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海洋デジタル社会の構築

海洋と人間社会が持続的に共存していくためには、海洋状況把握が必要です。しかし世界の海の状況把握は、陸上に比べ圧倒的に遅れています。本事業で目指す海洋デジタル社会では、海から多様な情報が集まり、ビックデータの活用によりサイバー空間と海洋のフィジカル空間の高度な融合を図り、気候変動、海洋ごみ、資源の利用と管理、海運、安全保障などの諸問題の理解と対処方法が提示されます。海洋可視化と海洋宇宙連携を二本柱とし、海洋プラットフォームの横断的共有と先端的なセンシング技術および衛星通信を組み合わせ、海のSociety5.0実現のための具体的な科学技術政策を提言します。

海洋宇宙連携

衛星VDES委員会活動

海洋は地球の約7割という広大な範囲を占めるにもかかわらず、陸上のように観測や通信の拠点を整備することが難しい場所です。従って、広大な海洋を把握・利用するためには人工衛星を利用することが不可避です。2020年度は、船舶のこれからの通信インフラの一つとなりうる「衛星VDES」について委員会形式で検討を進めています。VDES (VHF Data Exchange System: 国際VHFにおけるデータ通信システム)とは、AIS(Automatic Identification System: 船舶自動識別装置)の発展仕様です。VDESには、船舶間・船陸間の通信を担う陸上VDESと、周囲に船舶・陸地がない状況で使用する衛星VDESがあります。海洋宇宙連携事業では、衛星VDES運用国際機関の立ち上げを通じ、本分野における日本のプレゼンスの確保を目指します。
2020年度は、本ミッション達成に向けて委員会およびワークグループを立ち上げ、技術調査・利用検討・国際連携に関して、議論を進めました。VDESの概要、ならびに本委員会での検討結果については、成果報告書「2020年度 衛星VDESに関する委員会報告書 総合版」にまとめて公開しました。

2021年度は衛星VDES委員会を組織し、実際に船舶を用いた業務を実施する様々な分野の専門家と議論を深め、衛星VDESの利用と普及に関する以下の4つの政策提言を取りまとめました。(1) 衛星VDESに関する我国ビジョンの検討、(2) 国際貢献の推進、(3) 関連技術の研究開発及び事業化の推進.(4) 海洋デジタル時代の人材育成。詳細は下記報告書20ページ∼21ページをご覧ください。その他、VDESの周知活動、実証実験の実施を含む国際的活動、社会実装(コンソーシアム立ち上げ)支援、ならびに衛星VDES端末の概念設計などOPRIが中心となって昨年度実施した項目について、活動報告書「衛星VDESの利用普及とその課題」にまとめ公開しました。

シンポジウム「海洋情報のデジタル伝送―VDESの利用とその将来―」

衛星VDESの普及と情報共有のため、2021年7月7日にシンポジウムを開催しました。シンポジウム詳細、ならびに講演資料についてはこちらからご覧ください。

海洋可視化

海洋では、温暖化の進行、激甚災害の増加、海洋汚染の拡大、水産資源の枯渇、生物多様性の減少など、多くの問題が生じています。人間は漁業や海運、エネルギー資源としてこれまで海洋を利用してきましたが、そこに居住しているわけではありません。自らの身近なできごとして捉えにくいことが、海洋問題の理解や今後の対応を考えるうえでの足かせになっています。 海洋における問題解決のためには、それに関連する対象の直接的な観測を行わなければなりません。また得られたデータは伝送路を確保して集積し、利用できるように可視化する必要があります。陸上ではすでに様々なセンサーが配置され、人々や交通機関の動き、物流、消費行動、ウィルスの拡散などが逐次把握され利用されています。集められた情報が高度に活用される社会、いわゆるSociety5.0が実現されつつあります。一方で、海洋の状況把握においては、プロジェクトや事業の目的に沿った縦割り型の観測が主体で、集められた情報が高度に活用されている事例は少ないのが現状です。
海上、海中及び海底から得られた情報を人工衛星やケーブルなどを介して集積し活用する海洋におけるSociety 5.0の実現が望まれます。海洋の様々な知識や情報を共有し、海洋利用の最適化と社会課題の解決に資する政策提言が必要です。海洋政策研究所ではその第一歩として、2020年度に海洋の可視化事業を立ち上げました。現状において海洋観測に用いられているプラットフォーム及びそれに搭載されている観測機材及びセンサーの現状を調査することにより、わが国がもっている海洋観測体制の実態を把握することを目的としました。引き続き、2021年度には海洋観測データの横断的な収集と利用方法を提案することを目的として、既存のポータルサイトや衛星データのアーカイバーの特徴やデータ利用形態、データを可視化するためのツールについて網羅的に整理しました。また、海洋を巡る各省庁の現状認識と過去の取り組みを網羅的に把握する目的で、2021年度よりテキストデータなどの公開情報をもとにしたテキストマイニングを進め、海洋政策文書の可視化を行いました。

日本の海を可視化するセンサーとプラットフォーム

1. 公開情報をもとにした我が国の海洋可視化能力の整理~海洋のプラットフォームとセンサー
2. 公開情報をもとにした我が国の海洋可視化能力の整理~人工衛星によるリモートセンシング
3. 本事業報告書による応用できるデータと実用例の提供
3-1 海洋観測対象ごとにプラットフォームとセンサーの抽出
3-2 海洋観測衛星センサーの性能一覧
4. これから着目されるであろう海洋可視化のプラットフォームと事例分析

世界の海を可視化するシステムとツール

1. 国内外海洋データ集約システムやツールの整理
2. 人工衛星を利用した海洋データの可視化ツールと事例整理

海洋政策文書の可視化

1. テキストマイニングによる海洋関連白書の分析


可視化概念図海中観測リモートセンシング音響センサーバイオロギング
海洋政策への取組

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