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モーリシャスにおける貨物船からの油流出事故の法的側面 - 船舶由来海洋汚染の防止と損害賠償・補償の観点から

藤井麻衣・樋口恵佳
笹川平和財団海洋政策研究所 (OPRI) では、OPRIの研究員を中心に海洋に係る国内外のさまざま動きを分析し発信する、海の論考「OPRI Perspectives」を発行しております。

第11号はOPRI研究員の藤井麻衣氏と東北公益文科大学公益学部講師の樋口恵佳氏の共著による論考「モーリシャスにおける貨物船からの油流出事故の法的側面 - 船舶由来海洋汚染の防止と損害賠償・補償の観点から」です。
【要旨】
本稿は、現状(2020年9月上旬)までの情報をもとに、モーリシャスにおけるWAKASHIOによる油流出事故に関する法的な論点を解説する。まず、海の法制度の全体像を俯瞰した上で、公法的規制、私法的規制に分けて、本件のような一般船舶による油流出事故に適用される国際法の枠組みを紹介する。前者では国連海洋法条約やMARPOL等、後者ではバンカー条約、海事債権責任制限条約(LLMC1976)、(本件には適用されないが)ナイロビ条約などを概説する(2節)。次に、一般船舶による油濁事故の過去の事例を、責任上限額を超過したものを中心に概観する。過去例に鑑みると、WAKASHIO事故も上限額を超過する可能性がある。(3節)。さらに、本事案における法的論点として、(1)責任上限額、(2)賠償されうる費用の内容、(3)商船三井の立場、(4)日本政府の立場についてそれぞれ論じる(4節)。最後に、これらの議論を総括する。今後、特に小島嶼開発途上国における海事債権責任制限条約1996年議定書(LLMC1996)の批准が促進されるべきである。長鋪汽船や商船三井とともに、海洋国家である日本政府からのモーリシャスに対する継続的かつ真摯な対応を今後も期待する(5節)。

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