Ocean Newsletter

オーシャンニュースレター

第436号(2018.10.05発行)

編集後記

東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センター特任教授◆窪川かおる

◆北海道胆振東部地震により被災された皆様にお見舞い申し上げます。この夏は、酷暑が襲い、強い台風がいくつも列島を駆け抜け、豪雨も降り放題であった。こんな夏はもうご免こうむりたい。秋の夜長の虫の声が聴く人の心に響く。
◆日本を象徴する富士山の世界文化遺産登録に安堵したのは5年前になる。三保松原はその構成資産である。舞い降りた天女の羽衣で有名な松並木が続き、富士山を背景に抱く美しい海岸である。海岸とマツを保全する対策は登録前から実施されていたが、登録後は、文化遺産の景観に相応しい海岸浸食対策が新たに進められ、松枯れ対策も続けられている。保全には住民も参加していて、古くなって落ちたマツ葉を集めて作った燃料は環境に優しい。三保松原の持続的利活用の現場を東海大学名誉教授の田中博道氏より教えていただいた。
◆海の恵みを幾つ言えるだろうか。恵みの源である海洋生態系は、まだ陸上生態系よりはるかに不明なところが多い。創価大学大学院工学研究科の古谷 研教授は、大型研究費を受け、恵みの持続的な利用に向けた海洋ガバナンスのための学術基盤の構築を試みている。ポイントは、ひとくくりにされがちな海洋を科学的に区分し、その区系と多様な恵みとを対応させたことである。区系ごとに海洋生態系がどのように恵みを産生するのか、その恵みをどのように持続可能にするかを解明するという。対象は太平洋である。サイエンスが土台となる文理連携の海洋ガバナンス学に大きな期待が持たれる。
◆スマートフィンは海洋モニタリング用センサーを搭載したサーフボードである。サーフボードの下にあるフィンをセンサー付きフィンに交換し、サーフィンしながら海洋環境データをフィン内臓のSDカードに記録するという。センサーの小型軽量化にまず感心した。この方法で、陸にごく近い沿岸域の毎日の変化、砕ける波のデータなど貴重なデータが得られる。さらにサーファーは海洋の科学知識を驚くほど持っている。研究者とサーファーの協働は研究に相乗効果をもたらすだろう。寄稿していただいたスクリップス海洋研究所研究技術員のフィル・ブレスナハン氏は、スマートフィンの開発者であり、これを使った海洋環境の変動データ収集の仲間を世界中に求めている。 (窪川かおる)

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