♦祝500号。本誌の創刊予告号が2000年7月20日海の日に、次いで創刊号が同年8月20日に発行された。両号は上記サイトで読める。長きにわたる本誌の役割は、人類と海洋の共生をめざす海洋政策の形成に貢献し、海洋についての多様な立場と視点の議論を行う場を提供することである。今では、海洋政策に係る最新の話題を提供するメディアであり資料集でもある。そして海洋分野の拡大に伴い読者も著者も多様化している。節目の今号には、海洋政策の最前線を担う3氏から海洋の未来に向けたメッセージをいただいた。 ♦2021年2月、「国連海洋科学の10年」国内委員会のキックオフとなるシンポジウムが日本海洋政策学会と海洋政策研究所共催で開催され、この10年の陣頭指揮を執るユネスコ政府間海洋学委員会事務局長ウラジーミル・リャビニン氏から祝辞をいただいた。2016年の「世界海洋評価」が海洋の健全性の顕著な低下を示したことが、この10年の発端であるという。そして今、科学に基づく持続可能な海洋管理を目指し、人類と海との共生という理念の下、汚染の減少、生態系の保全、海洋経済の発展など7つの社会目標と10の挑戦課題が提示された。わが国には、これらの達成と解決に向け、高い科学力を活かした海洋政策と国際連携を進める10年であることが期待されている。 ♦山形俊男東京大学名誉教授は日本を代表する海洋物理学者であり、海洋科学に基づく海洋政策の重要性を深く洞察されてこられた。約半世紀前、国連は「国際海洋研究10ヶ年計画」を歓迎する決議をし、新しい海洋科学が胎動したが、日本国内では理解されなかったという。しかし政財界の後押しなどで1971年に海洋科学技術センター(現(国研)海洋研究開発機構)が設立され、大学の講座等も新設され、海洋科学者の育成は進展した。それから50年、「国連海洋科学の10年」にわが国は参画し、夢と希望を与えてくれる海の実現に向かっている。さらに、海を想う人々の声は重要であり、本誌がその一助となる期待も寄せられた。 ♦本誌を発行する(公財)笹川平和財団海洋政策研究所の所長に阪口秀氏が就任された。持続可能な開発目標SDGsへの取り組みが進む今日、海洋を持続可能に利用するためには海洋国家間の価値観の共有が必要だという。この理解の増進と普及を図るため、「持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル」は、2020 年12月に政策提言を発表した。この専門家メンバーである阪口氏は、わが国における提言の実現に向けて、国民の価値観の共有、国際連携の場でのリーダーシップ、そして価値観の多様さの理解が必要であると説く。海洋政策研究所が拓く海洋の未来に夢が膨らむ。(窪川かおる)
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