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オーシャンニュースレター

第439号(2018.11.20発行)

国境離島の保全・管理に関する政府の取り組み

[KEYWORDS]有人国境離島法/日本の国境に行こう!!/領海・排他的経済水域
内閣府総合海洋政策推進事務局有人国境離島政策推進室参事官補佐◆大山裕司

2017年4月1日に施行された「有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別措置法」は、日本国民の居住により、領海等で行われる漁業、海洋調査、領海警備等の活動の拠点機能をもつ有人国境離島地域の機能を維持するための特別の措置を講じ、領海等の保全等に寄与することを目的としている。
本法に基づく政府の取り組みについて紹介する。

有人国境離島法に基づく政府の取り組み

2017(平成29)年4月1日に「有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別措置法」(平成28年法律第33号。以下「有人国境離島法」という)が施行された。有人国境離島地域※1は、日本国民の居住により、領海等で行われる漁業、海洋調査、領海警備等の活動の拠点としての機能を有しており、有人国境離島法は、このような機能を維持するための特別の措置を講じ、領海等の保全等に寄与することを目的としている。
ここでは、有人国境離島法に関連する取り組み、ならびに有人国境離島地域が拠点となって展開される活動の場となる領海および排他的経済水域に関する情報発信について紹介する。

(1)有人国境離島地域の保全

有人国境離島地域が有している機能を継続的に維持することを基本目標とし、国は、地方公共団体とも連携し、保全に関する施策に必要な措置を講ずるよう努めることとしている。保全に関する施策の基本的な事項としては、国の行政機関の施設の設置、国による土地の買取り等、港湾等の整備、外国船舶による不法入国等の違法行為の防止および広域の見地からの連携がある。

(2)特定有人国境離島地域※2に係る地域社会の維持

本土から遠隔の地に位置し、かつ、人口が著しく減少している特定有人国境離島地域の地域社会の維持を図るため、特定有人国境離島地域社会維持推進交付金を創設し、関係地方公共団体等が実施する以下の事業に必要な経費の一部を補助するなど、総合的に支援している。
①航路運賃低廉化事業および航空路運賃低廉化事業:本土と特定有人国境離島地域を結ぶ離島住民向けの航路運賃をJR運賃並みまで、航空路運賃を新幹線運賃並みまで、それぞれ低廉化するための経費の一部を支援している。例えば、平成30年度においては、鹿児島~種子島(西之表港)間のジェットフォイル運賃が7,200円から4,500円、丘珠〜利尻間の航空路運賃が24,200円から11,500円に低廉化されている。
②輸送コスト支援事業:特定有人国境離島地域における事業の継続、事業拡大等を図るため、農水産品(生鮮)等に係る輸送コストの低廉化を支援している。具体的には、鮮魚や野菜等の移出とその原材料等の移入について、国、地方合わせて海上輸送コストの8割を支援している。
③雇用機会拡充事業:民間事業者による雇用増を伴う創業・事業拡大を行う場合の設備投資の資金や人件費、広告宣伝費等の資金を支援している。
④滞在型観光促進事業:「もう一泊」したいと旅行者に思わせるような着地型観光サービスを組み入れた魅力的な滞在プラン、企画乗船券・航空券、旅行商品の企画・開発・宣伝、実証や販売促進を支援している。平成30年度からは地域が連携して提供する宿泊施設や体験メニューを使う観光客を対象に、乗船券や航空券を島民並み割引運賃で購入できる仕組み(新たな企画乗船券)を導入し、さらなる誘客を促進している。
⑤「日本の国境に行こう!!」プロジェクトの推進:特定有人国境離島地域活性化策の一環として、2017(平成29)年7月から「日本の国境に行こう!!」プロジェクトが始動した。これは、国民の国境への関心を高め、実際の訪問などの行動につなげることで、人が現に住む国境の島々を活性化させ、以て国境の島々を価値化するプロジェクトである。プロジェクトの始動日には、関係者が一堂に会する「国境の島サミット」が開催され、プロジェクト推進の理念・行動規範を掲げた「国境の島憲章」が合意された。
また、知られざる国境離島の産品や魅力を広めるために、内閣府のシンボルプロジェクトとして、関係自治体、地元関係者等と連携して、活魚用トラックによる共同輸送体制(活魚ネットワーク)の構築、都内の飲食店で知られざる島の宝をメニュー化して提供する「国境離島グルメフェア」の開催、離島観光のムーブメントを醸成することを目的にインフルエンサー等がモニターとして参加した「アイランドホッピングツアー」の実施等に取り組んだ。
さらに、特定有人国境離島地域を構成する島の魅力や、最新情報等を提供するため、「日本の国境に行こう!!」ウェブサイト(https://kokkyo.info/)を開設し、随時、情報提供を行っているので、是非、ご覧いただきたい。

■雇用機会拡充事業の取り組み例
◎取り組み例1(左):甘酒づくりと新設の農業部門での雇用拡大(新潟県佐渡市)
甘酒づくりのための生産設備を導入。併せて、新たに農業部門を設立し、農業従事者による酒米契約栽培農家への直接支援や、農業従事者によるこだわりの酒米栽培に取り組んでいる。
◎取り組み例2(右):加工用大根の生産および販路拡大(長崎県五島市)
全国的に需要が高まっている加工用大根の生産および島外への販売を拡大。地域商社機能を有する五島市物産振興協会と連携した新たな商品開発により、地域特産品としてブランド化を図っている。

■滞在型観光促進事業の取り組み例
◎取り組み例1(左):滞在型観光プランの企画・開発(島根県隠岐の島町)
住民主体の街づくりグループが、それぞれの特技と人のつながりを活かした民謡・踊り・ランチを提供。地域住民を巻き込んだおもてなしにより、島民と観光客との交流と地域の担い手育成を併せて行っている。
◎取り組み例2(右):滞在型観光プランの企画・開発・実証(山口県萩市見島)
約350種類の渡り鳥が飛来する日本屈指のバードウォッチングスポットであることを活かし、バードウォッチングを軸にした体験プランづくりを展開している。

(3)領海および排他的経済水域に関する情報発信

世界の領海および排他的経済水域の面積のランキングやわが国の島の面積ランキングなど、海洋や離島に関する基礎情報について、国境離島WEBページ(http://www8.cao.go.jp/ocean/kokkyouritou/kokkyouritou.html)で情報を発信している。このウェブサイトをご覧頂き、国境離島に対する理解を深めていただきたい。(了)

  1. ※1自然的経済的社会的観点から一体をなす2以上の離島で構成され、領海基線を有する離島があり、日本国民が居住する地域(13都道県29地域148島)。
  2. ※2有人国境離島地域のうち、継続的な居住が可能となる環境整備が地域社会を維持する上で特に必要と認められる地域として、法律で定められたもの(8都道県15地域71島)。

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