Ocean Newsletter

オーシャンニュースレター

第458号(2019.09.05発行)

編集後記

帝京大学戦略的イノベーション研究センター客員教授♦窪川かおる

♦今年、2019年、の夏も暑い。最高気温についての気象庁の歴代全国ランキングを見ると、最高気温は41.1℃もあり、埼玉県熊谷で2018年7月23日に記録されている。2位は41.0℃で3地点あり、岐阜県美濃と金山で2018年8月に、高知県江川崎で2014年8月に記録されているが、ここまでくると、僅か0.1℃の違いでも1℃の違いでも猛烈な暑さの一言に収まるだろう。今やクーラーは必需品だが、木陰を吹き抜けてくる海風のような自然からの涼しさも大切に考えたい。
♦環境改善効果のある投資が新しい資金調達源となる。このような投資に限って発行できる社債はグリーンボンドと呼ばれるが、海運会社では世界で初めて日本郵船(株)がそれを発行した。同社財務グループ統轄チーム課長代理の白根佑一氏より発行までのご苦労とその後の効果を詳細にご説明いただいた。最難関は、投資資産に環境改善効果があると評価する第三者評価機関がなかったことだという。この難関を多くの組織と人々の協力で超えられ、数々の賞をはじめとする大きな成果に結実された。環境と経済の相乗効果の好例を是非ご一読ください。
♦水産基本計画中の養殖業に関する部分には、真珠養殖及び関連産業の振興という項目がある。真円真珠を作るアコヤガイの養殖は、日本が研究開発を重ねてきた技術であり、水産物の輸出でも大きく貢献している。しかし養殖はアコヤガイを海中に吊るすため、自然の脅威に晒される。赤潮は中でも恐ろしい災害で、その予兆を早く発見して対応処置を講ずるための努力がなされている。ミキモト真珠研究所副所長の岩橋徳典氏より貝リンガルの開発について教えていただいた。仕組みはお読みいただくとして、海洋環境の観測と海洋生物の観察が開発の決め手であった。自然を相手に五感を研ぎ澄ませる大切さを忘れたくない。
♦日本人の渡米は、たとえば2019年5月だけで26万人である。遡ること178年前に漁船の難破でジョン万次郎は渡米する運命となった。10年後に帰国し、日本の航海技術や造船技術、ひいては海洋技術の発展に尽くしたことを高知工科大学名誉教授の草柳俊二氏よりご寄稿いただいた。幕末の国内外ともに政情不安定な時期に、西洋船舶の購入の知恵袋となり、海洋技術の教育システム作りに貢献するなど、英語と海外文化と海事を理解する日本人がいたことはわが国にとって幸運であったと言えよう。高知県土佐清水市にあるジョン万次郎資料館を訪れてみたくなった。(窪川かおる)

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