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【開催報告】漁具による海洋汚染防止に関する国際ワークショップ

2023.11.22

笹川平和財団海洋政策研究所は、2023年9月5日に、「漁具による海洋汚染防止に関する国際ワークショップ」を開催いたしました。
 
海洋プラスチック汚染は今や世界的に問題となっています。中でも、海洋に流出してしまった漁具は、ゴーストギアやALDFG(Abandoned, lost, or otherwise discarded fishing gear)とも呼ばれ、大量に海を汚染しています。これらの漁具は、漁業のために欠かせない便利な道具である一方、流出してしまうと、絶滅の危機に瀕している海洋生物の死を引き起こしたり、ゴーストフィッシングによって魚類資源を減少させるなど、大きな影響をもたらします。
 
プラスチックごみの中でも、レジ袋・飲料容器などのいわゆる「使い捨てプラスチック」についてはかなり対策が進められてきましたが、漁網やロープなどをはじめとした漁具に関しては、まだまだ社会的に認知されておらず、対策が進んでいません。漁具による海洋汚染の実態が把握しづらいこと、また漁具が長期間海洋を漂流し、発生源と汚染の発生地が遠く離れていることなどもその原因と思われます。越境する漁具による汚染は国際的な問題であり、その解決には関係諸国の協調と協力が必要です。
 
日本をはじめとする東アジア諸国は世界的にみても有数の漁業国であり、また水産物の消費国ともなっています。本ワークショップでは、中国、韓国、台湾からそれぞれ漁具汚染問題の有識者をお招きし、解決に向けた国際協力の可能性を探りました。

 

開会にあたり、OPRIの阪口秀所長よりビデオメッセージによる挨拶があり、本ワークショップへの期待が述べられました。続いて、基調講演では、世界ゴーストギアイニシアティブ(GGGI)副理事長のジョエル・バジウク氏より、世界におけるゴーストギア対策の現状とGGGIの活動について紹介されました。
 
さらに、OPRIの豊島淳子研究員より、沖縄県西表島における漂着漁具調査やコンピューターモデリングによる漂流経路予測の結果などが示されました。また、中国で活動する環境保護活動家のチャン・ジン氏からは、中国における使用済み漁具の回収・リサイクルの取組等について紹介がありました。続いて韓国海事研究所のゴ・ドンハン氏より、韓国においてはゴーストフィッシング被害により漁業生産量が約10%減少していると推定されることや、韓国政府による海中の漁具回収の取組などが紹介されました。コンピューターモデリングによっても、韓国の周辺や日本海の海域では高い濃度で流出した漁具が蓄積していると考えられ、漁具の回収は必要かつ有効な取組であると考えられます。また、台湾のインディゴウォーターのニン・イェン氏からは、台湾における漁具汚染の現状と対策について紹介されました。台湾では、特にカキ養殖いかだからのブイの流出が問題となっており、発泡スチロール製のブイを他の素材で代替したり、所有者のマーキングの義務化などの対策が進められています。さらに、日本からの事例紹介として、日本財団シニアオフィサーの塩入同氏より、瀬戸内海における行政・地域・漁業者等が一体となって取り組む汚染対策「オーシャンズX」の取組が紹介されました。
 
パネルディスカッションでは、九州大学の清野聡子准教授にモデレーターを務めていただき、この問題に対する各国のアプローチの違いや、お互いの経験から学びあい情報交換や協力体制を強化することの重要性などが確認されました。

 

なお、シンポジウムの様子は財団公式YouTubeサイトにて録画でご覧いただけます。(2023年12月22日正午までの期間限定公開となりますので、ご注意ください。)
 
(日本語) 漁具による海洋汚染防止に関する国際ワークショップ (2023年9月5日開催) - YouTube
(英 語) International Workshop on Prevention of Abandoned, Lost or Otherwise Discarded Fishing Gear (Sept.5) - YouTube

(文責:海洋政策研究所 研究員 豊島淳子)

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