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笹川平和財団、ジャカルタ・フューチャーズ・フォーラムに登壇 ― 海洋安全保障と地域協力の深化に向けた国際対話に貢献 ―

写真1:(左から) 笹川平和財団 海洋政策研究所 黄俊揚主任研究員、同財団安全保障グループ 西田一平太上席研究員、インドのObserver Research Foundation (ORF) 副理事長 Harsh Pant 氏、同じくORFのPratnashree Basu博士
2025年8月5日〜6日にインドネシア・ジャカルタで開催された国際会議「Jakarta Futures Forum: Securing Seas, Strengthening Cooperation(海を守り、協力を強化する)」において、笹川平和財団(SPF)の研究員2名が招聘され、同フォーラムに参加・登壇いたしました。本会議は、インドのObserver Research Foundation(ORF)が主催し、インドネシアの戦略国際問題研究センター(CSIS)との協力、および各国政府や地域の主要機関の支援のもと開催されました。
本フォーラムには、50カ国以上から政府関係者、多国間機関、民間企業、市民社会、スタートアップコミュニティなど多様な分野の代表が参加し、インド太平洋における海洋安全保障と協力の強化をテーマに、活発な議論とネットワーキングが行われました。
笹川平和財団からは、日米・安全保障研究ユニットの上席研究員である西田一平太氏が、セッション「Securing the Blue Commons: Cooperation for an Indo-Pacific Maritime Order(ブルーコモンズの保全:インド太平洋海洋秩序に向けた協力)」にパネリストとして登壇しました。同氏は、国際社会の不確実性の高まりを背景に、日本がインド太平洋地域において担おうとする戦略的な役割について、中谷防衛大臣が唱えたOCEANコンセプトや防衛装備品の移転など最近の日本の動きも交えた考察を共有し、同地域における多国間協力や航行の自由、そしてルールに基づく秩序維持への日本のコミットメントを力強く訴えました。
《"Securing the Blue Commons: Cooperation for an Indo-Pacific Maritime Order" セッション登壇者》
Paco Milhiet(シンガポール・南洋理工大学 ラジャラトナム国際研究院 客員研究員)
西田一平太(日本・笹川平和財団 日米・安全保障研究ユニット 上席研究員)
Sayantan Haldar(インド・Observer Research Foundation アソシエイトフェロー)
Nilanthi Samaranayake(米国・イーストウエストセンター 客員フェロー)
モデレーター: Jackline Kagume(ケニア・経済問題研究所 憲法・法律・経済プログラム 担当官)


写真2:セッション「ブルーコモンズの保全:インド太平洋海洋秩序に向けた協力」(上) パネリスト、(下) 笹川平和財団安全保障研究プログラム上席研究員 西田一平太氏。
OPRI、港湾開発とブルーカーボン、地域密着型ブルーインパクトファインナスを結ぶ新たな視点を提示
スタジオ・セッション「Faster Routes, Stronger Trade(より速い航路、より強固な貿易)」には、笹川平和財団 海洋政策研究所(OPRI)の黄俊揚主任研究員が登壇しました。黄主任研究員が港湾インフラの新設・改修において、ブルーカーボンの視点を取り入れることの重要性を強調し、沿岸生態系の回復力を確保するためには、生態的整合性を維持する投資が不可欠であると訴えました。
さらに、黄主任研究員が世界経済フォーラム(WEF)が支援する「Ocean Impact Navigator(OIN)」のアドバイザー委員の立場から、海洋関連産業やイノベーション・エコシステムにおいて、地域コミュニティ主体のアプローチが、関係者間の包括的な利益共有を促進し、持続可能で再生的なブルーインパクト・ファイナンスの循環構築に寄与することを強調しました。これには官民セクターに加え、地域社会を含めた多様な資金源の統合が必要です。
登壇者からは、北極海航路など新興の海上貿易ルートを見据えた戦略的対話を進める上でも、このような包摂的かつ透明性の高いプラットフォームの構築が極めて重要であるという共通の認識が示されました。
《"Faster Routes, Stronger Trade" セッション登壇者》
Sinderpal Singh(シンガポール・南洋理工大学 国防戦略研究所 主任研究員/地域安全保障構造・南アジアプログラム コーディネーター)
黄俊揚(日本・笹川平和財団 海洋政策研究所 主任研究員)
モデレーター: Victoria Panova(ロシア・BRICS専門家委員会代表/ロシアW20シェルパ/HSE大学副学長)


写真3:「より速い航路、より強固な貿易」スタジオ・セッション (上) パネリスト、(下)海洋政策研究所(OPRI)黄俊揚主任研究員。
「Jakarta Futures Forum」は、地域と世界の交差点として多様な知見が交わる国際的対話の場であり、多様な関係者間の連携を深化させる貴重な機会となりました。笹川平和財団による専門的な知見の提供は、国際海洋ガバナンスおよび海洋協力における日本の存在感を高め、今後の戦略的連携や国際協力の深化に向けた新たな展望を拓くものとなりました。
(文責:黄 俊揚 笹川平和財団 海洋政策研究所 主任研究員)