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【開催報告】国際ウェビナー 持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル政策提言 ―持続可能な海洋経済と国際連携推進に向けて (詳細)

2020.12.11

笹川平和財団海洋政策研究所は、外務省、在日パラオ共和国大使館、ノルウェー大使館との共催で、国際ウェビナー「海洋パネルの政策提言:持続可能な海洋経済と国際パートナーシップの推進」を開催しました。このウェビナーは、海洋パネルが前日の2020年12月2日(水)に発表した政策提言の普及を目的に開催されました。海洋パネルは、正式には「持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル」と呼ばれ、魚類資源の枯渇、海水温暖化、海洋プラスチックの増加など、海洋が直面するリスクへの対策に取り組み、水産資源の保全と持続可能な利用を通じた持続可能な開発を推進するために、ノルウェー政府の主導で2018年に設置されました。海洋パネルには、国連事務総長の海洋特使とともに14カ国の首脳が参加しています。海洋パネルには安倍晋三内閣総理大臣(当時)が参加し、今年秋からは菅義偉内閣総理大臣がパネルのメンバーとして政策対話に参加しています。

菅 義偉 内閣総理大臣写真

菅 義偉 内閣総理大臣

12月3日(木)に開催されたウェビナーでは、政府、菅内閣総理大臣、パラオのトミー E. レメンゲサウ Jr.大統領、ノルウェーのアーナ・ソールベルグ首相をはじめとする著名な代表者や専門家が登壇し、海洋パネルの政策提言とその効果的な実施に向けた国際的なパートナーシップの重要性を強調しました。以下は、ウェビナーでの講演者の発言、発表、議論の要点をご紹介します。

 

1.ハイレベル・セッション

角南 篤 笹川平和財団理事長兼海洋政策研究所長(OPRI-SPF)
COVID-19という世界的なパンデミックの第3波の下、オンライン・イベントとして、「持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル(以下、海洋パネル)」の政策提言を議論するための国際ウェビナーを開催できることに、関係者の皆様に謝意を表します。エコノミスト、日本財団と共催の一連の「ブルー・リカバリー」ウェビナーを今年の夏に開催し、著名なスピーカーが海洋と気候変動の連関、海洋環境保護と海洋生態系の保全、イノベーションと海洋技術など海洋と海洋資源の持続可能性を維持するための重要な課題について議論しました。ブルーエコノミーは重要な政策目標であり、14カ国の首脳で構成される海洋パネルは、持続可能な海洋とブルーエコノミーのための政策提言を総合的な視点から策定するため、国際的な連携を推進してきました。外務省、日本、OPRI-SPF、JAMSTEC(海洋研究開発機構)は、海洋パネルの活動を支援しています。今回のウェビナーは、在日パラオ共和国大使館、在日ノルウェー大使館の協力も得て開催することになりました。本日、オーストラリア、フィジーを皮切りに、アフリカ、ヨーロッパ、北中南米で一連のウェビナーが開催されますが、私は海洋パネルの重要な政策提言が幅広いステークホルダーと共有され、私たちの海が持続可能なものとなり、現在と次世代のための持続可能な海洋経済を促進するためのパートナーシップが強化されることを期待しています。

菅 義偉 内閣総理大臣
持続可能な海洋開発と保全のためのハイレベルな議論を先導してリーダーシップを発揮されたノルウェーのアーナ・ソールベルグ首相とパラオ共和国のトミー E. レメンゲサウ Jr.大統領に敬意を表します。海洋と海洋資源を持続可能な形で次の世代に引き継ぐことは、日本のかけがえのない責任です。持続可能な海洋経済の実現には、海洋を基盤とした再生可能エネルギーを活用するなど、気候変動の緩和に向けた野心的な行動をとることが重要です。日本は、豊かな海洋資源から将来の世代が恩恵を受けることができるよう、我が国の管轄する海洋を持続的に管理していくことを約束します。2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにし、カーボン・ニュートラル社会を実現することを目指す方針を表明します。日本は昨年のG20大阪サミットで「大阪ブルーオーシャン・ビジョン」を打ち出しました。同ビジョンでは、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加汚染をゼロにすることを目標としています。日本はこの実現に向け、大阪にある国連環境計画の国際環境技術センター(UNEP-IETC)などの関連パートナー機関とともに積極的に取り組むとともに、開発途上国への技術支援を促進していきます。

トミー E. レメンゲサウ Jr. パラオ共和国大統領
菅首相が海洋パネルの活動を支持してくれたことに感謝するとともに、安倍晋三元首相が海洋および太平洋島嶼問題に関与してくれたことを、今後も是非継続していただきたいと考えています。菅首相が就任直後に発表した、日本の温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロにするという目標に勇気づけられています。菅首相のご発表は、野心的な気候目標を強調する上で非常に重要であり、海洋パネルのアジェンダとの関連性も高いものです。ゼロ・エミッション政策は国際社会で広く共有されており、日本の世界的なパートナーシップの模範となるでしょう。海洋の健全性は、海洋温暖化、海面上昇、異常気象、海洋酸性化などの最悪の影響を回避するために、パリ協定の温度目標を達成することにかかっています。また、私たちの海洋アジェンダに、今年直面したコロナ禍の危機を反映する必要があります。そこで海洋パネルは、「持続可能な海洋経済のための変革、保護、生産、繁栄のためのビジョン」と呼ばれる政策提言を発表し、新規および確立された海洋産業、効果的な海洋保護、海洋知識の拡大、およびそのような変革への資金調達に取り組んでいます。持続可能な海洋経済のための計画は、海洋をより健全なものにするとともに、ビルド・バック・ブルーとビルド・バック・ベター(著者注:より健全な海をより良い環境を取り戻すの意)のアプローチでコロナ禍に対応する機会を創出することでしょう。持続可能な海洋経済を推進し、海洋保護と一体となった海洋経済を実現することで、持続可能な海洋を私たちの子供たちに引き継いでいくための方法として、海洋保護区、文化、観光、廃棄物管理に関する行動の効果を向上させる上で、日本とのパートナーシップが重要であると考えています。

アーナ・ソールベルグ ノルウェー首相
日本とノルウェーは物理的に距離があるにもかかわらず同じ海を共有しており、両国は沿岸地域社会の将来にとって不可欠な食料、繁栄、健康を海に依存しています。菅首相が海洋パネルに参加し、新たな科学、知識、行動の機会を提供してきた230人以上の世界的な専門家によって支えられている、この非常に重要な事業への日本の関与を継続していることを称賛したいと思います。14名の海洋パネルのリーダーは、海洋において100%持続可能な管理を図ることを約束し、海洋管理の100%という目標を現実のものにするために、他の世界のリーダーや民間部門、市民社会などのパートナーにも参加を呼びかけていきます。

角南 篤 笹川平和財団理事長兼海洋政策研究所長写真

角南 篤 笹川平和財団理事長兼海洋政策研究所長

トミー E. レメンゲサウ Jr. パラオ共和国大統領写真

トミー E. レメンゲサウ Jr. パラオ共和国大統領

アーナ・ソールベルグ ノルウェー首相写真

アーナ・ソールベルグ ノルウェー首相

フランシス・マツタロウ 駐日パラオ大使
持続可能な海洋の実現と海洋資源、特に漁業資源の持続可能な利用に関する対話を過去数年にわたって促進することで、パラオと日本のパートナーシップが強化してきたことに感謝の意を表明します。持続可能な海洋の実現と持続可能なブルーエコノミーの推進、COVID-19の課題を克服するための復興、そして太平洋島嶼国と国際社会の利益のために、OPRIがパラオとのパートナーシップを引き続き牽引していくことを期待しています。

インガ M. W. ニーハマル 駐日ノルウェー大使
ノルウェーと日本の間の、長期にわたる多面的な協力関係を継続することを期待しています。海運分野での環境対策強化は、相互協力の重要な分野です。その他の協力分野としては、海洋管理の改善、洋上風力発電、海洋の持続可能性の達成に向けた開発途上国の支援における相互連携などがあり、両国の連携発展を期待しています。

フランシス・マツタロウ 駐日パラオ大使写真

フランシス・マツタロウ 駐日パラオ大使

インガ M. W. ニーハマル 駐日ノルウェー大使写真

インガ M. W. ニーハマル 駐日ノルウェー大使

小野 啓一 外務省地球規模課題審議官
一日前に発表された海洋パネルの政策提言について説明したいと思います。政策目標は2030年に設定されており、政策提言の一つに再生可能エネルギーが挙げられています。洋上風力発電は、気候変動緩和、経済振興、エネルギー安全保障の向上という3つの側面で効果を得られることが期待されます。海洋汚染対策も重要な政策目標であり、特に海洋プラスチックの廃棄物の削減が目標に挙げられています。2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにするという目標である「大阪ブルーオーシャン・ビジョン」を実現するために、日本は、廃棄物管理の改善のためのインフラ整備や人材育成を支援し、海洋プラスチックごみの撲滅に関する国際的な議論をリードしていく所存です。海洋パネルの政策提言は、持続可能な海洋経済を確立するための政策手段として機能しなければならないと考えています。

オライ・ウルドング パラオ駐ニューヨーク国連大使
2020年は様々な作業を進める上で困難な状況が続いたにもかかわらず、この政策提言が新たな野心的な海洋政策に関する提言をとりまとめて作業を締めくくることができたことは、大変素晴らしいことです。私自身、政策提言の策定に参加できたことは、大変喜ばしいことです。政策提言では、科学に基づいた74の行動が示されており、より深い協力と新たなパートナーシップの構築を通じて達成すべきことが示されています。新型コロナウイルスのパンデミックが続く中、パラオのような小さな島国では、財政面での支援や政策提言の実施に多くのニーズがあります。このように、この政策提言は、持続可能性にインセンティブを与えるような形で、首尾一貫した形での海洋金融に焦点を当てるとともに、小島嶼国の固有の状況を認識することに繋がると思います。持続可能な海洋計画の利点は、国の状況に合わせて柔軟に対応できることです。私たちは100%の力を注ぐ必要があります。すべての海はつながっています。持続可能な海洋計画の策定には、すべての海洋利用者を参加させる必要があります。私たちの100%は海に依存しているのですから、私たちは海に100%の努力を尽くす必要があります。

小野 啓一 外務省地球規模課題審議官写真

小野 啓一 外務省地球規模課題審議官

オライ・ウルドング パラオ駐ニューヨーク国連大使写真

オライ・ウルドング パラオ駐ニューヨーク国連大使

2.パネル討論

ハイレベル・セッションでの議論を踏まえ、モデレーターを務めるOPRI-SPFの小林正典より専門家を紹介した上で、海洋パネルの政策提言に対する反応や、提言された行動を効果的に実施するための方策について意見を述べました。

阪口 秀 海洋研究開発機構(JAMSTEC)理事
JAMSTECは文部科学省の支援を受け、ノルウェーのパートナーと協力して砕氷船の運用について議論しています。私は海洋パネルの専門家グループに参加し、知識、健康、公平性に関する議論をしてきました。特にデータを取り、エビデンスを得ることが肝要です。また、独立性と幅広いパートナーシップを維持し、常に一歩先を目指して迅速に動くことも欠かせません。これは、政府や民間企業にとっては必ずしも簡単なことではないかもしれません。そのような中NGOは、異なるステークホルダーをつなぐ潤滑油の役割を果たしていると思います。昨年12月に開催された日パラオ友好ヨットレースでは、JAMSTECが横浜からコロールまでの航海中に海洋マイクロプラスチックのモニタリング調査を実施しました。調査の結果、日本の領海とEEZではマイクロプラスチックの濃度が比較的高かったのは予想通りでした。パラオの近海では日本近海よりは断然低かったのですが、当初ゼロに近いくらい非常に低いだろうと予想していたパラオのマイクロプラスチックの濃度が予想以上に高いことが確認されたのには驚きました。JAMSTECは文部科学省の傘下にあり、予算も1年先まで決まっているため、今回のヨットレースのような緊急な企画にはなかなか対応できません。しかし、NGOの支援を受けてJAMSTECがレースに参加することが可能になりました。海洋パネルの政策提言の実施を容易にする上でも、政府、NGO、民間の連携が不可欠であると考えています。

小林 正典 笹川平和財団・海洋政策研究所 主任研究員(兼モデレーター)
OPRIは、民間企業、NGO、国際機関など131のメンバーで構成される海洋パネルの諮問ネットワークのメンバーとして、海洋パネルを支援してきました。共同議長には、地球環境ファシリティ(GEF)の元CEOの石井菜穂子氏(現・東京大学未来ビジョン研究センター教授)が名を連ねています。諮問ネットワークは、様々な分野の専門知識の結集、専門家・ステークホルダーとの対話の促進、報告書(ブルーペーパー16本、特別報告書3本)の作成支援、情報発信、変革に向けた行動の推進などを目的としています。また情報を共有し、変革に向けた行動を促進するための「行動連合」の設立も支援しています。諮問ネットワークは、海洋パネルのメッセージを広域的に発信し、対策や行動を実施することを約束し、海洋との相互作用を変革し、改善をもたらすことを目的としています。諮問ネットワークの運営の方向性は、科学的データへの依存、海洋計画における変革の結集、イノベーションの促進、温室効果ガス排出量の削減、海洋・沿岸生態系の保護、循環型経済の促進、海洋会計の促進です。諮問ネットワークの課題は、セクター横断的なパートナーシップの促進、モニタリングとインパクト測定の実施、応用可能な共通項の特定、地域の特殊性の明確化、コベネフィット(共通便益)やシナジー(相乗効果)の促進、トレードオフ(二律背反)の最適化だと考えています。

本多 俊一  国連環境計画 国際環境技術センター (UNEP-IETC)プログラム担当官
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、「私たちの地球は壊れ、海はプラスチック廃棄物で窒息していますが、循環型経済が廃棄物を減らしています」と述べています。廃棄物は、私たちの生活に最も身近な環境問題です。UNEP-IETCは循環型社会を目指し、廃棄物管理を支援しています。循環型社会への移行がなければ、SDGsの達成や社会の脱炭素化は難しいと考えます。UNEP-IETCは、プラスチック廃棄物管理、廃棄物と気候変動、COVID-19パンデミックの中での廃棄物管理など、幅広い課題に対応したプロジェクトを実施しています。適切な廃棄物管理は、海洋プラスチックの削減につながります。UNEP-IETCは、UNEPサステナビリティ・アクションを開始しました。これは、株式会社ファーストリテイリング、株式会社セブン&アイ・ホールディングス、アースモール with 楽天とともに推進され、持続可能性を追求しています。地球環境を持続可能なものにし、地球上の命の源である海を守ることを忘れてはいけません。自然の素晴らしさを知り、私たちがそのような自然の一部であることを知ったとき、私たちは自然を守るために自発的に行動するようになります。これは国際協力においても重要な側面です。

佐藤 寛之 マルハニチロ株式会社経営企画部 サステナビリティ推進グループ課長役
マルハニチロの中期持続可能性経営計画の重点課題は、水産資源の保全です。経営計画では、IUU漁業の撲滅に向けた取組強化、漁業・養殖の持続可能性の認証取得の推進、輸入水産物のトレーサビリティの認証強化などが盛り込まれています。水産資源調査は、2020年度から開始しています。また、持続可能な調達を実践するため、グループ会社やサプライチェーン全体で製品や原材料について水産物取扱の現状を把握するための調査を開始しました。マルハニチロは、IUU漁業、強制労働、児童労働、気候変動、海洋プラスチック、トレーサビリティに取り組むための国際連合「SeaBos」に参加しています。マルハニチログループは、2021 年 10 月までに IUU 漁業と奴隷労働を排除し、2025 年 10 月までにマルハニチログループ各社のサプライチェーンにおいて、またその先に何か問題が発生した場合に迅速に対応できるようになることを目標としています。

矢島 聡 株式会社JERA事業開発本部副本部長
JERAは、東京電力と中部電力の合弁会社で、約4,000人の従業員を擁し、日本の電力の約3分の1を発電しています。JERAの第一の取り組みは、2050年までにゼロ・エミッションを達成するためのロードマップを示す「ゼロ・エミッション2050」です。2つ目の取り組みは、発電施設の開発から撤去までのライフサイクルを一括して検討し、環境や社会への影響を評価する「Door-to-Door」の取り組みです。JERAでは、ビジネスチェーン全体で環境負荷やコストを考慮しています。例えば、洋上風力発電の場合は、洋上風車だけでなく、陸上の送電線などの設備投資が必要となります。3つ目の取り組みは、2050年までに1,400ギガワットの発電・供給を目指す「OPREAC」という国際的な業界団体の設立です。1,400ギガワットは全世界の電力使用量の10%に相当します。

イムナム・ゴルブ パラオ国際サンゴ礁センター所長
パラオでは、海洋パネルの提言である「海域の100%を適切に管理する」という目標を達成するための取り組みが行われています。2003年に設立された保護地域ネットワーク(PAN)は、パラオにとって重要な沿岸生態系を管理するための仕組みであり、PANの実施には伝統的な管理方法を取り入れています。サンゴ礁からの資源の輸出も禁止されるようになりました。また、沖合の生態系については、2015年にパラオ国家海洋保護区(PNMS)が設立され、パラオのEEZの80%が禁漁区に指定されました。パラオ国際サンゴ礁センターは、モニタリングや調査活動を通じてPNMSの順応的管理に貢献しています。

阪口 秀 海洋研究開発機構理事写真

阪口 秀 海洋研究開発機構理事

本多 俊一 国連環境計画国際環境技術センター UNEP-IETCプログラム担当官写真

本多 俊一 国連環境計画国際環境技術センター UNEP-IETCプログラム担当官

佐藤 寛之 マルハニチロ株式会社経営企画部 サステナビリティ推進グループ課長役写真

佐藤 寛之 マルハニチロ株式会社経営企画部 サステナビリティ推進グループ課長役

矢島 聡 株式会社JERA事業開発本部副本部長

矢島 聡 株式会社JERA事業開発本部副本部長写真

イムナム・ゴルブ パラオ国際サンゴ礁センター所長写真

イムナム・ゴルブ パラオ国際サンゴ礁センター所長

小林 正典 笹川平和財団海洋政策研究所主任研究員写真

小林 正典 笹川平和財団海洋政策研究所主任研究員

3.視聴者からのコメント

ウィリアム・コスタ ミクロネシア自然保護基金・事務局長
ミクロネシア連邦(FSM)は、2006年に管轄海域の30%を保護区に指定しましたが、今後は50%に拡大する予定です。また、FSMは、「ブルー・プロスペリティ・ミクロネシア・プログラム」を通じ海洋環境を保護しています。FSMは、海洋の保全と持続可能な利用を政策上の優先事項と考えており、OPRIや日本政府、その他のパートナーとのパートナーシップをさらに強化していきたいと考えています。

モリアナ・フィリップス マーシャル諸島共和国環境保護庁長官
マーシャル諸島は大きな海洋国家であり、単なる小さな島国ではありません。マーシャル諸島の領土は200万平方キロメートルを超え、その99%以上が海洋であり、世界で最も豊かな海洋生物多様性を有しています。マーシャル諸島は、海洋パネルの報告書の発表を、健全な海洋の実現に向け、世界の舞台で政治的な意思を再び集中させる機会として歓迎したいと思います。マグロなどの水産資源の保護は非常に重要であり、マーシャル諸島でもIUU漁業を抑制するための措置が実施されています。他にも気候変動による海面上昇やコロナ禍の経済への影響など課題が山積しています。海には国境がないので、マーシャル諸島は国際的な協調、協働によりこれらの課題を解決していきたいと考えています。

オースティン・シェルトン グアム大学諸島持続可能性研究所所長
グアムでは、海洋資源の持続的な保全と利用のための行動計画を策定しています。また、グアム大学は、シー・グラント・プログラム(海洋分野の研究助成)やRidge to Reef(尾根から環礁に至る陸域および沿岸や海域の総合的管理)プロジェクト、再生可能エネルギーに関する研究にも取り組んでいます。

アレキサンダー・マウヤー ハワイ大学太平洋諸島研究センター准教授
ハワイ大学にはシー・グラント・プログラムがあり、東西センターが併設されています。両者は、太平洋諸国での海洋管理を支援するために、能力強化やその他のプログラムの面で協力しており、今後も日本や太平洋島嶼国で連携していきたいと思います。

マーガレット・スプリング モントレー水族館上席科学研究官
モントレー水族館は海洋パネルの提言を歓迎し、支持します。モントレー水族館は、シーフード・ウォッチ・プログラム(水産物の持続性評価プログラム)やベトナム等での持続可能な養殖業の推進など、持続可能な水産食品の調達に力を入れています。

ダグラス・マコーリー カリフォルニア大学サンタバーバラ校 ベニオフ海洋イニシアチブ・ディレクター
海洋パネルの提言を受けて、「海洋行動の友」(フレンズ・オブ・オーシャン・アクション)とそのパートナーは、持続可能な海洋経済の推進に向けた国際協力を推進していきたいと考えています。

 

4.総括セッション

小野審議官は、パネリストの方々から具体的な取組を紹介いただいたことに対する感謝を述べ、この提言は出発点であり、今後持続可能な海洋経済をどのように達成・維持していくかが重要であると述べました。

最後に、海洋政策研究所副所長の酒井英次が、パネリスト及び参加者の皆様への感謝の挨拶を述べ、閉会しました。

 

5.追補

ウェビナーの中で寄せられた視聴者からの質問のうち、下記について、事後に回答を頂きましたので紹介いたします。

・JERA矢島様へのご質問
質問:ライフサイクル・ビジネスチェーンコスト分析に関して教えてください。
回答:洋上風力発電のコストについては、開発費用(海洋地盤や風況調査、環境アセスメントなどの建設準備に必要な費用)、風力発電設備の建設費用(100万kWの設備はおおよそ4,000~5,000億円といわれています)、関連する送配電設備の建設費用、設備完成後の運営・維持費用(20年~30年の運用期間にかかる費用、設備の補修費や地元への共生費なども含みます。)さらには設備の廃止・撤去にかかる費用があります。コスト評価は、これら費用の合計を総発電量(kWh)の予測値で割り、kWh当たりのコストで評価するのが一般的です。

・マルハニチロ・佐藤様へのご質問
質問:マルハニチロの情報開示方針に関して教えてください。
回答:2020年度より、マルハニチログループ各社及びサプライヤーにおける製品及び原材料について、①水産物取扱量の把握、②それらが持続可能な水産資源であるかの確認を行う調査をスタートさせました。情報公開に向けては現在情報収集・取りまとめを開始しておりますので開示につきましては常時ウェブサイト等にて行っていく予定です。
マルハニチロ サイト内「情報開示方針」https://www.maruha-nichiro.co.jp/corporate/sustainability/disclosure/

(文責:海洋政策研究所 田中元研究員、豊島淳子研究員、藤井巌研究員、黄俊揚研究員、
渡邉敦主任研究員、小林正典主任研究員)

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