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モナコ ブルー・イニシアチブ会議に角南篤海洋政策研究所所長が登壇しました(詳細)

2020.06.01

2020年5月28日(木)、アルベール2世モナコ公財団とモナコ海洋研究所の共催により「モナコ ブルー イニシアチブ会議 ― 海洋保護区(MPA)およびその他の効果的な保全措置(OECM)を私たちはいかにして国際討議の中心に据え、進展に向け協働できるのか?」がオンラインで開催され、角南篤 笹川平和財団海洋政策研究所長が登壇しました。「モナコ ブルー・イニシアチブ」会議は2010年にモナコのアルベール2世大公の提案で開始された会議で、当初、今年3月下旬に第11回会議の開催が予定されていました。今回の会議は、新型コロナウィルス感染症の拡大を受けて来年に延期となった第11回会議を補完する目的で開催されたものです。

冒頭、モナコのアルベール2世大公が開催の挨拶を行いました。海洋保全に向け、欧州はアルバニアとチュニジアのMPA設定のために今年新たに180万ドルの資金協力を実施するなど、海洋保全推進に向けた取り組みを紹介しました。また今年2020年末までに海洋の10パーセントを保全するという愛知目標の実現、さらには、30%の海洋を保全するとの新たな目標の設定に向け、国際社会が一丸となって取り組んでいく重要性を強調しました。
続いて挨拶したフランスのブルーン・ポアールソン 環境・連帯移行省国務大臣は、フランスは2030年までに陸域および海域の30%を保全する目標設定を支持しており、フランスの国家生物多様性戦略においても2022年までに陸海30%を保全する目標設定を議論していると紹介する一方、北大西洋や南極東部での新たなMPA設定を提唱していると述べ、海洋保全に向けた国際協力の更なる推進を提唱しました。
ビルギニウス・シンケビチュウス欧州委員会環境・海洋・漁業コミッショナーは、昨年IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム)が発表した報告書で、海洋の生物多様性が急速に減少しているとの指摘に言及した上で、欧州が2020年5月26日に「2030年に向けた生物多様性戦略」を採択したことなどに触れ、生物多様性に配慮した社会の構築、南極における新たな海洋保護区設定や公海における生物多様性に関する新協定の交渉などの実現に向け国際的な協力を呼びかけました。

続いて、パネル討論では、コスタリカのホセ・マリア・フィゲレス・オルセン元大統領がモデレータを務めました。フィゲレス氏は気候変動により世界の気温上昇を1.5℃以内に留めるという政策目標とならんで、海洋の30%とを保全するという目標は国際社会にとり非常に重要であるとして、パネリストにその実現に向けた戦略についてコメントを求めました。
フランスのセルジュ・セグラ海洋担当大使は、海洋保全については、公海における生物多様性に関する新協定の交渉を成功裏に妥結させるよう国際社会が協力する一方、国際海事機関(IMO)、地域漁業管理機関(RFMO)、国際海底機構(ISA)などの既存の国際機関との連携の重要性を指摘する一方、フランス政府は日本やインドなどの主要国と二国間の海洋政策対話を実施していることを紹介しました。
カナダ国立公園原生協会のサビン・ジェッセン海洋プログラム部長は、カナダは2030年までに海洋の30%を保全するという目標設定を支持しており、国内においても海洋保護区の管理に関する国内基準を設定し、その実効性の向上を進め、底引き網規制や廃棄物の海洋不法投棄の取締などの強化を進めているといった取り組みを紹介しました。
エンリック・サラ ナショナル・ジオグラフィク エクスプローラー(研究員)は、パラオがEEZの80%、セイシェルが30%、ニウエが40%のMPAの設定に積極的に動いている例や、漁業国であるチリがこれまで1%であったMPAを24%にまで引き上げた例などを紹介し、MPAの設定に各国がより積極的に動くよう働きかけるべきだと述べました。
角南篤所長は、海洋保護の効果的実現を図る上で科学が果たす役割は大きいと指摘した上で、来年から開始される国連持続可能な開発のための海洋科学の10年を契機に、海洋生態系の評価や海洋保全取り組み効果の検証、海洋の可視化や情報公開、人工衛星やドローン、超音波、赤外線などの新技術の活用などの有用性を指摘し、同研究所が国際的連携し、多様なステークホルダーが参加する海洋政策対話により合意形成に向けた基盤の強化を目指す取り組みを紹介しました。また南極の公海に新たなMPAを設置するための交渉も科学ベースで進められるべきと指摘するとともに、2017年に関係国・機関間で大筋合意され2019年に国内で承認された中央北極海無規制公海漁業防止協定についても触れ、日中韓三カ国間の対話や2021年に日本で開催予定の北極科学大臣会合、北極サークルの日本フォーラムの機会を活用し北極海の海洋環境の持続可能な利用に向け貢献していくことを述べました。
シャーリー・ビンダー パナマ環境省環境政策課長は、パナマはパナマ運河という重要な海運インフラを提供しているものの、近年の気候変動や海面上昇などの影響が顕在化してきていると指摘した上で、海洋、生物多様性、気候変動に関する総合的でハイレベルな政策対話を牽引するために2021年に私たちの海洋会議(Our Ocean Conference)を主催することを予定しており、関係者の協力を求めると発言しました。

質疑応答では、海洋保護区の量的拡大のみならず、質的向上の重要性が指摘された他、MPAの効果的な管理に向けた法制度整備や能力構築の重要性などが指摘されました。

この会合では、主要国政府や関係団体が海洋保護や海洋資源の保全および持続可能な利用に向けた国際的な目標をより発展させるための気運を盛り上げる姿勢が見られました。海洋政策研究所では今後の動きを注視していくとともに、日本やアジア・太平洋、更には北極海や南極海各海域での取り組みについても効果的な施策の形成に資する政策対話や研究を進めて参ります。

海洋政策研究所 小林正典・渡邉敦

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