Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第431号(2018.07.20発行)

編集後記

同志社大学法学部教授◆坂元茂樹

◆本号は「海の日」特集号であるが、それにふさわしい読み応えのある内容になっている。国民の祝日「海の日」は、当初7月20日であった。ハッピーマンデー制度により7月の第3月曜日に移行したが、7月20日は日本について国連海洋法条約が発効した日でもある(1996年)。かつては「海の記念日」であったが、「海の恩恵に感謝し、海洋国日本の繁栄を願う日」として国民の祝日となった。2007年7月20日に海洋基本法が制定され、内閣総理大臣を本部長とする総合海洋政策本部が設置され、これまで2期にわたる海洋基本計画が実施されてきた。2018年に策定された第3期海洋基本計画のかじ取りを行った羽尾一郎内閣府総合海洋政策推進事務局長に、同基本計画についてご寄稿いただいた。「新たな海洋立国への挑戦」を旗印に、「総合的な海洋安全保障」の取り組みの下、重点的に進められる「海洋状況把握(MDA)の能力強化」や国境離島の保全・管理、海洋の産業利用の促進、北極政策など今後5年間の日本の海洋政策の青写真を熟読していただければ幸いである。
◆国際海事機関(IMO)海洋環境保護委員会(MEPC)議長としてご活躍の斎藤英明国土交通省海事局船舶産業課長より、IMO/MEPCによる国際海運の温出効果ガス(GHG)削減の取り組みについてご寄稿いただいた。国際海運から排出されるGHGのほとんどはCO2で、世界全体の総排出量の2.2%であり、ドイツ1国分に相当するという。本年4月に、日本の主導によって「GHG削減戦略」が採択され、2008年をベースに2030年までに40%改善し、2050年までに半減し、今世紀中に排出ゼロを目指すとする。待ったなしの課題へのIMO/MEPCの取り組みに期待したい。
◆2017年に設立されたグローバル・フィッシング・ウォッチ(GFW)のKimbra Cutlip氏から持続可能な漁業を目指す同団体の活動についてご紹介をいただいた。海洋生物資源の持続可能な利用に対する脅威であるIUU(違法、無報告、無規制)漁業防止のために、民間団体であるGFWは、船舶の自動識別装置(AIS)が発する信号から漁船を特定し、その位置と航跡をウェブ上に表示し漁業活動を可視化しようとの活動を行っている。すでにインドネシアやペルーは、自国の漁船監視システム(VMS)データを提供しているとのことだが、このシステムが有効に機能するためにはAIS搭載義務が小型漁船に拡大され、各国が自発的にVMSデータを提供する必要がある。多くの国が、広大な排他的経済水域に対して強力な監視体制を持たない中で、IUU漁業撲滅の一助として注目したい。  (坂元茂樹)

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