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【開催報告】「海洋の公平性実現に向けた国際会議:革新的、公平、包括的かつ持続可能な戦略とブルーインパクト投資について」
アジア開発銀行研究所(ADBI)、オーストラリア国立海洋資源・安全保障センター(ANCORS)と共催で「海洋の公平性実現に向けた国際会議:革新的、公平、包括的かつ持続可能な戦略とブルーインパクト投資について」を開催しました。
持続可能な海洋・沿岸資源利用の実現に向けたブルーエコノミーの取組みが世界各地で推進される中で、多様な関係者間で海洋から得られる便益を広く公正に共有するための「海洋の公平性」の実現に注目が集まっています。2023年2月27日から3月1日の3日間、笹川平和財団海洋政策研究(OPRI-SPF)はオーストラリア・ウーロンゴンにてアジア開発銀行研究所(ADBI)、オーストラリア国立海洋資源・安全保障センター(ANCORS)と共に「海洋の公平性実現に向けた国際会議:革新的、公平、包括的かつ持続可能な戦略とブルーインパクト投資について」を開催しました。本シンポジウムには、南アジア、東南アジア、太平洋島嶼国、日本、豪州などアジア・太平洋地域18ヵ国から研究者、行政関係者ら55名以上が参加し、「海洋の公平性」の実現に関する課題と求められる取組みなどについて議論を交わしました。
開会式にて。Patricia Davidson ウロンゴン大学学長(左上)、阪口秀 OPRI-SPF所長(右上)、園部哲史 アジア開発銀行研究所所長(左下)。(右下)Jodi Edwards RMIT大学先住民族研究フェローによる講演「カントリーへようこそ」。
ロイヤルメルボルン工科大学のJodi Edwards副学長による「国への歓迎の儀式(母なる大地からの自然の恵みを讃える先住民の聖歌)」によって幕を開けた開会式では、ウーロンゴン大学のPatricia Davidson副学長が本会議の重要性を強調し、実りある議論とネットワークの構築に期待を述べました。アジア開発銀行研究所の園部哲史・所長は、アジア太平洋地域の途上国が持続可能な開発目標(SDG5, 10, 13, 14)を達成するための支援と、アジア開発銀行の「健全な海洋と持続可能なブルーエコノミーのための行動計画」の実施推進の重要性を述べました。海洋政策研究所の阪口秀所長は、持続可能な海洋資源利用の実現が喫緊の課題であることを強調すると共に、日本とオーストラリアが太平洋地域での連携を強化し、ブルーエコノミーを推進するための手段として、社会における格差を解消するための「海洋の公平性」を実現することへの期待の言葉を述べました。
太田義孝 日本財団オーシャンネクサス研究所所長及びワシントン大学大学地球環境学部教授による基調講演(右上)と、セッションにおけるパネリストおよび討論者(左、右下)。
ソロモン諸島、インドネシア、スリランカ、クック諸島、オーストラリアの各政府代表による政策対話(左)、およびフィリピン(右上)とモルディブ(右下)からの講演の様子。
ブーダリー国立公園における現地視察。Gadhungal Murringの解説とともに、先住民族の歓迎儀式と籠編みを体験した。
本会議では、水産業、エネルギー、開発、海洋ゴミ等、海洋に関わる多様な課題に対する幅広い取組みの必要性について議論が展開されました。これらの取組みを推進するためには学術的・文化的背景の異なる専門家による協働が必要であり、超学際的な研究の中で生み出される相乗効果によって、海洋と海洋資源が直面する課題への革新的な解決策がもたらすことができると考えられます。本会議における報告と議論は、書籍として出版する予定です。本書籍が政策立案者や研究者、その他の多様な関係者への新たな視点を提供し、海洋の公平性の推進に寄与することを期待しています。海洋政策研究所は、「海洋の公平性」の向上に焦点を当てた持続可能かつ公正なブルーエコノミーのための経済活動や支援の在り方を探求し、今後も本シンポジウムのような知識醸成の場、そしてパートナーシップを今後も強化してまいります。