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【開催報告】国際フォーラム 持続可能な海洋と2023年G7札幌気候・エネルギー・環境大臣会合に向けて

2023.04.18

 2023年4月6日、当財団海洋政策研究所は国際フォーラム「持続可能な海洋とG7 ― 2023年G7札幌気候・エネルギー・環境大臣会合に向けて」を当財団国際会議場にて開催しました。フォーラムでは、内外の官庁、国際機関等の幹部や専門家等が一般参加者と共に会議場およびオンラインで参加しました。

 冒頭、当財団角南篤理事長は、開会挨拶にて、西村明宏 環境大臣、星野剛士 内閣府副大臣をはじめとする多くの要人の方々の参加を歓迎するとともに、このフォーラムがG7札幌大臣会合に有用な知見の提供ができるよう期待していると述べました。西村明宏環境大臣は、来賓挨拶として、我が国の海洋に関わる取組や国際会議や交渉等における日本政府の積極的な関与を紹介しつつ、海洋生物多様性保全やプラスチック海洋汚染対策等への取組の強化に向けて議論を牽引していく旨のG7札幌大臣会合に向けた抱負を強調されました。

角南 篤 当財団理事長 写真
角南 篤 当財団理事長
西村明宏 環境大臣 写真
西村明宏 環境大臣
 星野剛士内閣府副大臣は、我が国における海洋ビックデータの活用や北極域研究船の就航予定、緑の気候基金(GCF)を通じた気候変動緩和に向けた国際協力等に言及し、海洋秩序の維持・強化に向け取り組む方針を示しました。ピーター・トムソン国連事務総長海洋特使は、持続可能な海洋政策の実現に向け、持続可能な海洋経済構築のためのハイレベルパネルでも牽引的な役割を果たしてきているG7の首脳や閣僚が持続可能な海洋実現のために指導的な役割を発揮することに期待している旨述べました。
星野剛士 内閣府副大臣 写真
星野剛士 内閣府副大臣
ピーター・トムソン 国連事務総長海洋特使 写真
ピーター・トムソン 国連事務総長海洋特使
 アンジェラ・パオリニ・エラード 世界貿易機関(WTO)事務局次長は、昨年6月に漁業補助金に関する協定が採択されたことはWTOメンバーの多国間主義と持続可能性を追求する決意の表れであるとし、同協定の早期批准とその実施、さらには、過剰漁獲能力など積み残した課題についての交渉を進めていくことを強調しました。リナ・リー 国家管轄権外区域海洋生物多様性協定に関する政府間会議(BBNJ)議長・シンガポール海洋・海洋法担当大使兼外務大臣特別代表は、国家管轄権外区域の海洋生物多様性に関する協定文書が今年3月に合意されたことは非常に画期的で、公海における海洋保全と持続可能な利用の推進に向けた国際社会の総意であり、同協定の批准と実施、さらにはそのための途上国に向けた能力構築支援といった国際連携が必要であると述べました。
アンジェラ・パオリニ・エラード 世界貿易機関(WTO)事務局次長 写真
アンジェラ・パオリニ・エラード 世界貿易機関(WTO)事務局次長
リナ・リー 国家管轄権外区域海洋生物多様性協定に関する政府間会議(BBNJ)議長・シンガポール海洋・海洋法担当大使 兼外務大臣特別代表 写真
リナ・リー 国家管轄権外区域海洋生物多様性協定に関する政府間会議(BBNJ)議長・シンガポール海洋・海洋法担当大使兼外務大臣特別代表
 太田愼吾 農林水産大臣顧問は、WTOの漁業補助金合意の採択を評価し、有害な漁業補助金の禁止する一方で、漁業分野への補助金は漁業管理の改善や漁業資源の回復計画の実施に向け、計画が履行されない場合には補助金を停止するなどの措置が漁業補助金の効果を高めると指摘しました。松澤裕 環境省地球環境局長は、2019年のG20大阪サミットで海洋プラスチック汚染対策を促す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を立ち上げ、国際連携を後押しするとともに、現在進められているプラスチック汚染協定に関する交渉では議長団に日本政府代表が入り、交渉を牽引していると述べる一方、海洋保護目標である30x30目標については多様なステークホルダーとの連携の重要性を強調しました。
太田愼吾 農林水産大臣顧問 写真
太田愼吾 農林水産大臣顧問
松澤 裕 環境省地球環境局長 写真
松澤 裕 環境省地球環境局長
 ジョティ・マサー・フィリップ プラスチック汚染政府間交渉委員会事務局長は、昨年12月に第1回交渉会議が開催され、今年5月には2回目の会合がパリで開催される予定で、3回目の会合では協定案を議論することを想定しており、交渉を円滑に進められるよう日本をはじめとするG7諸国の首脳や閣僚のリーダーシップに期待を表明しました。ミナ・エプス 国際自然保護連合(IUCN)海洋プログラム部長は、30x30およびBBNJと海洋生物多様性保全を後押しする国際目標や協定が合意されたことから、具体的取組の推進に向け国際連携を進めていく重要性を強調しました。
ジョティ・マサー・フィリップ プラスチック汚染政府間交渉委員会事務局長 写真
ジョティ・マサー・フィリップ プラスチック汚染政府間交渉委員会事務局長
ミナ・エプス 国際自然保護連合(IUCN)海洋プログラム部長 写真
ミナ・エプス 国際自然保護連合(IUCN)海洋プログラム部長
 井田徹治 共同通信社編集委員兼論説委員は、IUU漁業が漁業資源の持続可能な管理を阻害するだけではなくて、強制労働や人権侵害といった社会問題の要因になっていることから、IUU漁業についてはより俯瞰的な視点からその廃絶に向け国際社会が協力していく必要性があると述べました。トーステン・ティエール グローバル・オーシャン・トラスト代表は、プラスチック以外の化学物質や重金属、その他の有害物質による海洋汚染への対策に資する国別そして国際的な施策の強化や気候変動と海洋の関連性、自然関連財務情報開示などの取組を進展させ、そうした必要性を昨年のドイツのG7サミットで採択されたオーシャン・ディールの新版となるオーシャン・ディール・プラスとして発信していくことを提案したいと発言しました。
井田徹治 共同通信社編集委員兼論説委員 写真
井田徹治 共同通信社編集委員兼論説委員
トーステン・ティエール グローバル・オーシャン・トラスト代表 写真
トーステン・ティエール グローバル・オーシャン・トラスト代表
 質疑応答では、有害漁業補助金の禁止措置やIUU漁業の規制などで、主要漁業国を巻き込むことが重要といった指摘や、保全と持続可能な利用について地域性を踏まえて推進していく重要性などが強調されました。漁業における労働問題については地域機関や民間組織が強制労働や人権侵害の根絶を目指す決議やガイドラインの策定を進めているといった点も補足されました。モデレーターを務めた小林正典 笹川平和財団海洋政策研究所主任研究員は、大変有意義な議論を取り纏め、今後の連携に役立てるとともに、来るG7札幌気候・エネルギー・環境大臣会合にも役立てててもらえるよう情報共有を図っていきたいと述べました。
 阪口秀 笹川平和財団海洋政策研究所所長は、閉会挨拶で、非常に密度の濃い議論が展開されたと振り返り、登壇者に謝意を表明しつつ、先進国での政策の進展と併せて、途上国が直面する課題にも引き続き目を向け、能力構築等の連携を図り、地球の共有資源である海洋の保全と持続可能な利用を進めていくことが重要であるとの認識を新たにしたと述べました。
阪口 秀 笹川平和財団海洋政策研究所所長 写真
阪口 秀 笹川平和財団海洋政策研究所所長
小林正典 笹川平和財団海洋政策研究所主任研究員 写真
小林正典 笹川平和財団海洋政策研究所主任研究員
 なお、本国際フォーラムでは、パネリストより Ocean Deal Plus(海洋取組新版)案作成の提案があったことから、事務局である当研究所が案を作成し、報告者やパネリストからの意見を集約して添付の文書を作成しました。
Ocean Deal Plus案(英文)、 Ocean Deal Plus案(和文要旨)

本フォーラムは当財団YouTubeサイトにて録画をご視聴いただけます。

本件お問合せ先: oceanpolicy(at)spf.or.jp ※(at) を@に置き換えて下さい
(文責:海洋政策研究所 主任研究員 小林正典、プロジェクト・アシスタント 森泉幸恵)

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