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【開催報告】オンライン国際会議「ブルーエコノミーとブルーファイナンス―持続可能な開発と海洋ガバナンスに向けて」

2020.11.30

2020年11月10日から11日の2日間にかけて、笹川平和財団海洋政策研究所は、アジア開発銀行研究所(ADBI)オーストラリア国立海洋資源・安全保障センター(ANCORS)、台湾海洋委員会との共催で、ブルーエコノミーとブルーファイナンスをテーマにしたオンライン国際会議を開催しました。日本、オーストラリア、米国、バングラデシュ、フィリピン、パキスタン、スリランカ等の専門家が登壇し、当該テーマに関する最新の成果報告を行い、ADBをはじめとする国際機関職員やASEAN諸国を含めたアジア太平洋地域の島嶼国の研究者など約100名が参加しました。

冒頭の挨拶で園部哲史ADBI所長は、本会議の成果がADBが発表した健康海洋行動計画2019-2024海洋資金イニシアチブを補完するために大きな役割を果たすことへの期待を述べ、今年ADBIが開催した50以上のオンライン会議やワークショップの中でも最も重要なイベントの一つと位置付けられることを強調しました。同じく冒頭あいさつに登壇したANCORSのStuart Kaye所長は、COVID-19による渡航制限で当初予定していた豪州での会議開催を見送らざるを得なくなったもののオンライン上で無事に開催できたことへの謝意を述べ、ブルーエコノミーの概念が徐々に浸透しつつあることを指摘しました。 赤松友成海洋政策研究部長は、気候変動の観点からみた海洋問題の包括的な解決策や、持続可能な開発のためのブルーエコノミーを推進するための効果的な政策措置を見出すために、本会議がブルーファイナンスといった新たなトピックについての認識を高める機会となることへの期待を述べました。蔡清標台湾海洋委員会副大臣は、国連開発計画(UNDP)が設定した海洋アジェンダを紹介するとともに、民間セクターとNGO間のプラットフォーム構築を通じた海洋プラスチック問題へのアプローチなど、資金調達手段の構築に向けた協力の重要性について指摘しました。COVID-19の懸念によって多くの重要な海洋関連会議が延期や中止となる中、オンラインで開催された本会議は海洋政策に関する対話を継続し発展させることが可能であることを示す機会となりました。

開会挨拶写真

開会挨拶:左上:アジア開発銀行研究所(ADBI)園部哲史 所長;左下:オーストラリア国立海洋資源・安全保障センター(ANCORS)Stuart Kaye所長;右上:台湾海洋委員会 蔡清標 副大臣;右下:笹川平和財団海洋政策研究所 赤松友成 海洋政策研究部長

参考:会議プログラムの録画(外部リンクへ接続します)

本会議では、海洋政策研究所や協働機関の研究者から、統計データ収集、太平洋諸島での現地調査、政策モデル等を基盤とした共同研究の報告が寄せられ、海洋政策研究所研究員の発表タイトル・著者は以下の通りです。

【海洋政策研究所研究員の発表内容および著者】

「海洋保全と気候変動のための国際援助のトラッキング調査」
吉岡渚 笹川平和財団海洋政策研究所研究員
前川美湖 笹川平和財団海洋政策研究所主任研究員
John Virden、Tibor Vegue デューク大学ニコラス環境問題研究所

「アジア太平洋地域のブルーエコノミー推進に向けたコベネフィットとシナジーの活用について」
小林正典、渡邉敦 笹川平和財団海洋政策研究所主任研究員
古川恵太、海辺つくり研究会 理事長、他

「BinDモデルを活用したフィジーにおける災害リスク管理(DRM)政策シミュレーション」
田中元、吉岡渚 笹川平和財団海洋政策研究所研究員
Nepomuk Dunz、Junko Mochizuki、Asjad Naqvi国際応用システム分析研究所(IIASA)

海洋政策研究所から発表の様子写真

海洋政策研究所から発表の様子:吉岡渚 研究員(左)/ 小林正典 主任研究員(右)/ 田中元 研究員(下)

本会議では2日間に渡り、学術的、実務的視点から、専門家同士の活発な議論が展開されました。閉会挨拶では、前川美湖海洋政策研究所主任研究員が登壇し、今後もさらに研究者間の連携を深め、海洋問題へのよりインパクトある研究が展開されていくことへの重要性を強調し会議を締めくくりました。本会議の成果は、ADBIが発行する書籍として来年度以降に公刊される予定となっています。この書籍はADBIの書籍シリーズの中で初の海洋を特集したものとなる予定であり、今後書籍の公刊に合わせたフォローアップ会合などを開催する可能性なども引き続き検討してまいります。

会議実行委員会写真

会議実行委員会:海洋政策研究所 渡邉敦 主任研究員(左上) / 海洋政策研究所 前川美湖 主任研究員(中上)/ ANCORS Michelle Voyer主任研究員 (右上) / ADBI Pitchaya Sirivunnabood CB&T エコノミスト(左下)/ ADBI Peter Morgan研究副部長 / 海洋政策研究所 黄俊揚 研究員

(文責:海洋政策研究所 海洋政策研究部 研究員 吉岡 渚・黄 俊揚 研究員)

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