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【開催報告】セミナー「グリーンランドで進む資源開発ブーム―環境保護を軸とした採掘とは―」
北極海と北大西洋に挟まれたグリーンランドは世界最大の島ですが、我々が普段目にする地図では片隅に記載されていることが多く、その実態を十分に理解していないのが現状です。
しかし、デンマーク本土やフェロー諸島と対等の立場でデンマーク王国を形成する自治領であり、昨年にはカナダとの約50年にわたった領土紛争が終了するなど、国際的にも大きな注目を集めています。また、全島の約80%以上が3,000m以上にも達する氷床と万年雪に覆われ、巨大なフィヨルドが多い自然環境ですが、現在予想よりも早い速度で氷床の融解が進んでおり、環境や経済の面で大きな影響が懸念される地域でもあります。一方で、温暖化により急速に天然資源の開発が進んでおり、水晶、金属、亜鉛のみならず、レアメタルやレアアースといった希少価値の高い鉱物の採掘も進められております。
笹川平和財団海洋政策研究所では、北極サークル日本フォーラム出席に伴い来日される機会を捉え、2023年3月17日にヤコブ・イスボセセン氏(北京グリーンランド政府代表)をお招きしたセミナー「グリーンランドで進む資源開発ブーム―環境保護を軸とした採掘とは―」を開催し、グリーンランドで進む資源開発ブームの現状と、グリーンランドの自然保護のための取り組み、そしてグリーンランドにおける「環境保全と経済成長の両立」のあり方について、ご講演いただきました。


ご講演では、グリーンランドの地理的条件や歴史・文化、政治体制などをご紹介いただくとともに、グリーンランドが有する鉱物資源や水産資源などをはじめとする天然資源、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行を経てもなお注目が高まり続ける観光資源の魅力や今後の可能性についてお話しいただきました。
その後の阪口秀・笹川平和財団海洋政策研究所長との対談では、グリーンランドの歴史や政治体制を踏まえた上で北極圏におけるその役割の高まり、今後発展が期待される北極海航路を用いた産業構造の変革、より影響が深刻化する気候変動への対応するための再生可能エネルギーの積極的利用などの課題に関する意見交換が行われました。

笹川平和財団海洋政策研究所は、今後も「極域の次世代海洋政策」事業や「持続可能な海洋管理手法の開発」事業などの北極関連事業の推進を通じて、グリーンランドを含む北極圏の発展に貢献していきたいと考えています。

(文責:海洋政策研究所 主任研究員 小森 雄太)