Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第430号(2018.07.05発行)

編集後記

東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センター特任教授◆窪川かおる

◆7月になり、海開きをする海水浴場の数もピークを迎える。夏は、1年でもっとも海に親しみ、海を知る季節である。楽しく遊べる海辺の水質と安全対策の保証に始まり、環境保全やエコツーリズムにまで広がる人々の活動は、海をさらに身近な場所にする。冷房の効いた水族館も海の生き物に接する絶好の機会である。一方、魚食離れや漁獲量の低下、マイクロプラスチックの脅威、あるいは海事産業の国際競争力強化の必要性など、海についての課題が積み重なる。海を身近に感じ楽しむ夏を、海の役割とその大切さを知る機会にもしなければならないと思う。
◆関西物流網にある産学官連携の関西国際物流戦略チームは、国際物流の活性化をすることで活力ある日本の礎となるべく2005年から活発に活動をしている。事務局の尾上博文氏よりIoT活用によるLogi-Linkの開設について教えていただいた。荷主と物流事業者を結ぶこのWebサイトは、利用者の声を基に実現したため利便性がとても高く、デザインも見易い。まだ開設して1年しか経っていないが、物流事業者登録数は183事業所になり、アクセス数は約3,000件に上るという。是非Webサイトを訪れてみて欲しいと思う。関係者の登録が増えることが活性化の相乗効果をもたらすと期待されている。
◆毎日の食卓に魚が載る時代は過去である。2004年までの32年間、日本は世界一の魚介類消費国であったが、2013年は7位に下がった。魚食普及対策は多方面でなされているが、海から食卓に至るさまざまな過程で課題が山積みしている。発想を変え、健康食になり得る魚食は日本の文化であり、国外での魚食普及の先を見た改革が必要であると大東文化大学教授の山下東子氏より教えていただいた。魚食離れの詳細な原因分析から提案された水産資源の持続的・戦略的利用への改革必要論は、説得力がある。是非ご一読ください。
◆水族館の数は100を超える。北海道11、東京都8、神奈川県7から1館しかない県まで差はあるが、水生生物を扱う施設はほぼ全国にある。一方、昭和の水族館ブームを経て、水族館の栄枯盛衰は激しい。しかし、全体では入館者総数は増加傾向にある。大規模水族館やテーマパーク併設によるだけでなく、水族館の創意工夫に接する魅力は水族館リピーターの楽しみになっている。竹島水族館・館長の小林龍二氏より入館者が激増した快挙の秘密を教えていただいた。解説パネルを改革し、海と生物を知り親しむ入口にしたという館長の種明かしのひとつに、なるほどと思う。是非ご一読ください。 (窪川かおる)

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