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【概要報告】北極サークル日本フォーラム本会議(第3日)

2023.03.14
笹川平和財団海洋政策研究所は、3月4日(土)から3月6日(月)にかけて、ARCTIC CIRCLE事務局および日本財団と「北極サークル日本フォーラム」を共催しました。以下、本会議の第2日目の概要を速報でお伝えします。

3月6日(月)午前、北極サークル日本フォーラム3日目は、休憩を挟み、4つのセッションが行われた。
 

 1つめの「グリーンランド人の将来像:結束と差異」のセッションでは、北海学園大学の高橋美野梨准教授をチェアに、ヤコブ・S・イスボセセン グリーンランド自治政府北京代表、マリク・ペーター・コッホ・ハンセン・グリーンランド外交政策学会評議員、キビオク・ロブストロム・グリーンランド大学助教、クラウス・ゲオルグ・ハンセン・デンマーク国際問題研究所(DIIS)上級分析員、ウルリック・プラム・ガッド DIIS上級研究員が、先住民であるイヌイットやグリーンランドの自決権・自治に焦点を当て、社会、文化、経済、政治の観点から議論を行った。続くフロアとのQ&Aでは、教育やビジネスの現場においてグリーンランドの人々が抱えるアイデンティティの危機というジレンマ等について議論が交わされた。

「グリーンランド人の将来像:結束と差異」のセッション写真
 2つめの「北極とアジアの食の繋がり:食文化をめぐる障害の打破」のセッションでは、北極経済評議会(AEC)議長のマッズ・フレデリクセン氏をチェアに、笹川平和財団海洋政策研究所の阪口秀所長、アクア・アズーリ株式会社CEOのイエンスサイモン・ウルヴォイ氏、自らもシェフでArktiskMatプロジェクトマネージャーのパー・テオドール・トリッセン氏、Restaurant ichiの前チーフシェフの市原沙織氏、ノルウェー水産物審議会のヨハン・クアルハイム・ディレクターが、ノルウェーとアジアの食文化の共通点や相違点をはじめとして、調理法の歴史的背景や持続可能な海産物の利活用について幅広く議論した。パネルでは、アジアのシェフがノルウェーの魚介類を使った料理を作る4つのショートビデオが上映され、各国での食文化の共通点や相違点、ノルウェー企業がアジア市場に輸出する際の機会や課題などについて議論が交わされた。
「北極とアジアの食の繋がり:食文化をめぐる障害の打破」のセッション写真
 次の、「危機に直面する北極の地政学」では、ラッシー・ハイネセン・ラップランド大学名誉教授、ミヤセ・クリステンセン・ストックホルム大学教授、角南篤・笹川平和財団理事長、楊剣・上海国際問題研究院副院長の4名が、ウクライナ危機後の北極における地政学をめぐる諸問題について、アカデミックな観点から議論を行った。各スピーカーからは、「地政学」それ自体に善も悪もないとして、北極および地球規模の諸問題への対応のために対立ではなく協力をする必要性、その協力は機能的な協力であり、国家間よりも各アクターが重要であること;学際的な取り組みが必要であり、地域住民とのネットワークが重要であること;政府間の地政学的な対立を超越するために「知識共同体(epistemic community)」の果たす役割は大きく、科学技術外交を含め市民社会主導による協力のあり方が重要であること;北極の問題に地政学としての極はないとして、地球規模での問題への取り組みが重要であり、そのためには自国の利益だけではなく、目標に基づくガバナンスを考慮することが重要であることなどのコメントがあった。フロアとのQ&Aでは、各スピーカーのスピーチやウクライナ危機後のロシアとの関係のあり方、今後の北極評議会の見通しなどに関する質問が寄せられるなど、活発な質疑が行われた。
「危機に直面する北極の地政学」のセッション写真

最終セッションに先立ち、林芳正外務大臣から北極サークル日本フォーラムに寄せられたメッセージが読まれた。
 

 続く「閉会セッション」では、グリムソン議長と角南理事長による公開対話として、フロアの参加者との自由闊達な議論・意見交換が行われた。参加者からは、北極における気候変動の問題に対する先住民の関与のあり方や地政学の問題に対する科学のあり方、民間セクターによる北極問題への関与のあり方など、様々な観点についての議論が交わされた。議論への回答の中では、グリムソン議長から、北極における気候変動問題に対応する上で、今後は、太平洋島嶼国を含むアジア諸国の関与が欠かせないこと、そのためにメッセージを送り続けることが重要であり、笹川平和財団の役割は非常に大きいことなどの期待も述べられた。最後にグリムソン議長より、様々なステークホルダーからの北極対話の参加に期待を込めたメッセージが示され閉会となった。

「閉会セッション」写真

会場内の様子については北極サークル事務局の写真集(Flickrサイト)もご参照ください。

(文責:笹川平和財団海洋政策研究所 客員研究員 本田悠介)

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