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国連国家管轄外区域における生物多様性(BBNJ)第2回準備会合にて2つのサイドイベントを開催いたしました(2016.9)

2016.09.18

2016年9月16日版

BBNJ準備委員会第2回会合報告



 2016年8月26日から9月9日の日程で、ニューヨークの国連本部において「国家管轄権外区域の海洋生物多様性準備委員会(BBNJ PrepCom)」第2回会合が開催された。笹川平和財団海洋政策研究所は、国連の協議資格を持つNGOとして第1回会合(本年3月28日-4月8日開催)からこの準備委員会に参加している。

 海洋政策研究所は、今回の第2回会合にも出席し、国内の有識者による「第2次 公海のガバナンス研究会」(海洋政策研究所・明治大学国際総合研究所共催)における、日本の先進的な科学的知見や環境影響評価技術の発信、地域漁業管理機関(RFMO)など既存の枠組・機関が行っている活動の周知、及び能力育成・技術移転の協力実績の発信などが必要との事前の検討を踏まえて、PrepComの審議に積極的に参加して発言するとともに、あわせて各国のPrepCom参加者に参考となる専門的知見を提供することを目的として2つのサイドイベントを開催した。これらの概要は次のとおり。

1.PrepComの会議の概要

  PrepComの会議は、Eden Charles議長が自ら議論の進め方や論点を整理するプレナリー(全体会議)と、①利益配分などの海洋遺伝資源問題、②海洋保護区などの海域管理ツール、③環境影響評価、④能力育成(キャパシティ・ビルディング)・海洋技術移転の4つのテーマについて、それぞれの座長(ファシリテーター)が会議参加者全員出席のもとで議論をリードしてまとめていく非公式作業グループ(Informal Working Group: IWG)会議が交互に行われた。

2.PrepCom審議への参画

 その中で、海洋政策研究所は、9月1日に行われた能力育成(キャパシティ・ビルディング)・海洋技術移転に関するIWG会議において発言を求め、海洋政策研究所がこれまで積み上げてきた研究・実績を踏まえて、次の2つの提言をした。

 1つ目は、海洋政策研究所が、日本財団ともに積み上げてきた開発途上国を対象とする世界海事大学への奨学制度の実績を紹介し、BBNJ問題は世界各国が協力して長期的に取り組む必要がある問題であり、開発途上国・小島嶼国などの能力育成のための奨学制度が重要であること、それも単に奨学金を給付するだけで終わるのではなく、卒業後のフォローアップをあわせて行うことが肝要であることを提言した。 

 2つ目は、BBNJに関する人材育成には、政府、国際機関、NGO、学界、産業界、財団など、すべてのステークホルダーの参加が肝要であることを指摘し、そのような共同のプラットフォーム構築の一例として、海洋政策研究所が2014年の国連小島嶼開発途上国会議(SIDS 2014)で提案して設立した小島嶼国及び国際社会の双方の組織・個人が島とその周辺海域の保全と管理のために自主的に協働する国際ネットワーク「島と海のネット(IO Net : Islands and Oceans Net)を紹介して、BBNJの能力構築の枠組みにもこのような考え方に立った取組みを導入することが有用であり、今後の審議の参考とするよう求めた。この発言は、「Statement by the Ocean Policy Research Institute」として他の各国等の発言とともに、国連の会議資料共有システムであるPaperSmartに掲載された(掲載された発言はページ下部に記載)。この発言を行ったIWG会議が終わると、何人かの人が先方から話しかけてきて有意義な会話をすることができた。これらをみると、この提言は、それなりのインパクトがあったと思われる。

3.サイドイベントの開催

 さらに、海洋政策研究所では、国内の有識者による「第2次 公海のガバナンス研究会」(海洋政策研究所、明治大学国際総合研究所共催)における事前の検討を踏まえて、国連海事・海洋法課のサイドイベント募集に応じて企画を提出し、次の2つのサイドイベントを国際自然保護連合(IUCN)と共催で開催した。いずれのサイドイベントにも会場がほぼ満席となる約70名の各国・機関の代表が参加して成功裡に開催することが出来た。

(1)「キャパシティ・ビルディングと技術移転強化に向けて:環境影響評価のケーススタディ」9月1日

 サイドイベントの冒頭に、海洋政策研究所の寺島紘士所長が歓迎の挨拶を兼ねて、BBNJの保全と持続可能な利用には開発途上国・小島嶼国を含む各国が十分な実施能力を持って取り組むことが不可欠で、そのための能力育成と海洋技術移転が極めて重要であることから、環境影響評価を例にとってこの問題を共に考える本イベントを開催したと開催趣旨を述べて開会した。

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サイドイベント冒頭で挨拶をする寺島紘士海洋政策研究所長

 続いて、Kristina GjerdeIUCN上席公海アドバイザーがプログラム及び発表者を紹介し、Gjerde氏の進行により4つの発表およびまとめの議論が行われた。

 冒頭に白山義久海洋開発研究機構(JAMSTEC)理事が「国家管轄権外区域(ABNJ)における資源の持続可能な利用に必要な新たな技術」と題して、ABNJにおける資源としての底生生物の重要性を指摘すると共に、その調査の難しさ、廉価な調査を可能とする技術開発事例を紹介した。

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白山義久海洋開発研究機構(JAMSTEC)理事の発表と聞き入る参加者

 続いて、Robin Warner豪州海洋資源安全保障センター(ANCORS)教授が「環境影響評価の国際的ニーズと優良事例に関する調査」と題して、環境影響評価(EIA)と戦略的環境影響評価(SEA)に関する国際法の枠組みや、深海鉱物資源開発に伴うEIAの実施、EIAとSEAの違いなどを紹介した。

 3番目に、Sandor Mulsow 国際海底機構(ISA)資源環境モニタリング部長が「ABNJにおけるEIAの経験と教訓」と題して、最近の深海底資源開発に伴うEIAの研究の進捗と実施状況を示した。その発表の中で、基本的な環境情報の統合などを重点領域としたキャパシティ・ビルディングの必要性や、既存のISAを最大限活用することを含む今後の取り組みの方向性について紹介した。

 最後に、Alison Swaddling太平洋共同体地質調査資源部環境アドバイザーが「途上国におけるEIAの実施に伴うキャパシティ・ビルディングと技術移転」と題して、深海底における鉱物資源開発、生物資源探査に対するEIAの必要性と手順が示されるとともに、小島嶼開発途上国における難しさを具体的に紹介した。

 まとめとして、Thembile Joyini南アフリカ国連代表が、途上国におけるキャパシティ・ビルディングと技術移転のニーズと緊急性、国際社会からの支援、協働の必要性を訴えた。

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寺島紘士海洋政策研究所長(左)、Kristina Gjerde IUCN上席公海アドバイザー(右)

(2)「海洋生物多様性の保全と持続可能な利用のシナジーに向けて:持続可能な漁業管理のケーススタディ」9月2日

 サイドイベントの冒頭に、寺島紘士海洋政策研究所長が挨拶し、昨年の国連総会決議は、「既存の関連する法的文書及び枠組並びに国際的な地域別・分野別の関連する機関を損なうべきでない」としており、漁業については国連海洋法条約の下ですでに様々な取組みが行われている、そこで、世界の海で行われている地域漁業管理機関(RFMO)の活動をケーススタディとして取り上げ、BBNJ準備委員会及びその後の政府間会議の審議の参考にしてもらうために本イベントを開催したと開催趣旨を述べて開会した。

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サイドイベントの主催者・発表者・パネリスト

 続いて、Kristina Gjerde IUCN上席公海アドバイザーがプログラムおよび発表者を紹介し、Gjerde氏の進行により3つの発表が行われた。

 冒頭にÁrni M. Mathiesen国際連合食糧農業機関(FAO)水産養殖局長が「FAO責任ある漁業のための行動規範、国連公海漁業協定および地域漁業管理機関(RFMO); ABNJにおける海洋生態系と生物多様性の保護について」と題して、国連海洋法条約をはじめとする漁業に関わる保全と管理のための様々な国際的な枠組について紹介した。課題として、持続可能な漁業に関する政治的関心の強化、財源の拡充、関連する仕組みの再構築、の3つが挙げられた。

 続いて、Stefán Ásmundsson北東大西洋漁業委員会(NEAFC)事務局長が「地域漁業機関--生物多様性と脆弱な海洋生態系(VMEs)の保護および分野横断的協力と協調における役割」と題して、公海をカバーする地域漁業管理機関の紹介、既存の組織間の協力と協調の必要性について指摘し、そのような取組の一例として、NEAFCとオスパール(OSPAR)委員会との協力体制について紹介した。

 3番目には、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)Driss Meski事務局長が「生物多様性の保全におけるICCATの役割」と題して、ICCATの加盟国の拡大(現在、50カ国)と組織的課題の克服、違法・無報告・無規制(IUU)漁業対策を含む生物多様性保全の活動について報告した。

 パネル討論では、国際生物多様性イニシアチブ(GOBI)コーディネーターのDavid Johnson氏がファシリテーターを務めた。冒頭に、デューク大学Daniel Dunn研究科学者が、「公海の生態系に対する漁業の影響とその他の配慮事項」と題して、公海での漁業が深海の生物多様性と生態系のレジリエンスを減少させていること、それらの状況を踏まえて生態系の総合的な評価や管理の枠組みが必要であることを指摘した。

 次に、PEW慈善財団世界マグロ保全プログラムAmanda Nicksonディレクターが、「まぐろ類RFMOとBBNJ: 実績、課題と機会」と題して、近年のRFMOの改善についての前向きな評価とともに、RFMOの課題についても指摘したうえで、RFMOの組織的な義務を拡大することにより、より効果的な保全を可能にすべきとの提案をした。そして、Globelaw/南太平洋地域漁業管理組織(SPRFMO)オブザーバーDuncan Currie氏が、南太平洋を例に、現状では同じ海域で複数のRFMOや関連組織が活動しており、調整も難しく、MPAを設置するにしても実質的には極めて困難であることを挙げ、BBNJに関する新しい枠組み策定の必要性を指摘した。

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発表に聞き入る参加者(前列:ロナン・ロング博士、外務省長沼条約交渉官、マシアス・パルソン・アイスランド代表)

 パネル討論では、パネリストがRFMOが有する機能の実施を強化すべきこと、RFMO間の調整が不可欠であることを指摘した。会場との活発な質疑応答も行われ、最後にFAOのMathiesen局長が、持続可能な漁業の実現のためには、良い科学に裏打ちされた政治的関心が不可欠であると締めくくった。

参考:「Statement by the Ocean Policy Research Institute」 Statement by the Ocean Policy Research Institute-on-1-sep-2016.pdf

サイドイベント報告書:

「キャパシティ・ビルディングと技術移転強化に向けて:環境影響評価のケーススタディ」(9月1日)

2nd Session of the Preparatory Committee on Marine Biological Diversity Beyond National Jurisdiction (BBNJ PrepCom2) SIDE EVENT REPORT Strengthening capacity building and technology transfer to empower developing states: case study on environmental impact assessments

1_Sep_2016_CB_compver.pdf

「海洋生物多様性の保全と持続可能な利用のシナジーに向けて:持続可能な漁業管理のケーススタディ」(9月2日)

2nd Session of the Preparatory Committee on Marine Biological Diversity Beyond National Jurisdiction (BBNJ PrepCom2) SIDE EVENT REPORT Creating integration and synergies for conservation use of marine biodiversity of areas beyond national jurisdiction

2_Sep_2016_SG_compver.pdf

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