Ocean Newsletter

【Ocean Newsletter】最新号

第491号(2021.1.20 発行)

(一社)日本水中ドローン協会の取り組みについて

[KEYWORDS]水中ドローン安全潜航操縦士/海の産業革命/ROV
(一社)日本水中ドローン協会代表理事◆小林康宏

近年、水中ドローンは海の産業革命の一役を担うべく注目を浴びている。
(一社)日本水中ドローン協会は、2019年に水中ドローンの安全な運用技能と知識の修得を目指す「水中ドローン安全潜航操縦士認定講習」をスタートさせ、200名以上がライセンスを取得している。
次世代の海洋産業のIoT革命の主役を担う人材を育成し、水中ドローンの啓発活動、産業創出に挑戦している。

水中ドローンとは何か

日本は、領海および排他的経済水域の面積で世界6位、体積では4位に位置する水産資源豊富な海洋国家です。しかし、国内の水産漁業に目を向けると、高齢化・少子化による後継者不足・労働力の減少や原油高騰、インフラの老朽化を起因とするコスト面の問題に直面しています。それらが抱える課題解決のカギとなるのは、IoT(Internet of Things)の活用による省力化と、コスト削減による生産性の向上です。そのIoTツールの一つとして昨今、「水中ドローン」が注目されてきました。水中ドローンとは水中を潜水潜航可能な小型無人機の通称ですが、水深0~100mまたは300mまで移動できる機体を呼ぶことが多くなっています。この水中ドローンは海底海中調査・インフラ点検・漁具点検・護岸調査など、海洋事業には潜在的にも高いニーズが考えられ、これまで潜水士など人力によってなされていた水中作業が、水中ドローンの利活用により大きく変化することで、安全性や省力化の面でも、今後、水中ドローンが導入されることが容易に予想されます。

水中ドローンの活用事例

三重県尾鷲市早田(はいだ)町の(株)早田大敷は2019年春から定置網の点検に導入しています。担当者は「これまで網が破れたり、壊れたりすると潜水士を呼んでいたが、時間と費用がかかった。水中ドローンにより、すぐに確認できるようになった」と手応えを感じていると言います。2020年9月、水難救助への水中ドローン導入に向け、福島県の会津若松消防本部が、会津若松市の猪苗代湖で水中ドローンのカメラの視認性を検証しました。同本部の警防課長は「猪苗代湖は濁ったりして視界は思った以上に悪かった。水難事故も複雑化しているので購入を検討する必要がある」とし、水難救助の際には、潜水士が潜れない水深での活動や、潜水士に先行して捜索をするなどの活用が考えられると話していました。
他にも同月、九州大学を中心とするチームが島根県松江市美保関沖において水中ドローンによる海底の構造物を調査し、水深約90m付近で撮影された構造物は、93年前に沈没した旧日本海軍の駆逐艦「蕨(わらび)」であったことが判明し話題となりました。ダイバーの潜水限界は40mのため、水中ドローンの特性が活かされたものと言えます。
一方、山形県鶴岡市のダムでは2019年9月、水深20mにある取水口の隙間をふさぐ作業中に、導水管に右腕を引き込まれ、水中に取り残され死亡する痛ましい事故が発生しました。水中ドローンが活用されていれば、このような事態は防げたのではないかと思うと残念でなりません。仮に水中ドローンによる作業がなされていれば、潜水前の危険個所の確認や、水中作業監督役として、水中ドローンのバディ的活用は非常に大きな役割を果たす可能性がありました。

会津若松消防本部による水難救助への水中ドローン導入に向けた試験風景

規制のない水中ドローン業界に協会が誕生

空中ドローンは近年、航空法を中心にかなり整いつつありますが、水中ドローンの世界にはいまだ、規制する法律や、「水中ドローン」という語自体が法令上存在していません。しかしながら、海には港則法・海上交通安全法など、港の作業や船舶の航行に関する法律があり、今後は水中ドローンの運用に規制が及ぶ可能性もあります。また、空中ドローンのように、水中ドローンも自治体独自のルールや環境団体、漁業管理団体が管理している水域があり、その規制を把握して運用していく必要がありますが、現在はその規制に関する統合的明文は存在していません。
ここ数年は、海外の水中ドローンメーカーが日本へ参入してきており、年々身近なものになりつつあり、普及が進む一方で、使用者のモラル・意識の啓発が必要な状況になってきたのではないかと私たちは考えております。
こうした背景もあり、水中ドローンおよび水中ロボットの運用における環境整備・発展・成長の促進を目的として、2019年4月、私たちは「一般社団法人日本水中ドローン協会」を設立し、目的の実現に向け、4つの「C」からなる事業展開を行っています。また、協会が所管する資格制度として水中ドローンに関する知識と技能を可視化したことにより、水中事業における人員配置で一定の基準を担保できる人材かどうかの線引き基準を設定し、雇用主、依頼主が安心できる技能の理解や、有資格者が水中土木工事の現場で安全監督を補助する立場を担うことも可能にしました。

水中ドローン安全潜航操縦士とは

2019年4月、当協会は、国内初となる水中ドローンスクール「水中ドローン安全潜航操縦士認定講習」を開催し、水中ドローンの安全な運用技能と知識の習得を目的とした協会独自の研修・受講プログラムをスタートしました。現在、認定スクールは北海道から九州まで全国で約20校があり、200名以上がライセンスを取得しています。受講生の属性は個人が2~3割、残りが企業となっています。企業からはこれまでに水産養殖関連業者、マリコン(海洋関係の土木工事・港湾施設・建築の建設業者)関係者、船舶関連事業者、海上保安庁、消防、通信会社、研究機関・学校、映像会社、機器販売など、幅広い職種の方々に講習に参加いただいております。
当協会は今後、現在、全国で開催している水中ドローン安全潜航操縦士認定講習を基盤とし、水中業種に直結する専門性の高い運用用途に合わせたカリキュラムの作成を行っていきたいと考えており、さらには、国内水中事業者への水中ドローン導入に向けた、産学官連携を推し進めていくことを考えております。
現在、水中ドローンの将来性を評価し、水中ドローン安全潜航操縦士認定講習を展開するスクール運営に着手する事業者は全国的に着実に増え続けています。当協会は、新たな水中・海中ビジネスの開拓者として、水中ドローン・水中ロボット業界を牽引する人材の登場を期待しており、併せて、「普及拡大と環境整備」のバランスを保つことを念頭に、私たちの役割を担ってまいりたいと考えております。(了)

水中ドローン安全潜航操縦士講習の実技の様子
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