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ユウォノ・スダルソノ国防大臣講演(仮訳)

2006.04.05
50年来、日米安全保障体制のもと、西太平洋における軍事及び経済体制は日米両国を中心として動いてきたと言えます。
西太平洋において安全保障のテコになっているのが、日米安全保障体制です。両国の軍事防衛予算は、アメリカが4400億ドル、日本が650億ドルで、ホノルルのアメリカ太平洋艦隊司令部、横浜・横須賀を中心とする日本の海上自衛隊部隊が、東南アジアを含む西太平洋地域全体で50年にわたって中心的な役割を果たしてきたわけです。
両国をあわせて15兆2000億ドルに上る巨大な経済力を背景に、日米両国はこの50年間、東アジア全域のために公共財とも言える安全保障を提供してきました。
過去35年間にわたって、東南アジア諸国は、日米の協力によりASEANの発展を支えてもらうという立場にありました。それは結果的に幅広い意味で安全保障の充実につながっています。同時にそれは東アジア諸国の海洋貿易の強化をもたらし、この地域の貿易は世界全体の38%を占めるに至りました。
90年代の初め、日本、韓国、台湾、シンガポール、香港といった国々がASEANの経済発展の支えになってきました。そして正に日本型の、日本を先頭にした雁行型経済発展のもとで、東アジアの経済の奇跡が実現したわけです。
2004年の11月に発表されました日本の防衛計画の大綱、それからまた最近の日米同盟の再編に関する見直し、中間報告などは、やはり現在進行中の安全保障関係のひとつの特徴を示していると思います。これには海洋安全保障も入ります。それからまた今後5年、10年を睨んだ東アジアの経済・貿易も非常に重要な側面として入ってきます。
いわゆる荒木レポートにより、日米同盟関係だけではなく、中国、インドの台頭を念頭において日本が安全保障について自らの立場をはっきりと内外に示そうとしたものといえると思います。東アジアの安全保障において、中国とインドの台頭がひとつの決定因子となりうるのではないかという可能性を念頭に置いたものであったと思います。
中国の経済の台頭は、日本が今後5年、10年を睨んだ安全保障に関する自国の立場を見直すことにつながっていると思います。つまり、中国の台頭は、台湾海峡、尖閣諸島、インドネシアおよび東南アジア諸国の海域を通るシーレーンを巡る情勢に影響を与えずにはおかないからです。
世界の海洋貿易の38%がシンガポール、マラッカ海峡、スンダ海峡、オンバイ海峡といった海峡を通っていきます。そして中国の中東からのエネルギー供給もそこに含まれるわけです。 私をはじめ、ここにいるインドネシアの海軍の士官であった仲間たちは、インドネシアが戦略的な要衝を占めるということで、日本、中国またアメリカの経済にとって非常に重要な立場にあるということを、これまでも認識し経験してきました。現在、アメリカの経済規模が11兆、日本が4兆2000億、中国が2兆ドル。当然ながら、それがインドネシア及び東南アジア諸国の海洋安全保障政策、また防衛体制に影響を与えてくるのです。
今後5年から10年くらいを念頭においた時に、安全保障の考え方の再定義があってしかるべきと思います。この安全保障という公共財を誰が提供するのか。アメリカのみが圧倒的な役割を果たし続けるのか。また日本が今後より自己主張を強めるような役割を果たしていくのか。それからまた特に南シナ海を中心とした海域で、一部中国の役割というものも受け入れていくのかということです。安全保障そして海洋政策、この地域の貿易という面からしても、これら大変重要になってくるのです。
私は海軍の専門家ではありません。今後5年から10年にわたって、この地域全体の概観を申し上げたまでです。ただし、今後とくに政治、経済、安全保障のつながり、連携がより明らかになっていくだろうと思います。そういった意味で、これらの重要な問題がこの会議で焦点をあてて議論されることを期待します。日本、中国、アメリカが東アジアの貿易、投資、経済成長のために、公共財である安全保障の面でいかなる役割を果たしていくのかについて議論を期待したいと思います。
今回の対話に集まった参加者の皆さんは、ポリシーメーカー、退役海軍士官、ビジネスマン、学識経験者であり、そして最も重要なこととして市民社会で活躍されている方々であると拝察します。インドネシアの東南アジアにおける戦略的な立場について、またインドネシアが東南アジア地域の安寧と発展と安全保障のために果たすべき役割について、問い直すような議論を期待したいと思います。
提出されたペーパーのいくつかを拝見しました。やはり難しい問題は、細部であると思います。それは皆さんにお任せして、私の役割は将来を巨視的に展望することにあります。会議の成功をお祈りします。

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