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【開催報告】「海の万博」セミナーシリーズ第3回 「次世代に繋ぐ海」

2022.02.14

2022年1月14日に、(公財)笹川平和財団海洋政策研究所と(株)三菱総合研究所の共催により、「『海の万博』セミナーシリーズ第3回 ~『次世代に繋ぐ海』」が開催されました(セミナーの様子はこちらの講演動画をご覧ください)。

大阪湾を臨む「夢洲」の会場にて、2025年に大阪・関西万博の開催が予定されています。(公財)笹川平和財団海洋政策研究所では、この万博を「海の魅力発信」「海の課題解決」のショーケースとしていくことを目指して、TEAM EXPO 2025プログラムに「海の万博チャレンジ」を登録しました。その第一歩として、(株)三菱総合研究所との共催により、2021年度に「海の万博」セミナーシリーズを開催しています。
第3回となる今回は、これまでの第1回・第2回のセミナーで検討した「いのち輝く海」のコンセプトを、どのように次世代を担う子どもたちと形づくり「いのちを高めて」いくのか、万博が目指すSDGs+Beyond社会の実現も意識しつつ議論を深めました。

冒頭挨拶では、若宮健嗣国際博覧会担当大臣から、四方を海に囲まれた夢洲(ゆめしま)で開催される大阪・関西万博において、地球規模の課題の解決に資するような海洋科学技術の発信など、海のサステナビリティに向けた取り組みを行っていくこと、本セミナーを通じて子どもたちや若い世代の人たちが、いのち輝く海の在り方を自ら考え行動し、積極的にチャレンジできる、そうした環境づくりや教育の在り方について議論されることへの期待などについて、ビデオメッセージをいただきました。
続いて、(公財)笹川平和財団海洋政策研究所の角南理事長から、本セミナーシリーズの企画趣旨が紹介されました。海洋政策研究所では、2016年から海洋教育パイオニアスクールプログラムを通じて毎年、全国約200校の取組みを支援しており、本セミナーではそのうち阪南市、気仙沼市、沖縄水産高校から取組みを紹介いただき議論することで、「いのち輝く」海を次世代に繋ぐための海洋教育の在り方が議論されることへの期待が示されました。

第1部では、武藤正紀 (株)三菱総合研究所主任研究員から、第1回及び第2回セミナーにおける議論を受けた今後の「海の万博」検討の進め方が紹介されました。「いのち輝く」の定義のひとつとして「ウェルビーイング」(身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること)というキーワードが示され、海の活用と課題解決により人・社会・地球のいずれもが「いのち輝く」可能性があること、そして今回セミナーのテーマである「次世代に繋ぐ海」を実現するしくみとして、海を舞台としてステークホルダーを結び付けて価値循環させるサスティナブルでプレイフル(Playful)なSTEAM教育*プラットフォームが構築できるのではないか、そしてそのモデルを万博で国内外に提示できるのではないか、との期待が述べられました。

続いて、阪南市教育委員会の石原慎様からは、パイオニアスクールプログラム実施校5校の取組みとして、ワカメの養殖体験、ノリ漉き体験、漁師の方からの聞き書き、アマモの栽培活動等を紹介いただきました。また、西鳥取小学校の子どもたちからの動画メッセージを紹介いただくとともに、今後は子供たちが阪南市だけでなく大阪湾や世界の海洋環境に対する広い視野を持てるよう育てていきたいとの考えが示されました。
気仙沼市教育委員会の淺野亮様からは、幼小中20校(幼小中高22校)が関わる気仙沼市の海洋教育の取組みとして、「海と生きる」とはどういうことか、子どもたちが探究活動を通じて、自分事として取り組むようになったこと、気仙沼版海洋リテラシーとなる海洋教育の副読本「『海と生きる』を学ぶガイドブック」を出版したこと、岩手県洋野町とともに海洋教育こどもサミットin東北など、他地域とつながる活動を実践していることが紹介されました。今後は、副読本を効果的に活用しながら、系統性ある指導改善と、学習者目線に立った学びの自律化に一層努めていきたいとの考えが示されました。
沖縄県立沖縄水産高等学校の大屋泰彦様からは、生徒が主体となって高校生から小中学生に学生目線でわかりやすく教える「リトルティーチャー制度」の取組みや、糸満市教育委員会との連携によるパイオニアスクールの取組みとして、カッターボートの漕艇体験、ロープワーク体験、隊列訓練、マグロ解体ショー、船舶操船シミュレータ体験、小型船舶体験乗船、海ごみ・マイクロプラスチック問題の出前授業などを行い、8校約730名に参加いただいたことが紹介されました。また、今後は海洋教育とSTEAM教育との融合を図りながら未来の教育に向けて調査研究を推進していきたいとの思いが述べられました。

第2部では、東京大学大学院教育学研究科附属海洋教育センター田口康大特任講師から、我が国における海洋教育の歴史を紹介いただくとともに、海洋教育の実践研究として、海洋教育の拠点形成、カリキュラムの開発、授業づくりの支援、全国海洋教育サミットの開催、海洋教育こどもサミットの開催等の活動を通じて、海洋教育の構造化・体系化を行ってきたことを紹介いただきました。また海の万博を、恵みと畏れの2つの顔を持つ海と向き合う中で培われてきた術や文化を基底として、これからの海との関わり方をデザインする場にしたいとの考えが示されました。
 続いて、大阪・関西万博 中島さち子プロデューサー(音楽家、数学研究者、STEAM教育家、㈱steAm代表)から、「いのちを高める」のテーマプロデューサーとして、万博という機会を利用して、皆が主役で皆が沸き立つお祭り、関わり合い、新しい学びを産み出すことを目指しており、「いのちの遊び場 クラゲ館」というパビリオンで示したいとの思いが紹介されました。また、本セミナーを契機として、万博の会期前から会期後まで貫く、地球全体が繋がり合って学び合うような取組みとして、世界中の多様ないのちの創造の喜びを爆発させる共創ネットワーク「未来の地球学校」を展開していきたいとの考えも示されました。

続いて、(公財)笹川平和財団海洋政策研究所 角田智彦主任研究員の進行によるパネルディスカッションが行われ、中島プロデューサーからは、既に実践を開始している何校かに声掛けをし、繋がり、体験し、海外とも交流する取組みをしたいとの考えが示されました。また、万博はお祭りの側面もあるため、エンターテインメント性も考慮し、例えば茶室を海上で体験できる、会場への行き帰りで海を感じるといった仕掛けも考えたいとの思いが示されました。
田口特任講師からは、アナログな視点も重要であり、例えば海と安全に戯れることができる遊具や、海をテーマとしたお祭りを子どもたち同士で考える取組みも面白いのではないか、との考えが示されました。また、未来の子どもたちに多くの課題を残している現状を踏まえ、大人たちが本気で課題解決する姿を見せ、未来は明るいと子どもたちに伝えていきたいとの思いも示されました。

パネルディスカッションに参加した、東京大学田口康大特任講師(左)と 大阪・関西万博 中島さち子プロデューサー(右)写真

パネルディスカッションに参加した、東京大学田口康大特任講師(左)と 大阪・関西万博 中島さち子プロデューサー(右)

*: STEAM教育 … Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学・ものづくり)、Mathematics(数学)を横断して学習する「STEM教育」に、Art(芸術・リベラルアーツ)を加えた教育概念。
(文責:海洋政策研究所 主任研究員 角田智彦)

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