Ocean Newsletter
第440号(2018.12.05発行)
編集後記
東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センター特任教授◆窪川かおる
◆小笠原諸島返還50周年にあたる今年、小笠原村では年間を通して数々の記念事業が実施されてきた。繁忙期以外は週1便の海路のみだが、今年は訪れた人が増えたことだろう。小笠原諸島は火山活動により出来た海洋島であり、島々は独自の生物多様性と生態系を有し、2011(平成23)年には世界自然遺産に登録されている。西之島は2013(平成25)年から始まる噴火で拡大し、海洋島形成と生態系創生の実験場といえる。行政的には、これらの島々は東京都に属する。東京には、小笠原諸島、伊豆諸島、南鳥島などがもつ海と島の魅力もたくさんある。
◆島々の海は海洋生物の宝庫だが、海洋プラスチックは海洋生物に大きな影響を及ぼしている。稚魚の消化管にマイクロプラスチックが溜まっていると紹介されてから僅か2年で、目に見えない脅威の証拠は増している。日本が議長国となる2019年G20大阪サミットでは、海洋プラスチックごみ問題が主要議題になる。欧州委員会がこの問題に対する規制案を2018年5月に提案した。これについて、(公社)日本海難防止協会欧州代表の長谷部正道氏より詳細に教えていただいた。スーパーのレジ袋の消費量削減やペットボトルの回収増などの提案に、日常生活の意識改革も必要となるだろう。なお、10月24日に欧州議会は、この規制案を一部変更し可決している。
◆2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020オリパラ)に関連する事業を2件ご寄稿いただいた。
◆東京湾における海上交通活性化のプロジェクトで、ウォータータクシーにより東京港と内陸部の運河を結ぶ公共交通サービスの事業展開が進められている。運河を通るため船体は小さいが、快適な船内設備を設け、2018年9月より3艇が運航している。予約は1週間前までで、乗り場の桟橋は29カ所ある。東京2020オリパラの施設や豊洲新市場などの海沿いの施設を回る黄色い小型船の活躍が期待される。また災害時の救急船の機能も併せ持つ。東京ウォータータクシー(株)代表取締役の田端肇氏の解説に誘われ、すぐにホームページの動画を拝見した。
◆水産エコラベルは世界で140以上あるという。その中で日本の制度は大きく出遅れていた。しかし、東京2020オリパラでの水産物利用が喫緊の課題となり、世界的に信頼されている機関の承認を得るべく、国際標準化を目指して(一社)マリン・エコラベル・ジャパン協議会が頑張っている。同会会長の垣添直也氏より水産エコラベル制度の意義と国際標準化達成へのロードマップについてご寄稿いただいた。SDGsの目標にも合致する水産エコラベル制度の普及は、単に東京2020オリパラのためというより私たちの未来と繋がる大切なポイントである。 (窪川かおる)
第440号(2018.12.05発行)のその他の記事
- 世界的な海洋プラスチックごみ 総量削減対策の動向 (公社)日本海難防止協会欧州代表、神戸大学海洋科学部客員教授◆長谷部正道
- 東京湾における水上交通活用について 東京ウォータータクシー(株)代表取締役◆田端 肇
- MELの取り組み─東京五輪を見据えて (一社)マリン・エコラベル・ジャパン協議会会長◆垣添直也
- 編集後記 東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センター特任教授◆窪川かおる