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バングラデシュ・チャトグラムにおける気候変動・海洋リスク脆弱性の研究

2023.07.27
笹川平和財団海洋政策研究所は、2020 年からバングラデシュ・インディベンデント大学(IUB)との共同研究として、米・スティムソンセンターと連携し、 海洋・気候変動リスク脆弱性指標(CORVI)を用いた調査研究をバングラデシュ・チャトグラム市を対象に行った。IUB、海洋政策研究所、スティムソンセンターが CORVI 調査 の結果をとりまとめた「CORVI: Measuring Multidimensional Climate Risks in Chattogram, Bangladesh」報告書では、海洋・気候変動リスク脆弱性指標(CORVI)に基づくリスクの評価、分析、それらの結果に依拠し主要な政策提言を示している。
 
まず背景として、チャトグラムは、熱帯低気圧と豪雨の影響を強く受け、これらのハザードは、複数のカテゴリーにまたがるリスクをもたらす。同市は、急速な都市化により、インフォーマルな居住地と未処理の廃棄物量が増加傾向にあり、それらの廃棄物が排水路の閉塞を招いている。また、住宅から排出される未処理の廃水や、船舶解撤や衣料品製造などの市内の主要産業から排出される廃水が、カルナフリ川やハルダ川、ベンガル湾など市内の主要な水路に流入している。この廃水は、人間の健康や主要な沿岸・海洋生態系に汚染を及ぼし、都市の成長に対応するための開発によって生態系は脅かされている。このような海洋環境の劣化は沿岸域保護における大きなリスクであり、健全なブルーエコノミー構築のために対策が求められる。
 
同報告書の政策提言として、第一に洪水適応と廃棄物管理を改善・拡大すること、が挙げられる。具体的には、チャトグラム・シティ・コーポレーション(CCC)と水・衛生局は、 固形廃棄物を減らすために、公共収集、民間業者への成果主義契約、非公式のゴミ拾い業者への支援など、多層的な計画を採用する必要がある。また、廃棄物発電プロジェクトなどの対策を検討することが可能である。排水路の整備、緑地の拡大、水域の回復なども併せて行う必要がある。最後的に、CCC と国家政府は、個人、世帯、企業レベルで回復力の構築と災害復旧を促進するために、金融アクセスを拡大すべきである。
 
第二に、都市の気候レジリエンスの実施を改善し、気候スマートなインフラに投資することである。 国、地方政府、市民社会、国際的なパートナーは、縦割りのガバナンスを改善し、プロジェクト実施の円滑化のために協力する必要がある。財政移転が特定のパフォーマンスベンチマークを満たすことを条件とする都市パフォーマンス助成金のような国際的なベストプラクティスを参考にするなど、幅広い利害関係者の協議や賛同を促す必要がある。次期の都市マスタープランは、このような取り組みの基盤となり得るものである。
 
第三に、持続可能な海岸線開発戦略を実施することである。「デルタプラン 2100」が構想する経済発展と持続可能な環境管理の統合には、成長を促進しながらチャトグラムの沿岸および海洋生態系を保護する統合戦略が必要である。この戦略には、海洋ゾーニングの拡大と 既存の保護区域の強化、汚染基準の制定と施行による住宅および産業排水の処理の改善、退役船舶を人工リーフに利用するなどの創造的解決策の採用、市内の低リスク地域での住宅開発の促進、耐塩性米品種の使用を含む米農業と他の作物の統合の支援、などが含まれるで あろう。
 
詳細は同報告書をご参照下さい。
 
報告書ページ(Stimson Centerサイト内):バングラデシュ・チャトグラムにおける気候変動・海洋リスク脆弱性の研究

(文責:笹川平和財団海洋政策研究所 前川美湖)

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