Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第493号(2021.02.20発行)

編集後記

同志社大学法学部教授◆坂元茂樹

◆本誌は、400号台に限っても、気仙沼市、沖縄県、熊本県、竹富町、横浜市、松島町など地方自治体の海洋に関する様々な取り組みを紹介してきた。そこに、新たに平塚市が加わった。
◆平塚市産業振興部産業振興課主査の堂谷拓氏から、海洋研究・開発への自治体の貢献の一例として、東京大学生産技術研究所、市内外の企業、平塚市漁業協同組合、平塚商工会議所等の参画を得て、平塚波力発電所の実証事業を実現した平塚海洋エネルギー研究会の取り組みについてご紹介いただいた。平塚海洋エネルギー研究会という新たなアクター間ネットワークを構築し、波力発電という研究開発段階の事業に参画し新たな産業の芽を育てようとする試みは注目に値する。産業振興計画に「知」の集積と活用を図る平塚市の今後の取り組みに期待したい。
◆水族館の飼育技師を経てイルカ・クジラウォッチング事業のために(有)銚子海洋研究所を設立した宮内幸雄取締役社長から、遭遇できる鯨類の種数の多さから世界有数のウォッチングスポットとなっている銚子の海についてご説明いただいた。寒流の親潮と暖流の黒潮がぶつかる銚子沖は豊かな漁場を形成しており、豊富な餌となる魚を求めて22種類のイルカやクジラが集まってくるとのこと。2020年7月、銚子沖海域は「再エネ海域利用法」に基づく洋上発電事業推進の「促進区域」に指定されたが、同海域は「生物多様性の観点から重要度の高い海域」にも指定されており、両者の共生が求められる海域である。SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」を目指して「海洋ゴミ回収プロジェクト」を実施している同研究所に注目したい。
◆神戸メリケンパークに1987年4月に「神戸開港120年」を記念して開館した神戸海洋博物館は、神戸港のシンボルである。1995年の阪神・淡路大震災による約2か月半の休館を乗り越え、2019年のリュニーアル工事開始まで神戸の海・船・港の過去・現在・未来を展示した総合博物館として市民に親しまれてきた。加島洋子神戸市港湾局担当局長から2020年2月にリニューアルオープンした神戸海洋博物館についてご寄稿いただいた。①開港150年シアター、②行き交う船たち、③あゆみとはたらき、④国際交流、という4つのエリアから成る展示や体験型コンテンツを組み込む海事人材の育成をめざす施設をぜひ訪れていただきたい。新型コロナ対策のため設置された人共存型双腕スカラロボット「duAro2」の出迎えも同時に楽しんでもらいたい。(坂元茂樹)

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