏(ジャーナリスト、ラップラー社CEO)インタビュー

聞き手 英語ウエブ編集長 ジャッキー・エンズマン


2020.11.05
優れたジャーナリストであり、ソーシャルニュースサイト「ラップラー(Rappler)」社のCEOであるマリア・レッサ氏は、米CNNマニラ・ジャカルタ支局長やフィリピンの報道機関ABS-CBNの報道部長を歴任するなど、報道畑でおよそ35年の経歴をお持ちです。新型コロナウイルスによるマニラ市内のロックダウンのさなか、レッサ氏は笹川平和財団(SPF)とのウェブインタビューに応じてくださり、フィリピンの民主主義を取り巻く状況について考え、ラップラー社の役割について具体的に議論したうえで、さらに世界で起きている変化をものともせず事実の重要性と民主主義の価値を守るべく、ジャーナリストたちは幅広く行動すべきである、との意見をお寄せくださいました。以下は内容を短縮し、明解なものとすべく編集したものです。
 ――フィリピンに民主主義をもたらしたピープル・パワー革命から30年以上が経過しました。1986年から現在までを振り返った場合、特にドゥテルテ政権や新型コロナウイルスの世界的流行がもたらした課題を考慮したとき、フィリピンにおける民主主義を取り巻く状況をどのように評価なさいますか

レッサ氏 世界全体の民主主義を取り巻く状況と同様に、民主主義は死に絶えたとは言えないものの、死にかけていると思います。その原因の大半は、我々の情報におけるエコシステムの変化によるものだと思います。ジャーナリストや報道機関は、門番としての力を失ってしまいました。これまで我々は公的な場を守ってきましたが、2015~2016年頃に、テクノロジーやソーシャルメディアにその場を奪われました。Facebookは現在、最大のニュース配信者でありますが、その大半は責任を放棄してしまっています。
 我々は怒りと憎しみに満ちた嘘ほど事実が配信されない世界を生きています。ですから、世界中のどの民主主義においても見られるのは、事実を疑わしいものにすることで民主主義を、このような低俗な軍隊がじわじわと切り崩していく姿だけです。私はこれを「無数に傷を負った死」と呼んでいます。事実がなければ信頼は得られませんし、信頼がなければ民主主義は実現できません。

 ――新型コロナウイルスに特有の課題はありますか

レッサ氏 根底にある要因は、デジタル時代の独裁者の台頭を可能にしたことです。フィリピンのドゥテルテ大統領のことだけを言っているわけではありません。ハンガリーのオルバン首相や、ブラジルのボルソナロ大統領も同様です。我々は世界で今何が起きているかを見ることができます。私はテクノロジーこそ、その立役者であり、テクノロジーこそが火に油を注いでいるのだと思います。
 2014年に始まったこの変化は、ずっとシンプルだった時代に対するノスタルジーを我々に感じさせます。世界は複雑になりすぎていて、人々は誰かが決断を下してくれるのを待っています。その一つの例がインドのモディ首相の選挙です。インドネシアでは、私は大統領選を報道していました。勝利したジョコ・ウィドド大統領と、インドネシアで約32年間政権を握っていたスハルト大統領の義理の息子との選挙です。フィリピンではマルコス政権時代に対する回帰願望が見られました。人々は世界が複雑すぎて、ずっと単純な過去に対する回帰願望があると言うのですが、実際には過去はそれほど単純なものではありません。
 新型コロナウイルスの流行下で見られるのは、フィリピンのような国において、国家がパンデミックのさなかに、より強大な権力を持ちつつあるということであり、権力が権力を強化しているということです。おそらく、フィリピンは世界で最も長いロックダウンを行った国です。現在では制限の一部は解除されましたが、午後8時から午前5時まで毎晩、夜間外出禁止令が敷かれ、家を出る際は外出許可証を持っていなければなりません。
 現在、とてつもない額の予算や、とてつもない権力、パンデミックに対する警備隊と軍主導の対応が見られます。フィリピンではブラジル同様に、ドゥテルテ大統領がボルソナロ大統領と同じく、この公衆衛生上の危機に対応するため、退役した将軍をその指揮官に任命しています。フィリピンで依然として新型コロナウイルスの患者数が急激に増えているのは、偶然の一致であるとは思えません。
 これまで述べてきたように、この数カ月間にフィリピンで起こった大きな変化は3つあります。まず、ドゥテルテ大統領が3月12日に新型コロナウイルスによるロックダウンを宣言したことです。医師たちが最前線に立つ他の国々とは異なり、大統領は軍服姿の男たちに囲まれていました。ロックダウンは3月15日に発効しました。その後、5月5日に、従業員約11,000人を擁するフィリピン最大の放送局であるABS-CBNが閉鎖されました。小規模な規制機関がABS-CBNに対して業務中止命令を出し、それから数時間のうちに放送は途絶えました。これは1972年にフェルディナンド・マルコスが戒厳令を敷き、ABS-CBNを封鎖して以来、初めてのことです。当時ABS-CBNはピープル・パワー革命までの14年間閉鎖されたままでした。
 2番目の出来事は反テロ法の可決です。この法案はパンデミックによるロックダウンの間におよそ5日間で下院を通過し、ドゥテルテ大統領がこれに署名して法律となりました。この法律はつまり、政権に対して批判的である者をテロリストと宣言する権限を、少数の閣僚に与えるものです。その人物(ジャーナリストかもしれませんし、私かもしれません)は、令状なしで逮捕され、最長24日間収監される可能性があります。
 最後に付け加えたいのは、ロックダウン期間中の6月15日に私に下された判決です。マニラ地方裁判所のモンテサ判事は、私と元同僚をインターネット上の名誉棄損罪で有罪としました。本裁判の対象となった、我々が2012年に刊行した小説は、この法律が制定される前に刊行されたものですが、法律の曲解によって(私に対する逮捕令状は8通ありました)我々を有罪としたのです。我々が今どこにいるかおわかりかと思います。私と元同僚を有罪にするため、政府は名誉棄損に対する時効を1年から12年に変更し、我々は判決の一部の再検討を求めて申立書を提出しましたが、判事はそれを却下し、時効を15年に拡大しました。ですから、この動く標的は「カフカ的」といった方が正しいでしょうか(「滑稽」はうまい表現ではないですね)。
 来年、私はジャーナリストになって35年を迎えます。1986年からですから、ピープル・パワー革命からも35年が経ちますね。我々が置かれている立場はショッキングなものですが、この新型コロナウイルスとパンデミックに対する厳格な対応を引き続き注視していきながらも、同時にベラルーシやタイのような国々にも注視しています。あまりに権力を集中させすぎると、人々が立ち上がります。と同時に、中国の国家安全維持法における香港のような事例もあります。今日の民主主義は、創造的破壊のおかしな世界であると言えます。

――ラップラー社は、コミュニティの参加を促し、社会の変革に対して行動を促す、質の高い徹底的な報道記事を提供しようとするソーシャルニュースネットワークです。フィリピン国内でこういった幅広い社会運動を促すため、さまざまな層の人びとに伝えるラップラー社の戦略とはどのようなものですか

レッサ氏 2012年に我々がラップラー社を創立する準備をしていたとき、スローガンはたった1行でした。「我々は行動するコミュニティを作り、そこに差し出す食べ物は徹底したジャーナリズムである」というものです。古典的なベン図を使って、テクノロジーやコミュニティと重なる徹底したジャーナリズムを描きました。我々が最初に立ち上げたコミュニティは、気候変動にまつわるものでした。気候と良好な統治は密接に関係していると思ったのです。
 ラップラー社を創設したとき、マーケティング予算を計上するのではなく、現実の世界でまずコミュニティを構築する市民参加部門を立ち上げ、それからソーシャルメディアでバーチャル世界を立ち上げましたが、これらのコミュニティは今でも残っています。2013年に超大型台風30号が上陸したときには、NGO(非政府組織)を含む35~38ものパートナーがいました。政府は市民参加部門のパートナーのひとりでした。これは「行動を!」と呼ばれています。
 我々はテクノロジーが開発を後押しする力をもっているとわかっていたので、「ソーシャルグッド・サミット」のような年中行事を行って、社会のためにテクノロジーやソーシャルメディアを利用してきました。「ハックソサエティ」なるものも始めました。長年にわたるこれらの問題を解決するのに、テクノロジーをどのように使えばよいか。「持続可能な開発目標」にどのようにテクノロジーを利用することができるか。ラップラー社のはじまりは、魅力的かつ楽しくて、刺激的なものでした。より良い世界を想像することができたからです。
 ソーシャルメディアは人々がニュースを消費する方法を一変させました。2012年には、私は良い点ばかりしか見ていませんでした。というのも、これこそが若い世代を変革するものであると感じていましたし、実際にラップラー社の最大の読者層は18~34歳です。それこそが我々が力をもっている理由のひとつであり、我々は読者とともに成長しているのです。
 そのドミノが崩れ始めたのは2016年でした。ソーシャルメディア企業は利用者を守ることよりも企業の成長を優先するようになり、事実よりも成長を優先するようになったのです。すべてのソーシャルメディアが使っているある決定で、このことを裏付けることができるかと思います。つまり、コンテンツを推奨する方法です。彼らは友人のそのまた友人を使って、これらのプラットフォームを対立と分断の象徴にし、「我々対彼ら」という感情を起こさせたのです。これが「フィルターバブル」を引き起こしました。その論理的な結論として、2016年にはフィリピンのドゥテルテ大統領の選挙やその1カ月後のイギリスのEU脱退、トランプ大統領の一連の選挙、カタルーニャ州の選挙などが起きました。

 ――ラップラー社のような組織は、より大きな社会変革に向けたこの取り組みをまとめる一方で、どうすればこういった課題に立ち向かうよう戦略的に国民と連携し、国民を促すことができるのでしょうか

レッサ氏 事実だけにこだわることであり、またそれについては立場を譲らないことです。テクノロジーは世界中でデジタル時代の独裁者の台頭を可能にしました。彼らはひとたび民主的な方法で選出されると、民主主義を内側から壊すのに民主主義を道具として使いました。どうすればコミュニティを構築できるか。事実を大切にすることです。私は自分が何者か知っています。私は自分の行為をなぜ行うのか知っています。私はなぜ我々がラップラー社を立ち上げたのか知っています。ですから、政府が我々を攻撃しようとしてきたとき、我々がそれを押し戻すのはとても簡単なことでした。我々は立場を譲らないようにしなくてはならないのです。
 我々が世界の多くの国々で見ていることは、我々の権利を奪おうとするブルドーザーのようなものであり、我々は市民として立場を譲ることなく、他の市民と団結しなければならなくなっている、ということです。民主主義においては、ひとりひとりが真実のためなら何を犠牲にしてもかまわないか、自分の胸に聞いてみることです。なぜなら真実こそが今、危機にさらされているからです。

――笹川平和財団はアジアの財団として、同地域におけるネットワークの構築に力を注いでいます。これには、ラップラー社も参加している東南アジアにおけるジャーナリスト同士の協力を強化するための現在進行中のイニシアティブも含まれます。東南アジア諸国の市民社会だけでなく、日本のようなパートナー国とこのような連携ネットワークを構築する意義とはどのようなものでしょうか

レッサ氏 私はこれらのネットワークを構築することが非常に重要であると思います。我々はネットワークのネットワークと戦っており、それと戦うにはネットワークの物理的なネットワークを築くことがまず取るべき方法です。もうひとつの方法は、デジタルネットワークがどのようにふるまうのかについても理解することです。問題は最初の数年間にあり、権力をもった人々や政府、規制機関がテクノロジーに対処しなければならないことは決してないため、基本的にはそれを野放しにするということです。
 最前線で活動するジャーナリストや人権活動家は、シリコンバレーが下した決定の影響を痛感している人々です。皆さんが築き上げたネットワークが、我々が行っていることよりもずっと意義のある方法で反撃せざるを得なくなっているのです。
 我々はかつて、今日と全く同じような方法で情報のエコシステムに対処したことはなかったと思います。過去には、各国が縦割りの報道機関をもっていましたが、ソーシャルメディアは世界を水平に横断するものです。東京でついた嘘が瞬時にマニラに飛び、ニューヨークに飛びます。だからこそ、こういったシリコンバレーの決定が、東南アジアのような発展途上国の経済や新興民主主義国に最悪の影響を与えたのです。
 何が事実なのか、何が正しくて何が間違っているのか、真実は何なのかを人々が知らないのであれば(これらはすでにあやふやなものとなっています)、そして事実がそこになく、誰を信頼してよいかわからないのであれば、これらのことこそが事業の最初の目標です。しかしあなたが、あることを信じさせるということではありません。
 何を信じていいかわからなければ、彼らはあなたたちが信じていた組織をバラバラにして、あらゆる人を信頼しないようにさせることができます。そのような組織においては、最も大きな声を出したものが勝利します。それこそが我々が今住んでいる世界なのです。事実の重要性を取り戻すために動かなければ、我々は操られてしまいます。それは非常に狡猾な方法であり、我々は民主主義を失ってしまうのです。

南アジア地域 第1グループ(戦略対話・交流促進担当)
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